大型のガラス基板(パネル)を支持材に使う半導体パッケージングへの参入が相次いでいる。パネルレベルパッケージ(PLP)と呼ばれ、AI(人工知能)半導体向けの大型パッケージや関連部材を低コストで製造できる。Rapidus(ラピダス)や台湾積体電路製造(TSMC)など半導体企業のほか、ジャパンディスプレイ(JDI)や台湾・群創光電(イノラックス)など液晶パネルメーカーも名乗りを上げた。半導体製造装置・部材メーカーにとっても主戦場の1つとなりそうだ。
「G4.5(第4.5世代、730×920mm)ガラス基板を使って、半導体パッケージ向けインターポーザー(中間基板)を製造できないか検討している。2028年には事業を立ち上げたい」。ジャパンディスプレイ執行役員チーフ・ストラテジー・オフィサーの下垣内康氏は半導体事業への参入に意欲を示す。赤字が続くディスプレー事業に依存する状況から脱しようと、ビヨンドディスプレイ(Beyond Display)を掲げ模索する新分野の1つがパネルレベルパッケージだ。
第4.5世代の液晶パネルラインを持つ石川工場(石川県川北町)に半導体パッケージ部材を製造する銅(Cu)めっき装置などを導入することを検討する。液晶用ラインとは別にラインを設ける考えで、2026年3月期をめどに設備投資に関する判断を下す。有機ELパネルなどの生産を担う茂原工場(千葉県茂原市)を半導体パッケージングの研究開発拠点としても活用する。
液晶パネルの経験から「TFT(薄膜トランジスタ)プロセスなど半導体製造の知見を持つ技術者を抱え、研究開発部門には電気・構造解析のシミュレーションに携わる人材もいる」(下垣内氏)。工場やクリーンルームなどハード面と人材やデバイス技術などソフト面の両方で、液晶と半導体の親和性は高いとみる。パッケージ基板メーカーなどとの連携も視野に、半導体のサプライチェーン(供給網)におけるポジションを探る。
台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業系のイノラックスも、液晶の知見を生かしパネルレベルパッケージへの参入を狙う1社だ。台湾南部・台南の液晶工場を半導体パッケージ向けに転用する。イノラックスは2024年12月、車載向け有機ELディスプレー事業でジャパンディスプレイと提携した。両社は有機EL以外での協業も検討しており、将来的にパネルレベルパッケージなど半導体分野で連携する可能性もある。