表記ゆれ(表記揺れ、表記のゆれ、表記の揺れ)とは、一つの物事・概念を指す言葉に、複数の異なる表記が存在すること。
狭義には「ある一つの文書の中で」と言う但し書きが入るのだが、この記事ではそういった限定はせずに広義の意味で述べる。
概要
たとえば「アイドルマスター」と「IDOLM@STER」と「THE IDOLM@STER」、「コンピューター」と「コンピュータ」、「クトゥルー」と「クトゥルフ」と「ク・リトル・リトル」、そして冒頭でも示したように「表記ゆれ」と「表記揺れ」と「表記のゆれ」と「表記の揺れ」など。
人間が実際に読む場合には「表記は違うがこれらは同じ物事を指しているな」と判断できるため問題とはなりづらいかもしれない。
だが、検索などの場面でコンピューターが判断する場合は、何らかの方法でコンピュータに「この二つは表記は異なるが同じものである」と認識させる必要が生じるため、結構めんどうくさいことになる。
この問題点の解決策の代表は、検索の際に「or検索」を利用することである。詳細は該当記事を参照されたい(⇒「or検索」)。
ただ、大半の検索エンジンサイトではデータベースを元にある程度の表記揺れを把握しており、「これらは同じものを指しているな」と内部で判断して、別の表記ゆれでの検索結果も同時に提示してくれることもある。例えばGoogleで「IDOLM@STER」を検索すると、「アイドルマスター」でのヒットも交えて表示してくれる。
表記揺れが単なる「誤記」とは異なるのは、どの表記にも(程度の差こそあれ)正当性はあること。ただし「もともとは誤記であるが、広まりすぎて沢山の人が 使用しているため、単なる誤記と切って捨てるには不都合になってしまった」というような場合には、明らかな誤記も表記ゆれの一つと見なして対処が必要な場合もある。
(例えば任天堂のシミュレーションRPGゲームシリーズ「ファイアーエムブレム」はこれが正しい表記だが、「ファイアーエンブレム」「ファイヤーエムブレム」「ファイヤーエンブレム」との誤表記も広まってしまっている。よって「ファイアーエムブレム」に関することを公式的なこと以外でも広く調べたい場合、他の誤表記についても「or検索」を行うなど表記ゆれに準じた対応をしなくては、得られる情報に漏れが生じてしまう。)
表記の揺れの例
記号関連
- 「大正野球娘。」と「大正野球娘」 - 「。」の有無
- 「フロム・ソフトウェア」と「フロムソフトウェア」 - 「・」の有無
- 「コンピューター」と「コンピュータ」 - 語尾の「ー」の有無。特にIT系では慣習的に長音は基本付さないのが常識だったが、今日では基本長音を付すように要綱が変更になった。しかし、それでも業界では付さない方が多い。他に「プロセッサー」と「プロセッサ」、「インタプリター」と「インタプリタ」など。
- 「電車でGO!」と「電車でGO」 - 「!」の有無
- 「もうそう♥えくすぷれす」と「もうそう♡えくすぷれす」 - 「♥:中が塗りつぶされたハート」と「♡:中が空白のハート」
- 「キャンディ♥キャンディ」と「キャンディ・キャンディ」と「キャンディキャンディ」 - 「♥:ハート」と「・:中黒」とどちらもなし。「♥:ハート」が機種依存文字であることから、「・:中黒」で代用されたり、あるいは単に省略されてしまう。
- 「DARK SOULS」と「DARKSOULS」 - 「 :半角スペース」の有無。ニコニコ動画のタグでは半角スペースが入った言葉は2つの別のタグと判断されてしまうため、半角スペースを省略した表記が使われることがある。また、「_:半角アンダーバー」が半角スペースの代わりとして使われることもある。
言語の違い
- 「super」と「スーパー」 - 英語とそのカタカナ表記
- 「Хорошо」と「ハラショー」 - ロシア語とそのカタカナ表記
- 「ルシファー」と「ルシフェル」と「ルキフェル」 - ルシファーは英語発音、ルシフェルはフランス語やスペイン語やポルトガル語での発音、ルキフェル(ルーキフェル)はラテン語発音。ニコニコ大百科ではそれぞれ別の意味の記事に割り当てられている。
