「タラスコン」の版間の差分
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[[アヴィニョン]]の南23km、アルルの北20kmに位置し、ローヌ川を挟んだ対岸には[[オクシタニー地域圏]][[ガール県]]の小さな町[[ボーケール (ガール県)|ボーケール]]がある。 |
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タラスコンとボーケールは地域圏も県も異なるが、複数の橋で結ばれている。 |
タラスコンとボーケールは地域圏も県も異なるが、複数の橋で結ばれている。 |
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もっとも、流通面ではさながら一つの町のように機能している両者であるが、古くから土地と水利を巡って争いが絶えなかった歴史的経緯から、人的交流は極めて乏しい。 |
もっとも、流通面ではさながら一つの町のように機能している両者であるが、古くから土地と水利を巡って争いが絶えなかった歴史的経緯から、人的交流は極めて乏しい。 |
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参照元:1962年から1999年までは複数コミューンに住所登録をする者の重複分を除いたもの。それ以降は当該コミューンの人口統計によるもの。1999年までEHESS/Cassini<ref>http://cassini.ehess.fr/cassini/fr/html/fiche.php?select_resultat=37082</ref>、2006年以降[[INSEE]]<ref>https://www.insee.fr/fr/statistiques/3293086?geo=COM-13108</ref><ref>http://www.insee.fr</ref> |
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== 文化 == |
== 文化 == |
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[[ファイル:Tarasque de Noves (profil - époque incertaine).png|thumb|150px|人喰いの怪物を表した紀元前の[[石像]]<br />タラスクの原形と解釈され、「ノーヴのタラスク」と呼ばれる、[[ラ・テーヌ文化|ラ・テーヌ]]([[w:La Tène culture|en]])III期([[紀元前300年|紀元前300]]- [[ |
[[ファイル:Tarasque de Noves (profil - époque incertaine).png|thumb|150px|人喰いの怪物を表した紀元前の[[石像]]<br />タラスクの原形と解釈され、「ノーヴのタラスク」と呼ばれる、[[ラ・テーヌ文化|ラ・テーヌ]]([[w:La Tène culture|en]])III期([[紀元前300年|紀元前300]]- [[紀元前120年]]頃)に属する[[遺物]]である。[[ノーヴ]]([[w:Noves|en]])出土。[[アヴィニョン]]碑文博物館([[:fr:Musée Calvet|fr]])所蔵。<ref>『[[#ヨーロッパの祝祭|ヨーロッパの祝祭]]』163頁。</ref>]] |
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[[ファイル:MarthaundDrache.jpg|thumb|left|165px|信仰の力によって怪物タラスクを手なずけた聖マルタ]] |
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[[ファイル:Tarasque float (left).jpg|thumb|left|165px|タラスクの祭りにおける怪物タラスクの出し物]] |
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タラスク([[w:Tarasque|Tarasque]]、ラテン語式にタラスクスとも称)はこの町に伝わる伝説上の怪物<ref name="図説ヨーロッパ怪物文化誌事典p251">『[[#図説ヨーロッパ怪物文化誌事典|図説ヨーロッパ怪物文化誌事典]]』251頁。</ref><ref name="世界の怪物・神獣事典p257">『[[#世界の怪物・神獣事典|世界の怪物・神獣事典]]』257頁。</ref>で、中世[[イタリア]]の[[ヤコブス・デ・ウォラギネ]]著『[[レゲンダ・アウレア|黄金伝説]] 』に紹介されている<ref name="図説ヨーロッパ怪物文化誌事典p253">『[[#図説ヨーロッパ怪物文化誌事典|図説ヨーロッパ怪物文化誌事典]]』253頁。</ref>。 |
