はじめに
私は現在、株式会社ウィルゲートにてVPoEとして約20名弱のエンジニア組織のマネジメントをメインでしています。各メンバーと1on1を毎週実施しており、1on1を通してメンバーの成長を支援しています。
今回、この記事では私が今までの約6年間の1on1実施経験、のべ約30人1000時間以上の中で習得してきたナレッジやパターン、陥りがちな罠について紹介しつつ、受け手自身の成長を軸に「1on1の受け方」を伝えていければと思います。
1on1をする側がするときに気をつける点について紹介されているものは多いのですが、受け手側に沿った記事などは少ないです。この記事ではより受け手目線に沿った、より自身から行動を起こしやすい目線で、少しでも参考になるような学びを残せたらと思います。
本連載記事の流れとして、1on1における目的や効果から入り、1on1を受ける際に意識するとより1on1の効果が上がるための方法、逆にいうとせっかくの1on1を無駄に過ごさないためのテクニックについて紹介していきます。また、日々業務で忙しい中で1on1でフィードバックやアドバイスを受けたときになかなか実践できないという方も多いと思います。そんな方にフィードバックやアドバイスを実践しやすくし、より1on1の効果を引き出すための方法などを紹介していきます。
筆者の思い
1on1という手法が日本でも取り入れられるようになって約10年ちょっとになり、多くの企業で1on1が実施されていることと思います。1on1をうまく使いこなすことで、さまざまな良い影響があり、自身の成長につながるなど、スムーズな業務遂行に役立てる事ができます。
この1on1には書籍や記事で取り上げられることも増えて来てどんな風にやるのが良いかなど、ある程度知見が溜まってきてはいますが、まだまだベストプラクティスと言えるほど体系的にまとまったものはありません。
また、1on1をする側も体系的に1on1についてちゃんと学んだり、訓練をしていた1on1のプロというわけではなく、必ずしも良い1on1ができているとは限りません。1on1を学ぶための良い書籍や記事などは増えてきていますが、1on1自体が難しいところもありなかなか実践が難しいと悩む人も多いのが現状です。
もちろん、1on1をする側のスキルが向上することでより効果の高い1on1にしていくことは可能ですが、1on1とはその名前の通り双方向からの協力により良くしていくことが可能なものです。ぜひ、この記事で1on1の目的や、良い1on1のためにできることを学び、自身が受けている1on1に取り入れることで、1on1をよりよい場にしていってもらえたらと思います。
対象読者
上長に言われて、なんとなく1on1を受けている人や、1on1でどんなことを話せばいいかわからない人に読んでいただきたい内容となっています。
1on1の効果とは?どんな場所なの?
1on1とは、一般的に上司と部下が定期的に行う対話の場のことです。
基本的に部下のための時間であり、仕事をする中でうまく行かないことの相談や、成長のためのフィードバック、将来的なキャリアの相談のための時間として使われることが多いです。これにより、部下は自身のキャリアビジョンや課題を明確にし、成長の機会を得ることができます。それ以外にも相互の関係構築や、全体会議の補完として利用することもあります。
また、1on1の相手として上司以外の人と1on1を実施することもあります。この場合は、他のチームのリーダーや、チームをまたいだ他のメンバー、あるいは同じチームのメンバー同士で1on1をすることなどがあります。それぞれ立場の違う人と1on1をすることで、多様な価値観や考え方、スキルやキャリアに触れることができます。
定期的なコミュニケーションを通じて、自身の悩みや不安を早期に把握し、上司が適切なサポートを提供することで、働きやすい環境や社員の満足度、エンゲージメントが高まり、結果として離職率の低下にもつながっています。
普段、業務の中では上司と自由に話せる時間は、限られていることが多いと思います。1on1は、そんな中で部下から自らの考えや悩みなどを率直に上司に共有できる場となります。
1on1と他の面談や会議の違いを理解しよう
1on1は、評価面談や業務報告とは異なる役割を持っています。評価面談では、あらかじめ設定していた目標や評価基準に則り、自身の過去の成果を振り返り次に繋げることが主な目的です。業務報告では、担当している業務に関しての状況や進捗・課題などを伝えることが主な目的です。
一方、1on1は自身の状況について現在から未来に向けて、上司とフラットに話し合い、よりよい業務環境を創り出すことが目的です。目の前の業務のことや、課題について話すことももちろんありますが、そこから一度離れ中長期的な観点で先輩や上司とフラットに話せる場が1on1なのです。
例えば、評価面談では「過去の成果」に対する評価が中心となりますが、1on1では「これからどんなスキルを伸ばしていきたいか」や「現在抱えている悩み」について自由に話すことができます。いわば、自身より経験が豊富な上司や先輩の知見を自身のために有効活用することができるのです。このように、1on1は個人の成長やキャリア形成に焦点を当てた対話の場となります。
また、他の面談では主に上司側が主体となりますが、1on1では部下側が主体となり話したいことを上司に話せるということも大きなポイントとなります。そのため、1on1の前にはどんなことを話したいかを考えておくのはとても重要なことです。
しかし急に1on1で何を話せばいいかなかなか考えられないと思います。この1on1で話すとよいことや情報の伝え方や考え方についてもこの連載でお伝えしていこうと思います。