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三井不動産グループによる街づくりが進む千葉県船橋市の臨海エリア。JR南船橋駅の最寄りに2024年5月、スポーツとエンターテインメントの興行でにぎわいをつくる「LaLa arena(ららアリーナ) TOKYO-BAY」が誕生した。

 LaLa arena TOKYO-BAYは、三井不動産グループと、スポーツ事業やライフスタイル事業などを展開するMIXI(ミクシィ)が共同で整備し、運営に携わる多目的アリーナだ。MIXI傘下のプロバスケットボールクラブ「千葉ジェッツ」のホームアリーナである。

 設計・施工は清水建設が担当した。世界各国で著名なスポーツ施設を手掛けてきた米国のHKSを外装コンセプトデザイン、SWA Groupをランドスケープデザインの協力者に迎えている。

 エリア各所から目立つ建物のため、「人を引き付けるアイコン性が重要になる。長く愛される建物となるよう、米国2社とは特に外観のアイデア面で知恵を出し合った」と清水建設建築総本部設計本部教育・文化施設設計部の長嶺博副部長は説明する。

 建物の北東側上部に、有孔アルミパネルで構成したファサードを取り付けた。千葉ジェッツの名称やららぽーとの「ポート(港)」に由来し、ジェット気流や航跡の他、波なども連想させる躍動感のある形態デザインを目指した〔写真1〕。「約800枚のパネルは全て形が異なる。当社の設計・施工案件でここまで自由な3次元の造形に挑んだ前例はない。難度が極めて高かった」(長嶺氏)

〔写真1〕地元「千葉ジェッツ」の新たなホームに
〔写真1〕地元「千葉ジェッツ」の新たなホームに
収容客数約1万1000人のアリーナの東側外観。これまで千葉ジェッツのホームだった市所有の「船橋アリーナ」のキャパシティーは、競技時で約4200席。観客動員数が増加する中で、同クラブは移転に踏み切った(写真:吉田 誠)
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 キールトラス架構で100mスパンのアリーナ空間を生み出した。選手や演者との距離感や見やすさを考慮し、断面はすり鉢状とした。「四周を囲み、コーナー部分を45度で隅切りする一般的な客席タイプから検討を開始。より一体感のあるラウンド型にこだわる事業主の要請に応じ、VR(仮想現実)による検証を含めてスタディーを重ねながら丸みを与えた」と長嶺氏は振り返る〔写真2〕。

〔写真2〕多彩な企画に対応するアリーナ
〔写真2〕多彩な企画に対応するアリーナ
メインのアリーナ空間。千葉ジェッツの試合時の様子。約423インチのセンタービジョンは、音楽興行時などには上部に格納できる。多彩な企画に対応できるよう、スモーク演出の際の空調制御なども可能にしている(写真:吉田 誠)
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 スポーツとエンターテインメント、両方の興行主に「貸しやすい」施設とすることが計画上のテーマとなった〔写真3図1〕。イベント演出に制約を生じさせず、時代の変化にも耐える施設を目指した。特に照明や音響は、興行主が持ち込むどんな設備にも対応できるように配慮。搬出入や、架設位置、荷重などの融通性を高めた。ロールバック席(移動観覧席)の出し入れを2段階にするなど平土間のサイズを興行にフィットさせるための可変性も持たせた。

〔写真3〕スポーツ・エンタメ両用に適した仕様に
〔写真3〕スポーツ・エンタメ両用に適した仕様に
ロールバック席による平土間のサイズ調節が可能。音楽興行時には最大約5000人が平土間に立ち、縦ノリで体を動かす。今回、アリーナと地盤の間に隙間を設け、杭には特殊アスファルトを塗布して振動伝搬を低減させている。清水建設が特許を取得した(写真:2点とも川澄・小林研二写真事務所)
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〔図1〕一般席、VIPエリアに分けて動線整理

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(写真:川澄・小林研二写真事務所)
(写真:川澄・小林研二写真事務所)
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(写真:吉田 誠)
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(写真:川澄・小林研二写真事務所)
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(写真:吉田 誠)
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