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それによれば、当時タラスクはローヌ川付近の森に棲息していたという。かつての棲み処は遠く[[オリエント]]の[[シリア]]にあったとし、海の巨怪[[レヴィアタン]]と[[ウシ|牛]]様の怪物オナクス([[ボナコン]]、追うと灼熱の[[糞]]を噴射する)との間に生まれた竜であり、かつ半獣半魚の合成獣とする<ref name=legenda-aurea-stace-tr/><ref name="世界の怪物・神獣事典p257" />{{Refn|group="注"|怪物ボナコンとレヴィアタンの間の子供とも、動物の[[ロバ]]とレヴィアタンの間の子とも、レヴィアタンそのものとも言われているという記述<ref>『[[#図説ヨーロッパ怪物文化誌事典|図説ヨーロッパ怪物文化誌事典]]』252頁。</ref>はあまり意味がなく、ボナコンはオナゲル([[アジアノロバ]])に違いないというラテン語の注釈があり{{sfnp|Dumont|1951|p=154}}、プランタジネット朝英国の{{仮リンク|ティルベリのゲルウァシウス|en|Gervase of Tilbury|fr|Gervais de Tilbury|label=ジェルヴェ・ド・ティルベリ}}による短い記載では片親のレヴィアタンにしか触れていないだけである{{sfnp|Dumont|1951|p=165}}。}}。また、他の異なる聖女伝によれば毒息を吐く邪悪な竜の眷属(けんぞく)で<ref>偽ラバヌス。{{harvp|Dumont|1951|p=167}}の仏訳:"un terrible dragon.. son souffle répandait une fumée pestilentielle".</ref><ref name="図説ヨーロッパ怪物文化誌事典p253" />、硬い甲羅、6本の熊爪の[[脚|肢]]、蛇状の尾を具えている<ref>偽マルケラ。{{harvp|Dumont|1951|p=158}}の仏訳: "six pattes aux griffes d'ours (queue de serpent), une double carapace comme une tortue de chaque côté."</ref>{{sfnp|澁澤|1994|p=414}}<ref name="図説ヨーロッパ怪物文化誌事典p253" />{{Refn|group="注"|ただし、[[考古学]]的・[[民俗学]]的知見から導き出されるタラスクの雛形[ひながた]と呼ぶべき存在は、古より[[ブーシュ=デュ=ローヌ県|ブーシュ=デュ=ローヌ地方]]にあるいは土着の謎多き人喰いの怪物[★右の画像を参照]である<ref>『[[#ヨーロッパの祝祭|ヨーロッパの祝祭]]』 {{要ページ番号|date=2015年9月}}</ref><ref>『[[#フランスの祭りと暦|フランスの祭りと暦]]』{{要ページ番号|date=2015年9月}}</ref>}}。 |
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それによれば、当時タラスクはローヌ川付近の森に棲息していたという。 |
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かつての棲み処は遠く[[オリエント]]の[[シリア]]にあったとし、海の巨怪[[レヴィアタン]]と[[ウシ|牛]]様の怪物[[ボナコン]]との間に生まれたものとする(ただし、[[考古学]]的・[[民俗学]]的知見から導き出されるタラスクの雛形[ひながた]と呼ぶべき存在は、古より[[ブーシュ=デュ=ローヌ県|ブーシュ=デュ=ローヌ地方]]に土着の謎多き[[カニバリズム|人喰い]]の怪物[★右の画像を参照]である<ref>『[[#ヨーロッパの祝祭|ヨーロッパの祝祭]]』 {{要ページ番号|date=2015年9月}}</ref><ref>『[[#フランスの祭りと暦|フランスの祭りと暦]]』{{要ページ番号|date=2015年9月}}</ref>)。 |
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毒息を吐き、灼熱の[[糞]]をまき散らす邪悪な竜の眷属(けんぞく)で、硬い甲羅に鋭い背鰭と{{要出典範囲|[[ヤマネコ]]の上半身|date=2015年9月}}、6本の[[脚|肢]]と[[ドラゴン]]あるいは[[ワニ]]の体を具えている<ref name="図説ヨーロッパ怪物文化誌事典p253" />。性質は獰猛で、人を喰らい、特に子供を好んで襲ったという{{要出典|date=2015年9月24日 (木) 13:50 (UTC)}}。怪物[[ボナコン]]と[[レヴィアタン]]の間の子供とも<ref name="世界の怪物・神獣事典p257" />、動物の[[ロバ]]とレヴィアタンの間の子とも、レヴィアタンそのものとも言われている<ref>『[[#図説ヨーロッパ怪物文化誌事典|図説ヨーロッパ怪物文化誌事典]]』252頁。</ref>。 |
