個人事業主とは、会社組織に属さずかつ法人を持たずに個人で事業を営んでいる人である。
似た用語にフリーランスがあるが、フリーランスは事業の形態を指すのに対し個人事業主は所得税法および消費税法に定められた納税者である。
概要
個人事業主は自らが事業を行い収益を得た上で、その収益に応じた所得税および消費税を国に納付する義務を負う。
一般的には所管の税務署に「個人事業の開業届」と「所得税の青色申告承認申請」を届け出て承認を得た人を指すが、事業規模が小さく複雑な帳簿処理がいらないといった理由があっても開業届の提出が必要無いわけではないが、現実には提出していない者も多い。税務署は開業届にうるさくないので(うるさいのは申告の有無と内容)出していなくても通常は何も言ってこない。開業届を出しているかどうかと申告の青白も連動していない、いずれにせよ事業による所得(場合によっては雑所得)があれば確定申告は必要だということである。
事業
個人事業主が行う事業に特に制約は無く、事業のために従業員を雇用する事も可能である。
そのため様々な業種で個人事業主が活躍している。
俳優、声優、歌手、お笑い芸人といった芸能界に従事する人は、所属事務所から都度仕事を請け負う形で事業をしており、支払われるギャラが事業の収益となる。
* 法人として個人事務所を営んでいる芸能人は除く
マンガ家やアニメーターは、所属の出版社やスタジオから仕事を請け負う形で事業をしており、支払われる印税や報酬が事業の収益となる。
キャバ嬢のような風俗業界に従事する人も個人事業主として扱われるケースが多い。
風俗業界では短期で店を渡り歩く人も多くその度に雇用手続をするのが面倒であり、加えて雇用の場合は就業履歴も残るため個人情報の面からも都合が悪く、個人事業主として仕事を請け負う形で従事させている。
メリット・デメリット
メリットとしては市町村に開業届を出せばすぐに開業できるし、自宅を仕事場とすれば通勤の手間もない。また自分1人しか居なければ遅刻欠席でとやかく言われる心配もないし、日程に余裕があれば午後や夕方から仕事を始めても良い。そういう意味では気楽である。
逆を言えば、1人/少人数で業務・取引連絡・事務・配送まで問題なく黒字になるよう全部をこなす必要がある。資金も必要だし、知名度がなければ広告CMや募集・売り込みも必要となる。
個人事業主は事業と生活が一体であるとみなされ、資本が分離されている法人と比べて社会的信用度が低い。また個人事業主の所得税は累進課税であるため一定の事業規模になると法人に比べて税制優遇の面でも不利となる。
また個人事業主は自らが事業を行っており労働者にはならないため、労働基準法および労働安全衛生法、最低賃金法は適用されず、厚生年金にも加入は出来ない。ただし個人事業主が雇用する従業員には労働基準法等が適用され一定の要件を満たせば厚生年金の加入も可能である。
切り捨てられるリスク
いわゆる「代わりはいくらでもいる」という状態である。
他社では真似できない唯一無二な技術・センスがない限り、発注元が不要と判断すればあっさり同業他社に乗り換えてしまったり、それを示唆することで値下げなどの譲歩を迫られる場合もある[1]。
開業は容易でも仕事がなければ意味がないため、むしろその辺のアルバイトのほうが儲かるという悲しいジョークのような話もあるなど、甘い見通しで開業すると痛い目を見る可能性が高い。
一定の知識も必要
その他、需要、価格相場や流通手段など知識も必要となるし、時には話術や将来を見越した選択など取引のセンスも必要となる。仮に売れても引き際を誤って調子に乗ったら在庫の山といった事例もありうるなど油断は禁物である。
知識経験がないと分かれば足元を見てくる悪質な相手もいるため、いくら高品質な商品を作ったところで相場よりも安価で買い取られる/値下げ要求される、相場より高い価格で機材や原材料などを購入する羽目になったり、理不尽なクレームで同意させようとするなどトラブルを挙げればキリがないなど、トラブルに対する自衛手段・失敗例を調べるなど検索・情報収集も非常に有効である。
※経営・ビジネス・事務関係に詳しい人を雇う手もないわけではない。
せっかくのお客様/注文だからと有耶無耶にせず、契約書や録音(記録)といった証拠を残す必要もある。
関連項目
脚注
- *その値下げを断ったところで相手は取引先を変えるだけなので、痛くもかゆくもない。
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