「ゲームは悪」は、今や昔の話。全国の小中学校を、カプコンやセガなどゲーム会社の社員が訪問する機会が増えているという。ゲームを題材にしたリテラシー教育から、実際のコードを利用したプログラミングの授業まで……楽しい授業は全国の学校で引っ張りだことなっているようだ。なぜゲーム会社の社員が学校に行くのか?特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#7では、ゲーム会社が行う「授業」の中身をのぞいてみた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
謎の大センパイからのミッションに答えよ!
20年以上も続くカプコンの出前授業
カプコンに入社した新入社員のリュウとサクラは、突然現れた「大センパイ」と名乗る怪しいシルエットの人物にミッションを与えられる。
それは、プランナー、デザイナー、サウンドクリエイター、プログラマー、プロモーションの各部署の先輩の仕事を手伝うこと。それぞれの仕事の内容の紹介が終わると、リュウとサクラは「仕事の手伝い」としてさまざまな問題を解かなければならない。
「今制作しているゲ-ムで主人公用に三つの武器を用意しています。その武器に『強い』『普通』『弱い』とレベルを付けたいのですが、次のうちどれが一番『強い』武器でしょうか?(1)5回中2回モンスターにヒットするファイヤーカッター、(2)8回中4回モンスターにヒットするフリーズソード、(3)10回中3回モンスターにヒットするサンダーハンマー」――。
5人の先輩の元を巡り問題を解いていくと、最後に謎の「大センパイ」の意外な正体も明らかになり……?(下写真参照)
写真提供:カプコン 拡大画像表示
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これは、カプコンが全国の小学校と中学校に出向いて行っている「出前授業」で使われるオリジナルの「お仕事 算数・数学図鑑」という教材だ。ゲーム会社の仕事について学びつつ、算数の勉強ができるのだ。
それだけではない。
「ゲームを何時間やったらやり過ぎだと思う?」「ゲームはなぜ楽しいのかな、その楽しさを、もっと他のことにも使えないかな?」「ゲーム会社が考えた『楽しさ』をゲームをやめるときに使えないかな?」などと、ゲームのやり過ぎを防ぎ、自律的に「ゲームを楽しくやめる」ための授業まで実施しているのだ(ページ最上部写真参照)。
「ゲームは悪」とされ、学校に持ち込むなど問題外、とされた昭和の時代は過去のもの。今、ゲーム会社社員が頻繁に学校に出かけている。カプコンのユニークな「授業」にはいったいどんな理由があるのか?一方セガでは、現役のエンジニアが作成した教材を使い、実際にゲームで使われているコードまで活用した本格的なプログラミング教育を行っており、自治体と提携して事業として運営している。次ページから詳しく見てみよう。