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時は{{要出典範囲|西暦[[48年]]|date=2015年9月}}、[[キリスト教]][[布教]]のために[[サント=マリー=ド=ラ=メール]]からやってきた聖[[マルタ (マリアの姉)|マルタ]] (fr |
時は{{要出典範囲|西暦[[48年]]|date=2015年9月}}、[[キリスト教]][[布教]]のために[[サント=マリー=ド=ラ=メール]]からやってきた聖[[マルタ (マリアの姉)|マルタ]] ({{lang-fr-short|Sainte Marthe}}) は、当地にあるネルルク(「黒い森」の意)村を訪れた際、怖ろしい怪物タラスクの話を聞き、これを鎮めるべく森に入った。 |
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そこで怪物と対峙した聖女はしかし、臆することなく一心に祈りを唱え、[[聖水]]を振りかけることでこれを抑え込むことに成功する。 |
そこで怪物と対峙した聖女はしかし、臆することなく一心に祈りを唱え、[[聖水]]を振りかけることでこれを抑え込むことに成功する。そうして、鎖に繋がれて飼い犬のように聖女の下(もと)にひれ伏した怪物<ref>『[[#図説ヨーロッパ怪物文化誌事典|図説ヨーロッパ怪物文化誌事典]]』251-252頁。</ref><ref name="世界の怪物・神獣事典p257" />を、しかし、長らく苦しめられ続け、家族を喰われてきた村人たちは許すことなく、石礫(いしつぶて)でもって打ち殺した<ref name=legenda-aurea-stace-tr/>。 |
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そうして、鎖に繋がれて飼い犬のように聖女の下(もと)にひれ伏した怪物<ref>『[[#図説ヨーロッパ怪物文化誌事典|図説ヨーロッパ怪物文化誌事典]]』251-252頁。</ref><ref name="世界の怪物・神獣事典p257" />を、しかし、長らく苦しめられ続け、家族を喰われてきた村人たちは許すことなく、石礫(いしつぶて)でもって打ち殺した。 |
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タラスクの伝説は、中世以降、物語や絵画の題材になってきた{{要出典|date=2015年9月24日 (木) 13:50 (UTC)}}。 |
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今日、タラスコンでは毎年6月の最終土曜日に「タラスクの祭り」が開催されている。15世紀頃から始まったとされるこの祭りでは、タラスクを模した張り子が、タラスケルと呼ばれる若者達に曳かれて会場を進んでいく<ref name="図説ヨーロッパ怪物文化誌事典p251" />。 |
今日、タラスコンでは毎年6月の最終土曜日に「タラスクの祭り」が開催されている。15世紀頃から始まったとされるこの祭りでは、タラスクを模した張り子が、タラスケルと呼ばれる若者達に曳かれて会場を進んでいく<ref name="図説ヨーロッパ怪物文化誌事典p251" />。 |
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== アクセス == |
== アクセス == |
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タラスコン市街南部に[[フランス国鉄]](SNCF)の[[タラスコン駅]]があり、[[セット (エロー県)|セット]]、[[アヴィニョン]]、[[アルル]]方面への列車が発着する。 |
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<ref name=legenda-aurea-stace-tr>{{cite book|authormask=Jacobus de Voragine |authorlink=:en:Jacobus de Voragine |editor-last=Stace |editor-first=Christopher |editorlink=<!--Christopher Stace--> |title=The Golden Legend: Selections |location= |publisher=Penguin |year=1998 |url=https://books.google.com/books?id=0v4euSc4h1IC&pg=PA184 |pages=183–184 |isbn=<!--0140446486, -->9780140446487}}</ref> |
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== 参考文献 == |
