1900年初頭、動乱のロシアを舞台に繰り広げられる、男女の道ならぬ恋を描いた大作。
映画史に残る名作と言われるだけあって鑑賞後は小説を一冊読み終えたかのような余韻が残った。それはこの映画が200分もあって単純に振り返るシーンが多いだけかもしれないが、それだけに留まらない、圧倒される感じがあったのだ。まずは、物語の構成だろう。革命や戦争、その中で育まれるロマンスを描きながら、最終的な着地点は物語の始めの女性にある。始めと終わりがきちんと繋がっていて、見ていてすっきりする。(間の展開がよく分からないことはあっても。)
次に、圧倒的なスケールで描かれる冷たい戦争の残酷さが頭に残るところ。極寒の地で疲弊していく貧しい人々や、女・子供も関係なく殺す戦争の残酷さをこれでもかと見せつけてくる。そんな時代を生き抜いたのだという感慨が残る。
そして何より、モーリス・ジャールの音楽だ。バラライカの繊細な音色と壮大な音楽の組み合わせがとにかく印象的なのだ。凍てつくような寒さも、温かな春も、どちらも感じさせる素敵な旋律が耳に残る。
ユーリ・ジバゴを演じたエジプト人俳優オマー・シャリフ(アラビア語読みするとオマル・シャリーフ)はデヴィッド・リーン監督の前作「アラビアのロレンス」にも出演している。見る度に目力がすごいな、と思う。
「アラビアのロレンス」の時は切るような鋭さのある目力だが、今作は優しさと強さを秘めた目つき、とでもいえるだろうか。素晴らしい魅力があると思った。