ユニチカの将来性は? 繊維事業の撤退で全国1.9万社に影響か
大手繊維メーカーの「ユニチカ」が祖業である繊維事業から撤退し、2025年8月までに他社への事業譲渡や移管生産するという目標を公表しました。一方、協議が不調に終わると、取引先に影響が及ぼす可能性があります。帝国データバンク大阪支社によると、ユニチカの繊維事業の直接取引先は664社、販売先の販売先である間接取引先まで含めると全国1.9万社に上るといいます。
大手繊維メーカーの「ユニチカ」が祖業である繊維事業から撤退し、2025年8月までに他社への事業譲渡や移管生産するという目標を公表しました。一方、協議が不調に終わると、取引先に影響が及ぼす可能性があります。帝国データバンク大阪支社によると、ユニチカの繊維事業の直接取引先は664社、販売先の販売先である間接取引先まで含めると全国1.9万社に上るといいます。
目次
ユニチカの公式サイトによると、ユニチカのルーツは、1889年創業の「尼崎紡績」です。
1918年以降は三大紡績のひとつとうたわれた「大日本紡績」として日本の繊維産業を支え続け、1969年「日本レイヨン」との合併によって、ユニチカが誕生しました。
芯(コア)はポリエステル繊維、鞘(シース)は綿の複重層糸でつくる「パルパー」や、極細超長綿(スビンゴールド)とユニチカの紡績技術を組み合わせた綿100%の超極細紡績糸「舞鳳凰」など業界内でも評価の高い素材を作り続けてきました。
最近では、生ゴミと一緒に埋めたり堆肥化したりできるバイオマスプラスチック「テラマック」でも注目されています。
しかし、原燃料価格の高止まりによるコスト上昇、市況の変化に伴う需要の減少、東南アジアを中心とする海外市場での価格競争激化などから営業赤字が続くなか、繊維事業を縮小しつつ、事業の軸を高収益事業である高分子事業へシフトしていました。
ユニチカの事業再生計画(PDF)によると、それでも抜本的な収益改善につながらず、売上高、営業利益は低下傾向にあるなか、6年間で160億円の現預金が減少し、自助努力による資金繰りの維持が苦しい状況になっていました。
ユニチカは2024年11月28日、地域経済活性化支援機構による再生支援の決定を発表しました。主力銀行などがおよそ430億円の債権放棄に応じるといいます。
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そのなかで、事業の「選択と集中」により、以下の繊維事業から撤退することを明らかにしました。
他社への事業譲渡や移管生産等の取組みは、当該事業の特性や相手先との協議内容等を考慮しながら、原則として、2025年8月までの合意を目指すといいます。
ただし、協議が不調に終わる場合は、取引先に通知し可能な範囲で一定の供給責任を果たした上で、事業清算手続に移行する可能性があるといいます。
そのうえで、高分子などの将来性のある事業を中心とする事業ポートフォリオへと変革し、2029年度に営業利益65億円を目指す事業計画を明らかにしました。
こうしたなか、帝国データバンク大阪支社は、ユニチカの繊維事業撤退の影響を分析し公表しました。
それによると、ユニチカの繊維事業の直接取引先は国内に664社(仕入れ・外注先:256社、販売先:454社。一部重複)あり、販売先の販売先である二次取引先を含めると1万8960社に事業撤退の影響が及ぶ可能性があるといいます。
都道府県別や業種別にも影響を分析しています。
帝国データバンクによると、直接取引先のうち、仕入れ・外注先企業を見ると、繊維関連産業が多い「大阪府」が78社と最多でした。次いで、化学品関連での取引が多い「東京都」が33社、繊維関連の「福井県」が26社と続きました。
都道府県名 | 社数 |
---|---|
大阪府 | 78 |
東京都 | 33 |
福井県 | 26 |
京都府 | 21 |
愛知県 | 16 |
和歌山県 | 10 |
石川県 | 9 |
兵庫県 | 6 |
三重県 | 5 |
奈良県 | 5 |
埼玉県 | 4 |
岐阜県 | 4 |
滋賀県 | 4 |
岡山県 | 4 |
販売先企業は、「大阪府」が112社で最も多く、「東京都」が90社、「愛知県」が31社と続きました。
二次取引先は1万8506社に上り、社数でいうと、「東京都」が4105社で最も多く、「大阪府」が2792社、「愛知県」が1259社となり、この3都府県で4割を超えました。
直接取引先のうち、仕入れ・外注先企業について細かい分類でみると、「繊維・繊維製品・服飾品製造業」(83社)、「繊維・繊維製品・服飾品卸売業」(35社)と繊維関連業種が上位を占め、次いで「化学品製造業」(26社)、「化学品卸売業」(14社)と続きました。
業種 | 詳細な業種 | 社数 |
---|---|---|
製造業 | 繊維・繊維製品・服飾品製造業 | 83 |
化学品製造業 | 26 | |
機械製造業 | 5 | |
卸売業 | 繊維・繊維製品・服飾品卸売業 | 35 |
化学品卸売業 | 14 | |
その他の卸売業 | 13 | |
機械・器具卸売業 | 9 | |
運輸・通信業 | 15 | |
サービス業 | メンテナンス・警備・検査業 | 7 |
専門サービス業 | 4 | |
その他 | 12 |
帝国データバンクは「ユニチカが繊維事業から撤退することにより、繊維や化学関連の取引先において、販売先喪失などの影響が出る可能性が示唆される」とコメントしています。
販売先企業を見ると、「繊維・繊維製品・服飾品卸売業」(133社)、「繊維・繊維製品・服飾品製造業」(102社)、「化学品製造業」(32社)、「繊維・繊維製品・服飾品小売業」(19社)が上位に並びました。
一方で、二次取引先まで見ると、「卸売業」と「製造業」の占める割合が低下し、「建設業」や「小売業」、「サービス業」の割合が上昇しました。
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