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<!--この節には、記事本文の編集時に実際に参考にした書籍等のみを記載して下さい--> |
<!--この節には、記事本文の編集時に実際に参考にした書籍等のみを記載して下さい [著者名でなく題名のアイウエオ順ですね]--> |
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== 外部リンク == |
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[[Category:ブーシュ=デュ=ローヌ県のコミューン]] |
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2024年10月10日 (木) 12:20時点における最新版
Tarascon | |
---|---|
| |
行政 | |
国 | フランス |
地域圏 (Région) | プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏 |
県 (département) | ブーシュ=デュ=ローヌ県 |
郡 (arrondissement) | アルル郡 |
小郡 (canton) | シャトールナール小郡 |
INSEEコード | 13108 |
郵便番号 | 13150 |
市長(任期) |
リュシアン・リムーザン (2014年-2020年) |
自治体間連合 (fr) | fr:Communauté d'agglomération Arles-Crau-Camargue-Montagnette |
人口動態 | |
人口 |
15 056人 (2015年) |
人口密度 | 204人/km2 |
住民の呼称 | Tarasconnais |
地理 | |
座標 | 北緯43度48分21秒 東経4度39分37秒 / 北緯43.805833度 東経4.660278度座標: 北緯43度48分21秒 東経4度39分37秒 / 北緯43.805833度 東経4.660278度 |
標高 |
平均:? m 最低:3 m 最高:200 m |
面積 | 73,97km2 (7 397ha) |
公式サイト | tarascon.org |
北緯43度48分22秒 東経4度39分18秒 / 北緯43.80611度 東経4.65500度 タラスコン(フランス語:Tarascon、詳しくは後述)は、フランス南部の一地名。ローヌ川の右岸沿いに置かれた古代ローマの陣営に起源する歴史ある町であり[1]、現在はプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏ブーシュ=デュ=ローヌ県アルル郡の小郡庁所在地となっている都市である。かつては郡庁所在地であった。
地名の由来ともなっている怪物タラスクの伝説と、ルネ王の城ことタラスコン城などで知られる。
呼称
[編集]フランス語名 Tarascon (仮名転写:タラスコン)。別表記として Tarascon-sur-Rhône、Tarascon (Bouches-du-Rhône) などあり。英語名も、正式名・別表記ともフランス語に準じる。
別表記 Tarascon-sur-Rhône (仮名転写:タラスコン=シュール=ローヌ)は「ローヌ川沿いのタラスコン」を意味し、同名の別地名であるフランス南西部のタラスコン(タラスコン=シュール=アリエージュ[Tarascon-sur-Ariège。「アリエージュ川沿いのタラスコン」の意])と区別する必要がある場合に執られる表現の一つである。ただし、本項のタラスコンはあくまでも“本家”であり、したがって、地名として Tarascon 以外が用いられることは通常的でない。Tarascon (Bouches-du-Rhône) も同様で、所属地域であるブーシュ=デュ=ローヌの名を借りての説明表記であって地名ではない。そのほか、上記のようなかたちを執らず、平素な言葉による説明で済ませる場合もある。
地理
[編集]アヴィニョンの南23km、アルルの北20kmに位置し、ローヌ川を挟んだ対岸にはオクシタニー地域圏ガール県の小さな町ボーケールがある。 タラスコンとボーケールは地域圏も県も異なるが、複数の橋で結ばれている。 もっとも、流通面ではさながら一つの町のように機能している両者であるが、古くから土地と水利を巡って争いが絶えなかった歴史的経緯から、人的交流は極めて乏しい。
人口統計
[編集]1962年 | 1968年 | 1975年 | 1982年 | 1990年 | 1999年 | 2006年 | 2015年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
8637 | 10584 | 10365 | 10735 | 10826 | 12640 | 13376 | 15056 |
