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警 告 本項は実在した人物および事件を解説したものです。できるだけ無味乾燥な表現を用い、残酷な表現は省略する方向で作成していますが、その猟奇的な内容によって気分を害する恐れがあります。それでもなお読みたいという方のみ、以下の記事をお読みください。 |
テッド・バンディとは、アメリカに実在した連続殺人犯である。
本名・セオドア・ロバート・バンディ(Theodore Robert Bundy)。ゲイリー・ハイドニクやエドマンド・ケンパーと並ぶ、高知能連続殺人犯の代表格。
英語圏における連続殺人犯の通称「シリアルキラー」が生み出されるきっかけとなり、またFBI行動科学科が全米規模で殺人データベースを作る理由となった。
アメリカのポルノ規制に関する法案、通称「バンディ法案」の語源となるなど、アメリカの犯罪捜査や政治面に大きな影響を与えた人物として知られる。
IQ160の頭脳、高学歴、すぐれたルックスと言い回しなど、およそフィクション作品から飛び出してきたかのような犯罪者で、容疑者となって刑が確定して以降も数多の女性ファンを獲得したが、その実態はおぞましいまでの性倒錯殺人鬼である。
文中では呼称をバンディとして統一する。
セオドア・ロバート・バンディは1946年11月24日に生まれた。
高校を出たばかりの母親が、流れ者の男に誘惑されたあげく捨てられ、その結果生まれた私生児であった。母は生まれたばかりの彼を里子に出すかどうか、両親と相談しに帰郷したため、約2か月もの間施設に預けられていたという。
結局実母とその両親はバンディを引き取ったが、体面を恐れて彼を「母の弟」として育てた。
直接の養育者となった祖父は旧態依然とした絶対的暴君であり、動物を虐待し、平然と家族へ暴力を振るう人物だった。こういった成長環境から、バンディは反社会性パーソナリティ障害を患ったと見られ、泊まりに来た親類のベッドへ包丁を刺しこもうとした、という証言がある。ただしバンディ本人は祖父の虐待を一貫して否定し、詳しく語っていない。
外見上、家庭環境がバンディに大きなハンデを与えたようには見えず、周囲からは頭も顔もよく、ウィットにとんだ少年と思われていた。ただし高校時代の友人は
彼はほんのわずかな会話で周りを笑わせることができた。なのにそのあとを続ける自信がないようだった。社会的な局面になると急に黙ってしまう。女の子や新しい友達とつきあうのがすごく苦手そうだった。
と語っている。
それはバンディが私生児の素性を隠すためにかぶった「プライド」という仮面が原因だった。
高すぎるプライドゆえに失敗することを恐れたバンディは、自信のないことには挑めなかった。スポーツの大部分は避け、確実な答えの用意されている授業においてアイデンティティを確立しようとした。
高校時代まではそれが通用したが、大学ではそうはいかなかった。バンディ並の秀才はごろごろしており、といって社会性のない彼が課外活動でうまくやれるはずもない。
友愛会(フラタニティ)にも所属せず、唯一参加していたのが中国語の学習だった。そこでの出会いが、バンディの性質を定める運命へ導いていく。
ステファニー・ブルックスは、バンディと相反する高嶺の花だった。
家は裕福で、美しく教養があり、外交的で明るく世慣れていた。ストレートの長髪をセンターで分けた彼女にバンディは夢中になり、また彼女もバンディのナイーブさに惹かれていった。バンディはステファニーを想うあまり、それまで在籍していたワシントン大学からスタンフォード大学の中国語科へ編入したほどだった。
ところがそれは大きな選択ミスだった。家から離れ、同級生にもなじめずに孤独感にさいなまれたバンディは、徐々に授業に遅れるようになる。
更にステファニーがいつまでたっても子供っぽいバンディに飽きて、恋人関係を解消してしまったのである。絶望したバンディは成績が急落し、ついには大学を辞めてしまった。
