筋が悪すぎる。ならば企業へ補助金を出せという話にすぐなるだろう。これでは昨年暫定的に決め、問題山積な上に利用も広がらない「年収の壁・支援強化パッケージ」と変わらない。こんなに時間をかけ、結局これか。サラリーマンの専業主婦だけが保険料を負担をせず、受益を丸々得る不公平な仕組みを将来も既得権化する。女性活躍、共働きが当然の社会で、まだこんな時代錯誤な制度を続けようと言うのか。第3号制度は、ここで廃止するのが日本の将来のためだ。専業主婦は不満だろうが、彼女達が担っている子育てを少子化対策としてしっかり支援し、手取り減をカバーする。例えば、第3号制度の廃止と同時に、年少扶養控除の復活を行ってはどうか。
要するに、現在の年金制度を支える「マクロ経済スライド」が壊れており、大修理が必要ということだ。もともとの失敗は、厚労省がこの仕組みを作った時に、既に当時デフレだったにもかかわらず、デフレを全く想定しなかったことだ。インフレ時のみ年金がカットできる仕組みでは、機能するはずもなく、途中多少の手直しはしたが間に合わず、大修理に至った。これは、実質的にマクロ経済スライドの強化策である。これから毎年大幅に年金をカットする代わりに、カット期間は短く終わる。問題は厚労省が政策の失敗を認めておらず、責任もとらず、説明も詐欺的、ツケ払いだけを国民に要求していることだ。マクロ経済スライドの失敗をきちんと総括せよ。
地域内の医師数をコントロールするもう一つの方法は、かつてのニューヨークのタクシーのように、メダリオンを使うことである。診療科ごとに、その地域に必要な医師数を割り出す。その数だけ、診療科別メダリオンを発行し、まずは既存の医師に配る。その地域で、新規開業したい医師は、メダリオンを持っている医師から購入をする。人気のある診療科のメダリオンは高くなるから、それに見合う生産性の高い医師が購入するだろう。人気のない診療科や地方のメダリオンは安くなるので、安いならば不人気診療科や地方で頑張ろうという医師も出よう。最後はメダリオンを売れば退職金代わりになるので、いつまでもやめない高齢の医師の退職促進にもなる。
地上波を見ていると、日本製品に関税が課されるので、日本経済が大変なことになると、悲観論一色である。しかし、本当に大変なことになるのであれば、ヨーロッパのように、株価が下がるはずである。日本株がこれだけ上昇したということは、円安も含め、全体として日本経済にとってのメリットが大きいということではないか。まず、アメリカ経済が力強く成長するということは、アメリカと関係が深い日本にとっても大きなメリットである。また、アメリカに交渉力の強いリーダーが生まれたことで、ぐだぐだに停滞している日本の政治状況、経済状況も変わらざるを得ない。むしろ、トランプの様々な要求を、外圧、奇貨として、停滞を打破すべきである。
経済学にはゲーム理論という交渉事に関する理論分野があるが、少数与党(自公政権)は、キャスティングボート(国民民主)の政策を丸呑みせざるを得ない。不信任を出されたら終わりだからだ。結論は決まっているのに、何をぐずぐず時間稼ぎしているのか不思議だし、国民民主もキャスティングボートの力をフル活用していない。国民民主は早く、野党(立憲民主党や維新の会)と政策協議を進めて、基本政策を飲ませると良い。それが、与党の作業を急がせる圧力となるだろう。一方で、立憲民主や維新の会が政権交代を本当に起こしたいのであれば、こちらも国民民主の政策を丸呑みせざるを得ない。もっとも現実はなかなか理論通りに進まないものだが。
多くの政党が乱立する多極化状態では「財源無きトンデモ社会保障論」が起こりやすい。それは「囚人のジレンマ」の構造だからだ。将来のために痛みを伴う改革をすべきと、与党が正論を唱えても、野党が、財源はまだ余裕があるとしてバラマキ論を唱えれば、野党が勝ってしまう。したがって、競争上、与党もバラマキ論になるのだ。これが、2大政党制であれば、与党も野党もいずれ政権を担う可能性があるので、無責任なバラマキ論をやめて、正論に両者が合意する可能性があるが、多極化するとそれも難しい。なぜなら、第1党と第2党が正論で合意しても、第3党がカルテルやぶりをしてバラマキ論を唱えれば勝てるからだ。我々は難しい時代に入った。
マスコミ全般に言えることだが、どうも、「部分連合」や「パーシャル連合」という言葉の使い方が、いい加減すぎる。「政策ごとに野党と連携する「パーシャル連合」」という表現はおかしい。案件ごとに、野党が是々非々で予算や法案に賛成するかどうかを決めるのは当然で、これまでも行われてきたことだ。それを、部分連合とか、パーシャル連合とは呼ばない。そして、国民民主党は部分連合なり、パーシャル連合なりを明確に否定している。与党の首班指名に乗るとか、与党と同じ会派に入るとか、政策協力の協議体を常設するとか、そういった事実があって初めて使う言葉である。いい加減な言葉の使い方は、印象操作になりかねないので注意が必要だ。
