本日(4月24日)、避難者の皆さんとともに国会及び国土交通省を訪れ、民主党では池口修次民主党企業団体対策委員長にご対応いただき、民主党幹事長あてに、国土交通省では津島恭一国土交通大臣政務官にご対応いただき、国土交通大臣あてに、それぞれ標記要望書を提出いたしました。あわせて国土交通大臣あて、署名5832筆、「国土交通大臣にいいたいこと、お願いしたいこと」70通を提出いたしました。
東北地方の高速道路の無料開放に関する要望書(その2)
とすねっと要望書第30号
平成24年4月24日
国土交通大臣 前田武志 殿
民主党幹事長 輿石東 殿
東京災害支援ネット(とすねっと)
代表 弁護士 森 川 清
(事務局) 〒170-0003東京都豊島区駒込1-43-14
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要 望 の 趣 旨
1 東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故により避難している方々の支援として行っている東北地方の高速道路の無料措置について、警戒区域等の内からの避難者に限定しない期間の延長及び走行範囲の拡大を要望します。
2 特に福島第一原子力発電所事故により二重生活等を余儀なくされている家族の絆を守るために警戒区域等の外からの避難している世帯及び子どもの健康不安から週末・長期休暇等に一時的に避難する福島県内に滞在している世帯に対して、東北地方の高速道路の無料措置を再開することを強く要望します。
要 望 の 理 由
1 当団体について
わたしどもは、主に都内において東日本大震災の被災者を支援する活動に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループです。インターネット(ブログ)やニュースレター「とすねっと通信」を通じて被災者に必要な情報を提供するとともに、中央共同募金会その他の民間諸団体の協力を得て、無料の電話相談や、避難所や被災者に提供された公営住宅や旅館・ホテルでの訪問相談、避難者等に対する物資支援・子育て支援等の活動を行っております。
2 今回の要望の経緯
国土交通省が、平成24年3月22日、同年4月以降の東北地方の高速道路の無料措置について被災当時警戒区域等(警戒区域及び計画的避難区域に指定されている地域並びに緊急時避難準備区域に指定されていた地域)で生活をしていた方に限定して、しかも対象走行の範囲も狭めたものとすることを発表しました。
警戒区域等の外から避難している方々(いわゆる自主避難者であるが、以下「区域外避難者」という。)から高速道路の無料延長を希望する声が多かったことから、当団体は、同年3月27日、区域外避難者とともに国土交通省を訪れ、国土交通大臣あて「東北地方の高速道路の無料開放に関する要望書」(とすねっと要望書第28号)を提出しました。
残念ながら区域外避難者の望みは届かず、国土交通省において再考されず、同年3月31日で区域外避難者への無料措置は打ち切られてしまいました。
しかし、区域外避難者、そして子どもの健康不安から週末・長期休暇等に一時的に避難する福島県内に滞在している方々(以下「一時的避難者」という。)の高速道路無料措置のニーズがきわめて大きいことから、当団体は、区域外避難者および一時的避難者のために実現に向けて、再度の要望を行うこととしました。
3 高速道路無料措置のニーズ
原発事故により広域避難する家族の多くが、放射線感受性が高い子どもが母親とともに県外にやむを得ず避難し、父親が被災地・被害地にとどまり就労するという避難形態、いわゆる「二重生活」を送っています。離れ離れになった父親と子、夫と妻は、父親(夫)が週末に高速道路を利用して車で避難地を往復することにより、離ればなれになっている家族が束の間の再会を果たし、ぎりぎりのところで家族の絆を保っています。
そのような区域外避難者世帯は、二重生活により家計の負担が大きくなっており、再会のためのガソリン代は高騰して負担が大きいところに、高速道路の無料措置が打ち切られたのが現状です。無料措置の打切りにより、高額の高速道路料金(たとえば、従前の常磐自動車道・いわき中央IC-三郷IC間の普通車の片道料金は4350円、いわき・東京間を月4回往復すると、3万4800円になる。)が避難世帯の家計を圧迫することは必至です。
高速道路の無料措置によって、区域外避難者を始めとする広域避難者はぎりぎり家族の絆を支えてきました。無料化の打切りは、週末の父子、夫婦の再会を抑制し、再会のための負担を増やし(父親が一般道を利用することにもなります)、家計をさらに圧迫するものです。
また、一時的避難者世帯においては、広域避難までできないが少しでも子どもの被ばくの累積量を減らしたいという思いから週末や長期休暇等に高速道路を利用して一時的な避難をしています。一時的避難者世帯においても、高速道路の無料措置打切りで家計負担が大きくなり、子どもの被ばくに不安を抱えながら一時的避難を諦めてしまわざるをえない状況になってしまいかねません。
4 家族がともにいること(家族の「絆」)
本件では、被災者・避難者保護に関する国際基準が参考になります。
国内強制移動に関する指導原則17において、「すべての人は、自らの家族生活を尊重される権利を有する」とし、「 この権利を国内避難民にとって実効的なものとするため、共にいることを希望する家族の構成員は、これが許可される」として避難者は家族生活を尊重される権利があります。
そして、自然災害による被災者の保護に関するIASC運用ガイドラインD.3.1は、「救済活動は、家族をひとまとまりとして行われなければなりません。離散を望まない国内避難家族は、災害対策の全ての段階においてその希望が許容されるべきであり、またそのための支援を得るべきであり、離散は回避されるべきです。」としており、離散を望まない国内避難家族をひとまとまりとするための支援が得られるべきであると指摘しています。
このように、家族がともにいること(家族の絆を保つこと)は避難者の権利であって、それをできる限り可能とする支援が得られなければならず、まさに高速道路無料措置がその支援に当たります。
5 まとめ
今回の要望にあたって当団体で署名及び当事者の意見を集めましたが、規模が小さく無名の団体の呼びかけにもかかわらず、署名5832筆、意見70通という予想をはるかに上回る数が集まりました。これは、高速道路無料措置再開問題が、家族の絆と子どもの健康不安の問題であり、多くの避難者・市民の共感を呼んだからです。
高速道路の無料措置は、国土交通大臣の告示によって再開できます。国土交通大臣が無料措置を打ち切ることは、かろうじて維持されている家族の絆を断ち切り、子どもの健康不安を増大させるもので、区域外避難者世帯・一時避難者世帯を上記のような苦境に追い込むものです。
よって、できる限り多くの避難者・被災者が高速道路無料措置を受けられるよう要望し、特に区域外避難者および一時的避難者については無料措置の再開を強く要望します。
以上