多くの野生動物救助施設ではまた、粘着シートにかかったネズミの治療も行っている。米バージニア野生動物センターの対外担当ディレクターであるコナー・ギレスピー氏によると、同センターでは2024年、ほかの動物たちに加えて、ハツカネズミ1匹、シロアシマウス2匹を治療したという。

「粘着シートの残酷さを目の当たりにして、自分が捕まえたネズミを助けてほしいと持ち込んで来る人も少なくありません」と氏は言う。

「どんなに小さな動物であろうと、思いやりをもって接するに値すると、われわれは考えています。ネズミはここで治療する動物の大多数を占めるわけではありませんが、われわれはほかの動物たちと同じように、一匹一匹に敬意をもって対応しています」(参考記事:「ネズミも仲間が傷つくのを避ける、ヒトに似た個性も判明」

粘着シートを使わないネズミ対策

 ハーマンス氏のような動物保護活動家も、ネズミの駆除が必要な場合もあることを認めている。

 しかし、まず人々が行うべきは、食べ物や水、隠れ場所へのアクセスを最小限に抑えることにより、自宅をネズミにとって魅力的でない場所にすることだと、彼らは主張する。

「いくらトラップを仕掛けても、シンクの下に穴があいていれば、ネズミはそこを通り抜けてきます」と氏は言う。

 自宅のネズミ対策としては、動物が入れないゴミ箱を買う、家屋の開口部をすべてふさぐ、家の内外にある食べ物の残骸を片付けることなどが挙げられる。米疾病対策センター(CDC)が提供するネズミ対策の指針では、隙間や穴がありそうな場所やそのふさぎ方について特に詳しく説明されている。

 どうしてもトラップが必要な場合には生け捕り用のものを使い、ほかの野生動物を傷つける可能性のある殺鼠剤などの毒物を避けるよう、ハーマンス氏は勧めている。

 そして、もし意図しない動物を捕獲してしまった場合には、最寄りの野生動物病院へ連れて行ってほしい。

「だれにでも間違いはあります」と氏は言う。「その怪我が防げるものだった場合、それはわれわれにとって、野生動物を保護するために今後何をすべきかを人々に知ってもらう機会となります」

特集ギャラリー:都会のネズミたち(写真クリックでギャラリーページへ)
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米国ニューヨーク市のウェストブロードウェーを駆け抜けるネズミ。適応力が高く賢いネズミは、大都会でも生きられるよう進化した。数千年前から人間の暮らす場所に生息してきたが、多くの人間がネズミを恐れ、嫌悪している。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES)

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