参照元:1962年から1999年までは複数コミューンに住所登録をする者の重複分を除いたもの。それ以降は当該コミューンの人口統計によるもの。1999年までEHESS/Cassini[2]、2006年以降INSEE[3][4]
文化
[編集]怪物タラスク
[編集]タラスク(Tarasque、ラテン語式にタラスクスとも称)はこの町に伝わる伝説上の怪物[6][7]で、中世イタリアのヤコブス・デ・ウォラギネ著『黄金伝説 』に紹介されている[8]。 それによれば、当時タラスクはローヌ川付近の森に棲息していたという。かつての棲み処は遠くオリエントのシリアにあったとし、海の巨怪レヴィアタンと牛様の怪物オナクス(ボナコン、追うと灼熱の糞を噴射する)との間に生まれた竜であり、かつ半獣半魚の合成獣とする[9][7][注 1]。また、他の異なる聖女伝によれば毒息を吐く邪悪な竜の眷属(けんぞく)で[13][8]、硬い甲羅、6本の熊爪の肢、蛇状の尾を具えている[14][15][8][注 2]。
時は西暦48年[要出典]、キリスト教布教のためにサント=マリー=ド=ラ=メールからやってきた聖マルタ (仏: Sainte Marthe) は、当地にあるネルルク(「黒い森」の意)村を訪れた際、怖ろしい怪物タラスクの話を聞き、これを鎮めるべく森に入った。 そこで怪物と対峙した聖女はしかし、臆することなく一心に祈りを唱え、聖水を振りかけることでこれを抑え込むことに成功する。そうして、鎖に繋がれて飼い犬のように聖女の下(もと)にひれ伏した怪物[18][7]を、しかし、長らく苦しめられ続け、家族を喰われてきた村人たちは許すことなく、石礫(いしつぶて)でもって打ち殺した[9]。
今日、タラスコンでは毎年6月の最終土曜日に「タラスクの祭り」が開催されている。15世紀頃から始まったとされるこの祭りでは、タラスクを模した張り子が、タラスケルと呼ばれる若者達に曳かれて会場を進んでいく[6]。
1991年、フランス南西部はピレネー山麓の町エスペラザ(en)にて化石が発見された肉食恐竜に、この伝説の怪物に因んだ「タラスコサウルス」という学名が付けられた[要出典]。
英雄タルタラン
[編集]タルタラン (Tartarin) は、小説家アルフォンス・ドーデの3部作『陽気なタルタラン(en)』『アルプスのタルタラン』『ポール・タラスコン』に登場する、タラスコンを生まれ故郷とする架空の英雄で、世界を股にかける冒険家である。 タルタランのシリーズは19世紀を舞台にした物語であり、怪物タラスクとその祭りのことも話の中で語られている。 そのような関係から、タラスクの祭りには英雄タルタランに引き連れられるかたちで怪物タラスクが現れるのである。
なお、1985年にはタルタランを記念した小さな博物館がオープンしている。
観光名所
[編集]聖ヨハネ門 (Portail Saint Jean)、コンダミヌ門、ジャルネーグ門 :かつての市壁の名残である3つの門。聖ヨハネ門が正門。
聖マルタ教会 :聖マルタが埋葬されていると伝えられている。建築様式は、12世紀ロマネスクと14世紀ゴシックで二分されている。地下納骨堂の由来は3世紀にまで遡る。
タラスコン城 :川沿いにあり、現在のものは1401年にアンジュー公ルイ2世が建造に着手したものである。建造は長男ルイ3世が引き継ぎ、次男ルネが1447年に完成させた。落成者の名を採り、この城はしばしば「ルネ王の城 (le château du roi René)」と呼ばれている。城は17世紀以降、国有になる1932年まで軍用の牢獄に転用されていた。
町役場 :1648年築造。
アクセス
[編集]タラスコン市街南部にフランス国鉄(SNCF)のタラスコン駅があり、セット、アヴィニョン、アルル方面への列車が発着する。
注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 『ローヌ河歴史紀行』157頁。
- ^ http://cassini.ehess.fr/cassini/fr/html/fiche.php?select_resultat=37082
- ^ https://www.insee.fr/fr/statistiques/3293086?geo=COM-13108
- ^ http://www.insee.fr
- ^ 『ヨーロッパの祝祭』163頁。
- ^ a b 『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』251頁。
- ^ a b c 『世界の怪物・神獣事典』257頁。
- ^ a b c 『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』253頁。
- ^ a b Stace, Christopher, ed (1998). The Golden Legend: Selections. Penguin. pp. 183–184. ISBN 9780140446487
- ^ 『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』252頁。
- ^ Dumont (1951), p. 154.