どうもこの記事は、ニュアンスが少し違っている気がする。この森山=榛葉会談の後、榛葉氏が記者会見をしており、全てネット上で公開されているので確認できるが、重要なポイントは、国民民主側は「部分連合」を明確に否定したということである。森山氏が、予算や法案について協議するための政調会長同士の協議体設置を提案したところ、榛葉氏は応じなかった。与野党各党との距離は等距離であり、出てきた法案、予算ごとに、協力できるかどうかを個別判断すると言っている。もちろん、石破総理の首班指名も明確に断っている。野田氏に入れないということは石破氏に有利に働くが、この程度では、どのような定義でも、部分連合とは言わないだろう。
103万円の壁の対策というよりは、単純に所得減税と捉えた方が本質的だ。現在、インフレで実質所得が増えないのに名目所得が上がっており、累進税率のもとで国民の限界税率が高まっている。つまり、現在は実質増税の状態だ。経済学ではこれをブラケット・クリープと呼ぶが、基礎控除引上げ策は、ある程度は、増税状態を中立的に戻すためのインフレ調整策と解釈できよう。もっとも、75万円の控除増額はブラケット・クリープを超えているので、実質的には恒久的所得減税である。これをするなら、石破政権が補正予算でやろうとしている給付金や賃上げ補助金は同じ効果の対策なので不要だ。ダブルバラマキは許されない。補正予算を縮小すべきだ。
こういう交渉はまず、水面下で綿密に行われるべきで、党首会談として表に出るのは、結論が出た後だ。立民と共産は選挙協力の実績があるが、維新と立民の関係がこうも早い段階でまとまったのか、疑問だ。馬場代表がもし、下交渉をしっかりせず、結論も決まらぬ段階で、党首会談にノコノコ行くのなら、政治家として甘すぎる。自公側と決定的に距離をとり、共産に近づく印象すら与え、維新の戦略的優位を手放す。ここは国民民主の玉木氏の対応が正解であろう。実は維新にとっての得策は、政策の近い国民民主と歩調を合わせ、協力関係を築いてキャスティングボートを握ることだ。チーム自公にも、チーム立民にも寄らず、まずは第三極を厚くすべきだ。
ものは言いようだと思うが、玉木氏は「「パーシャル(部分)連合」の可能性」を否定しなかったのではなく、「定義がわからないことにはお答えしにくい」とやや否定的だったのではないだろうか。とにかく、石破政権としては、国民民主を取り込もうと、手を変え品を変え、クリンチ(抱き着き)戦略を繰り出すことになるだろう。パーシャル連合だの、閣外協力だの、曖昧な言葉で、政権側に取り込んだとの印象操作を行うのは常套手段である。若者からの支持率が高かったように、国民民主の政権公約は、若者世代のためになるものが多い。是非、そういう甘言を全てはねつけ、距離感を保ってキャスティングボートの座を握り続け、政策を実現してほしい。
前々から不思議に思っているのは、もはや令和の世の中なのに、何故、東証の取引時間が依然として、こうも短いのかということである。グローバル化、デジタル化が進む中、昔のように人間が全ての仲介をやっているわけではないのだから、取引時間を長くしても問題はないのではないか。実際、日経平均先物などは海外で取引されていて常に動いている。日経の現物だけが、東証の開始時間を待ってからしか動けないというのは、市場として極めて非効率である。ニューヨーク証券取引所の取引時間が増すということは、それだけ、他の取引所の取引量が減るということである。競争上、東証の取引時間延長を検討する必要性は、やはり大いにあるのではないか。
2拠点居住は良いことだらけである。地方にとっては、人口減少でコミュニティーの維持が難しくなる中、その一定の歯止めになる。消費は増えるし、空き家や放棄地の活用になる。都市の住民にとっても、地方に拠点を構えて、週末や長期休暇を自然いっぱいの環境で過ごすことは、人生のクオリティーオブライフを増加させることになる。問題は、行政の仕組みがそれに追いついていないことである。2拠点で生活しているのだから、住民税は居住日数に応じて分割すればよい。住民税を払うのだから、ごみ処理などの公共サービスも両拠点で受けてよいだろう。2拠点居住支援こそ、石破政権の地方創生策の目玉になる。高速代割引などの支援策があって良い。
もともと旅行は、生活必需財ではなく、所得弾力性の高いサービスである。今のように、賃金を上回る物価高で、実質所得が下がっている時には、旅行への需要はより大きく減少する。また、コロナショック後のリベンジ消費やGOTOトラベルなどとして、政策的に旅行支援を行ってきたことに対する反動減も大きいだろう。その意味では、旅行需要は、しかるべき水準に落ち着いたとみるべきで、前年比マイナスだからといって騒ぎ立てるほどの話ではない。旅行は生活に不可欠の要素ではなく、旅行増は政策目標ではない。衆院の選挙戦が始まっているが、旅行を増やすために、また、GOTO何とかなどというバラマキが始まらないことを祈るばかりである。