社名の間違い
- 「Canon」と「キヤノン」 - キャノンと書かれたり、呼ばれたりすることがある。
- 「Shachihata」と「シヤチハタ」 - シャチハタと書かれたり、呼ばれたりすることがある。
- 「𠮷野家」と「吉野家」※吉の字は、正しくは「土(つち)」に「口(くち)」と書きます。
地名
外来語をカタカナに当てはめたもののため、読み方が表記揺れのものが多い。
- 「ペンシルバニア」と「ペンシルベニア」 - 某百科事典で不毛な編集合戦にまでなったほど。
- 「エカテリンブルク」と「エカテリンブルグ」- ロシア地名はこういったケースが多い。
- 「ボルチモア」と「ボルティモア」ー 日本語にない拗音の場合。
- 「ベルサイユ」と「ヴェルサイユ」ー VとBの発音の場合。
- 「イスタンブル」と「イスタンブール」ー 長音を付すか否か。
- 「ブリスベン」と「ブリスベーン」と「ブリズベン」ー 現地の発音が統一されていないため
- 「バンガロール」と「ベンガルール」ー インドの場合、植民地時代の英語読みと現地読みの2種類があり、どっちが正式な読み方になるかは市でまちまち。
- 「ボゴタ」と「サンタフェデボゴタ」ー 通称と正式市名。市販の地図でも表記はまちまち。
- 「白浜温泉」と「南紀白浜温泉」ー 後者は旅行会社が区別するために勝手に名付けたもの。「南紀」という言葉自体が造語で、地図での表記は前者。類例として山口県の「湯本温泉」と「長門湯本温泉」があるが、こっちは地図でも記述は後者と基準は曖昧。
サービス名
- YouTube…「Youtube」「youtube」「You Tube」「you tube」など。
- VTuber…「バーチャルYouTuber」「VTuber」「vtuber」「Vtuber」など。
バーチャルユーチューバーに準じるなら「VTuber」に統一したほうがいいと思う…実際には「バーチャルYouTuber」専門雑誌・企業においても表記の統一がされてない現実がある。
niconicoにおいて
ニコニコ動画・ニコニコ静画・ニコニ立体
ニコニコ動画やニコニコ静画やニコニ立体では、動画・静画・立体をキーワード検索やタグ検索する際に表記ゆれを考慮する必要がある場面は多い。一つの表記でしか検索しなかった場合、別の表記で記載されていた大量の動画・静画・立体を見落としてしまう可能性があるため。
これらのサービスについては、「or検索」を利用することで対処が可能である。
ニコニコ生放送
ニコニコ生放送の通常の検索機能ではor検索をサポートしていない(2015年1月18日現在)。
ただし2014年7月からβ版として導入されている「新検索β」機能ではor検索が使用できるため、こちらで対処可能。
ニコニコ大百科
ニコニコ大百科で表記ゆれがある物事を調べたいとき、仮に一つの表記でしか検索しなかった場合は「本来は別の表記で記事が存在しているにもかかわらず、検索にヒットせず見つけられない」という事がありうる。
記事を作ろうとしていた人が既に同じ記事がないか探す時に、別の表記で既に記事が作成されていることに気付かずに異なる表記で作成してしまい、同じ物事に対して複数の記事が作られてしまう場合もある。
これには既に挙げたniconicoの他のサービスのように「or検索」で対処したいところだが、残念ながらニコニコ大百科における記事検索機能ではor検索が使えない(2015年1月18日現在)。
よって記事を見つけやすくするためには、記事を「探す側」ではなく「作成・編集する側」が何らかの工夫をしなくてはならない。例えば、「ある一つの表記をタイトルとしたメイン記事を作成した後、他の表記でもメイン記事へのリダイレクト記事を作成する」、「記事内に表記を複数記載しておき、本文検索でいずれの表記でもヒットするようにしておく」、等の対策が考えられる。
関連項目
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