ドロップアウト後、盗みやアルバイトで食いつないでいたバンディへ、ひょんなことから共和党のワシントン州副知事候補アート・フレッチャーの選挙ボランティアの話が舞い込んだ。彼はすぐその話に飛びついた。選挙運動中なら、参加しているだけで憧れた上流階級の人々と対等に会話できるからだ。
このボランティア活動を通じ、バンディはそれまで欠けていた自信を養っていく。
ワシントン州共和党委員会の副議長に選出され、強盗犯人を自力で逮捕し、湖で溺れていた子供を助け、自殺志願者救援サービス「いのちの電話」で働いた。さらに再び学業意欲に燃えてユタ大学のロースクールに挑戦した際には、ワシントン州知事の推薦状まで受けたほどである。バンディはかつての気弱さがウソだったかのような、魅力あふれる男性へ変身を遂げた。
1973年7月、バンディは再びステファニーに会うためカリフォルニアへ飛んだ。彼の明らかな変身ぶりにステファニーは激しく魅了され、すぐさま婚約を結んでしまう。しかしその直後、バンディは冷淡になった。クリスマスの約束をキャンセルし、婚約を破棄。バンディは最初から、かつて自分を振ったステファニーへ同じ報復をするためだけに再会したのだ。
しかしバンディの内に秘められた黒い衝動はそれで満足しなかった。翌年1月、シアトルで睡眠中の女性が襲われ、昏睡状態に陥る重傷を負わされた。バンディの3年間にわたる凶行の始まりだった。
1974年2月からは、毎月若い女性がひとり行方不明になった。4月、7月には彼女らの失踪に関わっていそうな男の目撃情報も出た。捜査を開始した警察は、行方不明者のパターンを洗い出した。
これらの情報が判明しても、容疑者の逮捕は容易ではなかった。バンディは並外れた誘惑テクニックと、旺盛な「衝動」、そして用心深さを併せ持つ連続殺人犯だったのである。
彼は乱暴そうに見えない甘いルックスを利用し、ギプスをはめた怪我人と見せかけて獲物の油断を誘い、隙をみて暴行殺人に及ぶ手口を毎回のように使った。
同じ場所で犯行を続けることが危険であることもよく理解しており、狩り場を移すことも怠らなかった。ワシントン、ユタ、コロラド──州境を越えて移動する殺人鬼に対し、当時の警察は打つ手がなかった。
ところが1975年8月16日、夜中にドライブ中だったバンディは、たまたまパトカーに出くわしてパニックを起こし、無意識に逃亡を図ってしまう。結局車を止めさせられ、車内を捜索した警官によってスキーマスク、手錠、金てこ、拷問用具、女性のものと思われる毛髪が発見された。
そして前年に運よくバンディの魔手から逃れた女性の証言によって、誘拐罪で起訴される。状況から警察はバンディが件の連続殺人犯と見て、追及の手を強めた。
バンディの逮捕には、友人どころか司法の側も戸惑いを隠せなかった。顔立ちも成績も経歴も優れ、当時同棲していた恋人の連れ子を人一倍可愛がるような男が、どうして連続殺人など犯せるのか。
しかも警察は、逮捕から半年経っても殺人罪での起訴に足る証拠を集められない有様だった。結局バンディは誘拐罪のみで1年~15年の不定期刑となった。
安堵するバンディの前に、しかし新たな証拠が突きつけられた。コロラド州で行方不明になった女性の毛髪が、車から発見された毛髪と一致したのである。
1977年、殺人容疑の裁判はコロラド州アスペンで行われることになった。殺人とあっては簡単に逃げられない、そう危機感をつのらせたバンディは、腹案を持って二階の法律図書室への入室許可を得ると、その窓から飛び降りてまんまと脱走に成功する。
さながらダークヒーローを思わせる鮮やかな脱走劇によって、バンディは一躍人気者に登りつめた。
アスペン市では肉の逃げ出した「バンディ・バーガー」、メキシカン・ジャンピング・ビーンの入った「バンディ・カクテル」を出す店が続出。バンディの写真入りTシャツが飛ぶように売れ、ディスコ客は「バンディは生きている」と合唱し、ヒッチハイカーは「バンディじゃないよ」のカードをあげて指を立てた。