自民党がこの程度の負けで済む予測になっているのは、やはり、どんなに批判されようとも、野党が用意できないうちに速攻で解散するという石破氏の戦略が、正しかったということであろう。不思議なのは、毎回毎回、野党が用意できないうちに解散するという戦略が功を奏することである。野党は毎回毎回、何も学ばずに、ボーっとしているということなのだろうか。衆院選の次には来年夏に参院選がある。もし、本気で与党を追い込む気があるのであれば、今からでも早速、野党間で参院選の候補者調整を始めるべきではないだろうか。参院選は政権選択の選挙ではないが、衆参のねじれ国会が大きな破壊力になることは、以前の福田政権でも証明済みである。
経済学の基礎理論によれば、コメのように今年の収穫量(供給量)が決まっているものは、需要側が価格を決める。コメ農家のコストやJAの買取価格は全く関係がない。いくら小売や外食企業が争奪戦をしていたとしても、最終的に消費者に売らなければ商売にならないから、これほどの価格高騰を招く需要増になることは合理的ではない。今年は豊作でコメの収穫量は多いということであるから、一定の在庫量が確保できれば、それ以上、高いコメを買う必要がなく、下がるのを待てばよいからだ。とすると、コメ価格が下がらない理由は、供給側が流通に回す供給量を絞って、価格を釣り上げている可能性がある。品薄が人為的に続けられているのではないか。
いわゆる中央銀行の独立性には、①手段の独立性(instrument independence)と、②目標の独立性(goal independence)の二つがある。中央銀行は、②の目標の独立性は有しないが、①の手段の独立性を有するというのが、現在、国際的にみて標準的な「中央銀行の独立性」の解釈である。すなわち、政府が目標を決めた上で中央銀行に共有させ、中央銀行はその目標に従って金融政策を行う。ただし、金融操作をいつ、どのような形で行うかについては、中央銀行が決定する。その意味で、石破首相の今回の行動は特に日銀の独立性を損なうものではない。むしろ、もっと堂々と日銀と政策目標の協議をすべきである。
厚労省は、年金の第3号被保険者制度(サラリーマン家庭の専業主婦が保険料を払わず、満額年金を受け取れる制度。自営業などの主婦に対して不公平であり、女性の社会進出の妨げにもなる)の廃止に手を付けず、厚生年金の適用拡大で問題解決を図る腹らしい。確かに、女性が少しでも働けば厚生年金に加入させられるのであれば、第3号の問題はほぼ解決できる。もっとも、小規模・零細企業や、飲食などの適用外の業種に適用するには、反対が多いことから、非常に長い時間が必要だ。思い切って、第3号制度の廃止を打ち出すべきではないか。物価高と最賃引き上げで、もはや年収の壁を乗り越えて働こうという女性が急増している。今がチャンスである。
地方は既に高齢化が十分に進んでいる為、もはや高齢化の天井が見えており、高齢者人口の減少と相まって、介護施設は余ってきている。一方、東京などの都市部は、いままで高齢化率が低かった分、伸びしろ十分であり、人口が多いこともあり、今後、壮絶な介護施設不足となる。また、地価も地方に比べて高いので、介護施設を作ることも容易ではない。どうしても、都市部の高齢者の一部は、地方の介護施設に入ることを考えざるを得なくなるだろう。本当は、要介護状態になってから、見ず知らずの土地の介護施設に入るよりも、ある程度、その土地に慣れていた方が良い。それほど介護が不安なのであれば、退職後すぐの地方移住を考えるのも一案である。
この「2059年度の夫婦、年金は月38万円」という結果は、厚労省が7月に公表した財政検証のうち、「成長型経済移行・継続ケース」という絶好調のシナリオの場合である。つまり、①積立金の運用利回りは5.2%という高利回りでずっと運用され続ける、②賃金上昇率は年率3.5%という高率でずっと増え続ける、③一方、物価上昇率は2.0%に止まり続ける、というバラ色のシナリオである。現実離れしたお花畑のシナリオであれば、いくらでも年金が増える夢が語れるという以上の情報はない。もう少し現実的な「過去30年投影ケース」というシナリオでは「2059年度の夫婦、年金は月25.4万円」となる。これは今とあまり変わらない。
鈴木亘
学習院大学経済学部 教授
学習院大学経済学部 教授
【注目するニュース分野】社会保障、社会福祉、財政
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