水戻し不要で使える「あえるわかめちゃん ナムル風うま塩味」がヒットした理研ビタミン。最近では、液体濃縮スープ「割るだけスープ」や「インドカレー屋さんの謎ドレッシング」もヒット。目の付け所もネーミングもユニークな製品を次々と生み出す秘訣はどこにあるのか。担当者を小口覺氏が直撃する。
粉末スープの不満を解消した「割るだけスープ」
小口覺(以下、小口) 2024年8月に発売された、液体濃縮スープ「割るだけスープ」シリーズも人気です。一般的にインスタントスープは粉末タイプが多いですが、「割るだけスープ」シリーズを液体にした理由は?
市川佐智子さん(以下、市川) 開発のきっかけは、新型コロナウイルス禍で在宅時間が増えて、家事や育児のストレスをためこんでしまう消費者が増えたことでした。朝、昼、晩の食事の境目が曖昧になっていた時期なので、さらっと飲めて、ホッとしてもらいたいという思いで作った製品です。
濃縮液体にした理由ですが、粉末タイプと液体スープの製造方法の違いにあります。粉末スープは粉末の原料を混ぜ合わせて作りますが、液体スープは粉末だけでなく、ピューレやペーストといった液体の原料も使用できます。
製造工程も違うんです。粉末の場合は混ぜ合わせるだけですが、液体の場合は加熱などにより、手作りに近い味わいをプラスできます。つまり、出したい味に近づけやすいんです。最終的に粉末にするための乾燥工程もありませんから、原料の風味が飛んでしまうことがなく、素材本来のおいしさを味わえます。
小口 ボトルの目盛り通りだと12杯分で、実勢価格は330円前後ですから、1杯あたり30円以下。おそらく粉末のスープよりも安いですね。
市川 味と手軽さが売りですが、コスパも良いと思います。
先ほど(前回)、乾燥わかめを水戻しするのが面倒くさいという話がありましたが、粉末スープも、かき混ぜるのが面倒くさいと感じている人が多くいます。割るだけスープは簡単に溶けるので、使い勝手がいいんです。
▼前回はこちら 理研ビタミン「あえるわかめちゃん」 面倒くささ徹底排除でヒットに実は、企画段階でそこをメリットの1つとして打ち出していましたが、「粉末でもかき混ぜるのは簡単だよね」という声が社内に多く、最初は全然理解してもらえませんでした。
しかし、実際のお客様の声を聞くと、スプーンでかき混ぜる面倒くささや、溶けきらずに“だま”になった時のストレス、入っていた袋をゴミとして捨てる手間、開ける時にテーブルに飛び散った粉末を拭く面倒くささなど、こちらが思っていた以上に、皆さんストレスを感じていました。
小口 当たり前に思っていても、言われてみればストレスに感じる。
市川 これらのストレスは、液体にすることで解消できます。
そして、袋入りとは違って量を自由に調節できるのも、ボトル入り液体スープの大きなメリットです。小さなお子さんはもちろん、大人でもおなかをちょっとだけ満たしたい時などに量を調整できます。
また、液体なので冷たい水や牛乳でも割れます。熱いものが飲めないお子さんのために、ぬるめのお湯でストレスなく作ることができます。
小口 仕事の合間などに、お茶やコーヒーのように飲むドリンクとして、あるいは夕食の時間までの小腹を満たすものとして、この手軽さが効いてきそうですね。
ノンオイルと油入りで狙いを変える
小口 「ふえるわかめちゃん」「あえるわかめちゃん」などのわかめ製品と並ぶ主力商品がドレッシングです。定番のノンオイルシリーズに加えて、近年は「インドカレー屋さんの謎ドレッシング」(以下、謎ドレッシング)など、攻めた製品も存在感を出してきました。
▼関連記事 大ヒット「インドカレー屋さんの謎ドレ」 名前とパッケージの秘密市川 国内のドレッシング市場は商品数も多く、飽和状態です。なので、“すでにドレッシングを買っている人が欲しくなるような、わくわくする商品”をテーマに開発を進めました。
小口 “わくわくする”とは、どういうことですか?
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