概要
合同という概念は、幾何学や整数論に登場する。幾何学と整数論では合同の定義はちがうが、どちらもこの記号を使う。一般にAとBが合同であるとき、A≡Bと書き表す。
幾何学における合同
2つの図形が全く同じ形であることを意味する。日本の教育では小学校の算数で初出。但し、≡という記号を使うのは中学からである。片方の図形をスライド、回転、鏡に映す、この操作を有限回行ってもう片方の図形にぴったり重ねることができるとき、2つの図形は合同であるという。「鏡に映す」を「裏返す」と習った人もいるかもしれないが、その言葉が通用するのは図形が平面上にある場合のみである。3次元の図形は、裏返しても回転するだけで、鏡像にはならない。
三角形の合同条件
合同というとこれを連想する方も多いだろう。2つの三角形に対し、次のいずれかが成り立てば合同である。
小学校時代に覚えさせられ、中学校時代に証明問題で書かされた合同条件、思い出せたかな?
整数論における合同
2つの整数をそれぞれ同じ数で割ったとき、余りが同じであることを意味する。日本では大学でやっと初出。2つの整数a,bと自然数nに対し、a-bがnの倍数であるとき、a≡b (mod n)と書き表す。これはaとbをそれぞれnで割ったとき、余りが等しいことと同値である。≡は整数の余りに関する問題を簡潔に書き表すことができるため、優れた記号と言われている。優れた記号は問題を一気に解決するとまで言われており、≡はその主たる例として挙げられる。
性質
a≡b (mod n)が成り立つとき、任意の整数c、任意の自然数mについて次が成り立つ。
第1式と第2式は定義からすぐにわかり、第3式は第2式に数学的帰納法を用いることで示すことができる。さらに、ここから次のことが導ける。
a≡b (mod n)かつc≡d (mod n)ならば、次が成り立つ。
このように、≡は和と積に対して=のような振舞い方をするのである。
また自然数kとnが互いに素である場合、
が成り立つ。
同値関係
合同という概念は同値関係の具体的な例として見ることができる。同値関係とは、集合に対し、二項関係~が定義されており、以下の条件を満たすものである。
合同は~を≡に置き換えたものである。同値なもので類別したものを同値類という。
このままでは抽象的過ぎてありがたみがわからないが、大雑把に言えば、適切な同値関係を導入することで複雑なパターンを持つ集合を、特定の代表的な要素と全く同じ物して扱うことができるという事である。合同は三角形を辺と角が同じもので類別したもの、あるいは、整数を特定の数で割ったあまりが同じもので類別したもの、ということになる。
合同以外の例として有理数がある。有理数は(整数)/(整数)の形で表されるものに、「p,q,r,s,nを整数とし、p=nrかつq=ns、または、np=rかつnq=s ならば p/q~r/s」の同値関係を導入して同値類により分類したものである。0.5を表す分数は1/2、2/4、-3/-6のようにパターンが無限に存在するが、それらをすべて同じ1/2としてまとめて扱ってしまえるという事である。
関連項目
- 5
- 0pt