だがバンディは自分で思っていたほど賢くなかった。
アスペン山中に入ったあと警察の裏をかいて南に逃げるつもりが、大回りして元の場所へ戻ってきてしまっていた。逃亡から一週間、バンディは盗んだ車を運転中に警察を見て、またもパニックを起こし再逮捕された。明確な答えのある学問と違い、計画していないことには対応できない──成長したように見えて、バンディの幼いころからの本質は何も変わっていなかった。
裁判の再開までバンディは、コロラド州グレンウッドスプリングスの刑務所に収監された。とはいえすでにアイドル化されていた彼の人気は大変大きく、再び脱獄を計画して絶食すると半年後、何者かによって糸ノコが差し入れられた(なんらかの方法で糸ノコを持ったまま入った、という説もある)。
それで天井に小さな穴を開け、やせた体を利用して脱走。シカゴ、ミシガン、アトランタを経てフロリダに入ったころ、持ち前の殺人衝動が抑えられなくなり、最後の犯行現場へ向かったのである。
1978年1月。
法廷と刑務所、二度にわたって脱走を果たしたバンディの手腕に、警察は驚きあわて、マスコミはもう「誰にも止められない」と騒ぎ立てていた。
演劇経験があり、口も達者なバンディは、髪の長短や髭の有無だけで別人に成りすます才能を持っている。彼がかつてそうしていたように、再び月に一度の連続殺人が繰り返されるに違いない、あるいは罪を犯さず永久に警察の目から逃れ続けるのでは、と誰もが思っていた。
しかし当のバンディからは、かつてほどの計画性が失われていた。監獄での禁欲生活はわずか半年程度に過ぎなかったが、それが彼の内にあった殺人衝動を抑えきれないほど高めてしまったのだろう。若い女であれば相手は誰でもいい──ただ殺したい。その欲望がバンディをフロリダ州立大学のカイ・オメガ寮に向かわせていた。
深夜、棍棒を手に荒れ狂ったバンディは、女子寮で寝ていた女子大生を手あたり次第に殴り、性的暴行を加え、二人が死亡、二人が重傷を負った。
それでも黒い衝動はおさまりを知らず、寮から1ブロック離れた場所に住んでいた女子大生にも重症を負わせた。さらに同年2月、レイクシティに移動したバンディは12歳の少女を誘拐して暴行殺人に及んだ。確認できている限り、彼女がバンディによる最後の犠牲者である。
その後まもなく、バンディは乗っていた車が盗難車だったことから再逮捕された。
高い知性を取沙汰されたバンディにしては、あまりにもあっけない逮捕劇──とは言えず、前2度の逮捕の際もささいなミスが命取りとなっていた。
1979年からマイアミで始まったカイ・オメガ寮事件の裁判にあたって、驚くべきことにバンディは5人の国選弁護人をすべて罷免し、学んだ法学知識を生かして自分で自分を弁護した。
しかし検証によって犠牲者の遺体に残された歯型と、バンディの歯型が一致した点は致命的だった。さらに抗弁の際に見せた気取った態度は、陪審員の神経を逆なでした。
結果、下った判決は死刑。宣告の際、裁判官はバンディの恵まれた才能を惜しむ言葉を残している。
貴下が電流によって死に至るまで座っているよう、貴下が死ぬまで電流が貴下の体内を通るよう、ここに命じるものである。体に気をつけなさい(Take care of yourself)。青年よ。これは真摯に言っているのだ。この法廷で私が経験したそのような人間性の浪費は、この裁判所にとって悲劇とも言える。貴下は聡明な青年だ。貴下は優秀な法律家になれたかも知れない。そして私は、法廷で貴下が活躍する姿に惚れ込んだかも知れない。私は、貴下に何ら敵意も持っていない。それは理解してほしい。しかしあなたは道を間違えた。体に気をつけなさい。
バンディはあくまで冤罪、無罪を訴えて上訴し続けたが、すべて棄却された。