- ^ Dumont (1951), p. 165.
- ^ 偽ラバヌス。Dumont (1951), p. 167の仏訳:"un terrible dragon.. son souffle répandait une fumée pestilentielle".
- ^ 偽マルケラ。Dumont (1951), p. 158の仏訳: "six pattes aux griffes d'ours (queue de serpent), une double carapace comme une tortue de chaque côté."
- ^ 澁澤 (1994), p. 414.
- ^ 『ヨーロッパの祝祭』 [要ページ番号]
- ^ 『フランスの祭りと暦』[要ページ番号]
- ^ 『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』251-252頁。
参考文献
[編集]- 松平俊久「タラスク」『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』蔵持不三也監修、原書房、2005年3月、190-191頁。ISBN 978-4-562-03870-1。
- キャロル・ローズ 著、松村一男 監 訳『世界の怪物・神獣事典』原書房、2004年12月7日、257頁。ISBN 978-4-562-03850-3。
- マリ=フランス・グースカン 著、樋口淳 訳『フランスの祭りと暦』原書房、1991年8月7日、70-71,82-83頁。ISBN 978-4-336-03948-4。
- レオン・マルケ、エンツォ・スペーラ、ジェニファー・M・ラス 著、蔵持不三也編著 編『ヨーロッパの祝祭』河出書房新社、1996年9月17日、153-225頁。ISBN 978-4-309-22300-1。
- 笹本駿二『ローヌ河歴史紀行 - アルプスから地中海へ』岩波書店〈岩波新書〉、1980年9月22日、157-158頁。ISBN 978-4-004-20132-8。
- Dumont, Louis (1951). La Tarasque: essai de description d'un fait local d'un point de vue ethnographique L'Espèce humaine (6 ed.). Paris: Gallimard. ISSN 2649-8952
- 白木茂 訳『アルプスのタルタラン』金の星社〈ジュニア版・世界の文学 10〉、1967年1月。ISBN 978-4-323-00770-0。
- 草野巧 著、新紀元社編集部 編『幻想動物事典』新紀元社〈シリーズ・ファンタジー百科〉、1997年5月3日。ISBN 978-4-883-17283-2。
- 日本民話の会、外国民話研究会 訳『世界の妖怪たち』三弥井書店〈世界民間文芸叢書別巻〉、1999年7月15日、167-168頁。ISBN 978-4-838-29048-2。
- ドーデー 著、畠中敏郎 訳『タラスコンみなと』岩波書店〈岩波文庫〉、1955年9月25日。ISBN 978-4-003-25426-4。
関連書籍
[編集]- フィリップ・ヴァルテール 著、渡邉浩司・渡邉裕美子 訳『中世の祝祭 - 伝説・神話・起源』原書房、2007年4月5日、217-220頁。ISBN 978-4-562-04054-4。
関連項目
[編集]- ヴァロワ=アンジュー家
- タラスコサウルス :怪物タラスクの名を冠した肉食恐竜。
- タラスコン=シュール=アリエージュ(en) :同名の別地名。