「受注も売り上げも利益も、ほぼ想定通り」──。牧野フライス製作所(以下、牧野フライス)の2025年3月期第3四半期(3Q)決算は堅調だった。売上高(1688億円)は前年同期比3.6%増で、営業利益(132億円)は8.8%増。営業利益率は7.8%で前年同期と同水準だった(図1)。
5軸制御マシニングセンター(MC)と大型機種の販売が好調だ。新機種である2製品にも手応えを感じているという。旋削機能を備えた5軸制御MC「DA500」は半導体業界から、大物金型向けの縦型3軸MC「V900」は自動車業界から強い引き合いがあるという(図2)。
こうした付加価値の高い製品の売上比率が上昇していることに加えて、戦略的な売価政策による値上げ効果により、牧野フライスでは1台当たりの販売価格(製品単価)が4000万円を優に超え、さらに上昇に向かっている状況だ(図3)。
市場で見ると、米国の航空・宇宙向けの受注が好調を維持。日本およびアジアでは半導体製造装置向けの受注が堅調だった。だが、ドイツでは景気低迷の影響を受けて受注が減少。代わりに、イタリアやフランス、東欧で建設機械や農業機械、油圧関連向けの受注を1つひとつ取って対応している状況だという。
自動車向けの受注は、電気自動車(EV)の販売失速に米トランプ大統領の就任という変化を受けて、予断を許さない。インドで部品加工用途の製品の販売が好調に推移しているものの、日本での受注は「期待よりも下がっている」(牧野フライス)。米国でも、多目的スポーツ車(SUV)向けを除くと設備に余剰感があり、大口の受注は止まっている状況だ。
今後については、トランプ大統領の政策動向次第だという。ただし、同大統領がこれまで、いわゆる「EVシフト」に反対の意向を表明してきたことから、「来期(2026年3月期)はハイブリッド車やエンジン車向けの製品の受注が増えてくるのではないか」と同社は見る。
2025年1月31日に開いた決算説明会において、牧野フライスはニデックからのTOB(株式公開買い付け)による買収提案についてもコメントした。牧野フライスは2025年1月28日にTOBに関する「質問書を送付した。その回答を読んで株主利益の最大化があると分かれば、(ニデック側と)話し合いをする可能性がある。あるいはさらに質問する形になるかもしれない」(牧野フライス)という。
そして、その日(2025年1月31日)の夕刻、牧野フライスが決算説明を行っているさなかに、ニデックは回答書を牧野フライスに提出した(図4)。牧野フライスの質問書は、金型メーカーなど顧客からも懸念の声が上がっているシナジー(相乗効果)について多くのページを割いた。これらの全てについてニデックは回答を寄せた。
読者の関心が高いこのシナジー問題に焦点を絞り、両社で繰り広げられた主な質問と回答の要旨をまとめてみた。