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彼女と彼のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

彼女と彼(1963年製作の映画)
3.8
羽仁進監督が脚本家清水邦夫と組んで(共同脚本)、団地に住む若妻の心の変容を描いたATG配給のドキュメンタリー風社会派ドラマ。
撮影は長野重一。
音楽は武満徹。
左幸子がベルリン国際映画祭銀熊賞 (女優賞)を受賞。
(1963、114分)
 
そろそろ子どもをと考えてもよさそうだがまだまだ新婚気分のような中流階級のサラリーマン夫婦。
彼女=妻・ 石川直子(左幸子)と公務員である彼=夫・英一 (岡田英次)はコンクリート造りの近代的な大型団地で暮らしている。
眼下に見えるバタヤ(廃品回収を生業として暮らす人)部落が火事になったことをきっかけに、妻は夫の大学時代の友人でこの部落に住む男・伊古奈/ いこな(山下菊二)と出会う。
伊古奈は薄汚い粗末な家(小屋)で、身寄りのない盲目の少女(五十嵐まりこ)と暮らし、いつも黒い大きな犬「クマ」を連れて、みすぼらしい姿でリヤカーを引いていた。
なぜか、貧しくてもバタヤとして自由に暮らす伊古奈と少女が気になる直子は、次第に団地暮らしに疲弊し、夫との距離を感じていく…。

"子どもたちの(戦争)遊び"
"泥棒事件"
"子どもの高熱"
"金網の柵"
"犬が行方不明"
"取り壊し"

「まるで山の中にいるみたい。まるで誰もいないみたい」

そう言えば、かつて「コンクリート・ジャングル」という言葉も聞かれたが、舞台になるのは、コンクリートの壁で隣人と隔離された団地と隣接するバタヤ部落(スラム街)。そして描かれる人たちは二つの地域に住む対照的な大人と子どもたち。
周囲に無関心な夫や団地の人たちの中で唯一、バタヤ部落の人たちに感心を寄せた妻は混乱し疲弊していきます。
妻役の左幸子はとても感情表現がうまい女優です。彼女の映画は注目してみてください。
素人も起用しドキュメンタリー・タッチで芸術色の強い映画を作る羽仁進監督だが、羽仁作品は初めての鑑賞。
カメラと音楽も効果を発揮。
他の作品も機会があれば何とかみたいものです。
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