FBIや警察と面談する機会も何度か設けられたが、自らの罪を認めることも、犯行内容を詳細に語ることも最後までしなかった。このため、バンディが殺害した人数に関しては正確な数がわかっていない。立証できたのが36人だけで、おそらく犠牲者はもっと多かったものと考えられる。「彼の性質からすると、10代から殺人を犯していた可能性もある」と推理する捜査官もいる。
獄中に入って以降もバンディの人気は続き、「プリズン・グルーピー」と呼ばれる連中から数百ものファンレターが届くほどであった。
1989年1月24日、電気椅子による処刑が執行された際には、1000人もの群衆が集って喝采し、花火もあがったと言われる。享年42歳だった。
翌日の新聞の一面にはバンディの遺体のカラー写真が掲載され、見出しにはこう書かれていた。
バンディが残した影響は、冒頭にも記したシリアルキラーという通称の起因、全米殺人データベースの作成などである。
「バンディ法案」に関しては、バンディが「俺たちのようにメディアの暴力、とくにポルノ的な暴力に大きな影響を受ける者は、決してもともと怪物ではないことを理解すべきだ。俺たちはみんなの息子、夫なのかもしれない。ごく普通の家庭で育ったのだ」と、テレビでポルノの危険性について語ったことに起因する。
また、トマス・ハリスの小説「羊たちの沈黙」に登場する殺人鬼ハンニバル・レクター、およびバッファロー・ビルのモデルになったともいわれる。
レクターのモデルは連続殺人犯ヘンリー・リー・ルーカスと言われるが、生憎彼には学がなかったため同様の連続殺人鬼で知力も並外れていたバンディも取り込んだのではないか、というものである(ハリスは具体的なモデルを示していないため、あくまでファンの推理にすぎないが)。
実際、バンディは獄中で自らの存在価値を証明するため、1982年以降に起こった連続殺人犯「グリーン・リバー・キラー」の犯人像をプロファイルしたことがある。
バッファロー・ビルの性質的モデルはエド・ゲインであるが、獲物をを狙うときの「けがを装って女性の油断を誘う」という手口はバンディの影響が伺える。ビルにはこのほかにも、犠牲者の監禁方法においてゲイリー・ハイドニクの影響が見られる。
掲示板
45 ななしのよっしん
2022/06/10(金) 00:08:49 ID: m43N6+lwLc
結果からすれば邪悪な存在が騙し果たせた、と言えるのだろうけど、一時期はこれだけ有力者から推薦を受けるまで至ったのだから、確かに頭脳と才覚は本物だったのだろう。
しかし、バンディは“プライド”という最も人間臭いところに執着し続けた故に凶行を重ね続けた。シリアルキラーたる所以がそんなところにあったとは本当に皮肉なもんだ。
そういえば、数年前のザック・エフロン主演の映画は実によくできていたな。
46 ななしのよっしん
2023/02/10(金) 06:56:57 ID: rEPbnQz0jl
>>37
同じことを私も思った。ティモシー・マクベイは優秀だったことを証明するエピソードが沢山残っているのに、コイツは人を騙す才能以外に見当たらない。
それに自分をふった女を、当て付けに婚約破棄ってのは、発想が凄く凡人臭い。私がイメージするサイコパスの印象からは大きく外れている。
後、どうしても私にはイケメンに見えない。どちらかというとブサメンに近いと思うのだが。
47 ななしのよっしん
2023/10/03(火) 17:17:29 ID: KglQcmZIyf
日本人の想像するイケメンとはたしかに違うかもな
自分的にはたしかにハンサムというか、昔の海外の俳優にいてもおかしくない顔だなと思った
見たのがもう年取ってからの写真だから、若い頃はもっとイケメンだったんじゃね?とは思える顔つきだと思う
にしても顔がよけりゃ殺人犯でも持ち上げられるのは日本も海外も変わらんのね
急上昇ワード改
最終更新:2025/03/03(月) 08:00
最終更新:2025/03/03(月) 07:00
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