2024年11~12月にかけて、伝えるプロフェッショナルであるはずの広報Xアカウントで立て続けにトラブルが発生した。「不用意な言葉選び」「自身の成果アピールのためにプロジェクトの舞台裏を開けっ広げに語る」「消費者への高圧的な態度」などがトラブルの要因である。本特集の第2回では、不適切な投稿、広告、プロモーション、コンテンツなど、「ふてほど」な100事例を紹介する。

不適切な投稿、広告など、傾向をしっかり押さえておきたい(写真/moonrise/stock.adobe.com)
不適切な投稿、広告など、傾向をしっかり押さえておきたい(写真/moonrise/stock.adobe.com)

 2024年11~12月にかけて、X(旧Twitter)運用においては比較的慎重であるはずの広報アカウントで“暴走”が相次いだ。3例、紹介する。

 24年11月1日、テレビ東京系のドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」で、スキマバイトアプリ「Timee(タイミー)」を手掛けるタイミーの挑戦が取り上げられた。同社が業界の先駆者として開拓するスポットワーク市場の最前線に密着する内容だ。

 放映の直前、同社の広報担当者が、自身のXアカウントから「IPO前から仕込んできました『ガイアの夜明け』が今晩放送です」と投稿。この「仕込み」という表現を巡ってトラブルが勃発した。

 業界において「仕込み」は、対価を支払ってメディアに取り上げてもらう、いわゆるステルスマーケティングを想起させるワードである。同番組の元スタッフで現在は広報支援を手掛けるPR会社の代表が、このワードに反応して問題を指摘。近年、アクティビストとしてメルカリなどに経営改善の要求を突き付けている田端信太郎氏も参戦した。

 仕込みというワードを用いた広報担当は、かつてクックパッドに在籍していたことがあり、その意味では、仕込みは単に「下準備」の感覚で用いている可能性がある。ゆえに、「責められすぎではないか?」と感じる人も現れ、別のPR会社トップがタイミー広報を守るスタンスで参戦した。このように対立構図ができたことで炎はさらに燃え広がり、プロ広報が炎上を消化するどころか、延焼させてしまった。

 2つ目は、あの兵庫県知事選だ。自動失職した斎藤元彦氏が逆転勝利を果たした選挙だったが、その舞台裏をPR会社の代表者がnoteで詳細に明かしたことで、公職選挙法に違反する疑惑が浮上してしまった。本来、PR従事者は黒子に徹することが求められる。あふれる承認欲求を抑えきれなかったのか、「私が勝たせた」と言わんばかりのnote投稿がやぶへびとなった。

 3つ目は、つい先日、24年12月13日に起きた、「靴下屋」を運営するタビオ公式Xの問題投稿である。こちらのアカウントは持ち回りで運用していて、プロフィル欄には(not広報)と記されているものの、内容的には「靴下屋」のブランド価値向上を後押しする、ブランディング広報的な位置づけである。

 そのタビオ公式Xが、不機嫌投稿を繰り返した。あるユーザーの「技術的には破れないストッキングを作れるのに、売るためにあえて破れやすいストッキングを意図的に作っている」という趣旨の投稿がバズっていることが気に入らなかったためだ。

 過去にも同様の誤解が広まっていたため、「またか」といういら立ちがあったのだろう。別に「タビオのストッキングがそうだ」と名指しされたわけでもないのに、「破れないストッキングは都市伝説、陰謀論の領域です。作れるんなら作っています」「何度も言いますが……」と投稿はヒートアップしていった。これに違和感を持ったフォロワーが、「顧客対応としていかがなものか」と指摘した格好だ。同社は12月16日、社長名義でおわび文を公開した。

 伝えるプロフェッショナルであるはずの広報担当でも、かようにしてSNS投稿で踏み外すことがある。他山の石としたいところだ。

 特集「炎上事件簿」の第2回は、不適切な投稿、広告など、炎上100事例をピックアップして紹介する。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

3
この記事をいいね!する
この記事を無料で回覧・プレゼントする