※本記事は『日本のロック名盤ベスト100』(川崎大助)の抜粋です。 「媚びること」をよしとする このシステムは、日本古来から脈々と受け継がれてきた。それが江戸時代に端を発するものであることを、前述の『歌謡曲から「昭和」を読む』の中で、なかにし礼が指摘している。 明治期に花柳界で流行した「さのさ(節)」および、それに影響を受けた流行歌などを論じ、そこに歌謡曲の原型を見た一文に以下の記述はあった。歌謡曲の中にあった「江戸以来の伝統」と、僕がここで言う「システム」とは、なんと似ていることか。 「その江戸時代の色恋とは、既婚の男と花柳界の女との間のものだった。夫婦とは家同士の結びつきだから、恋愛感情など生まれない。それでいて、妻は子を産み、家を守ることを義務づけられる。そこで夫は外で女と恋をする。 しかも相手の女は、どんなに深い仲になっても、『妻という字にゃ 勝てやせぬ』と、いつかは身を引いてくれ