財政の「正論」に消費税は不要である これまで、財務省は消費税を増税するために、いろいろな理屈を言ってきた。 今から30年くらい前には、(1)直間比率の是正だった。これは理屈というより、単に消費税を導入したいという願望だ。税金を直接税と間接税に分けても、その比率は国によって様々であるので、最適比率を探そうとしても無駄だからだ。 次には(2)財政破綻だ。財務省は、国の借金残高がこれまで急増していることを理由に、表だって「財政破綻する」とまでは断言しないものの、いろいろな局面で「ポチ」を使って、陰に陽に財政破綻論を国民に吹き込んでいる。 しかし、本コラムで再三述べているように、「借金」だけではなく「資産」を考慮しないと、本当の財政状況は理解できない。 そこで、市場で取引されているCDS(クレジットデフォルトスワップ。日本国債の「保険料」みたいなもの)から、現在の日本の財政破綻確率を推計すると、今
家計と財政を比べるそもそもの間違い 「ユーチューバー」がもてはやされる昨今だが、財務省もYouTubeに公式チャンネルを持っていることをご存じだろうか。 多くの動画は再生数3ケタ台と少ないが、このチャンネルに「日本の財政を家計に例えると、借金はいくら?」というタイトルの動画が上がっている。内容を見ると、月収30万円の家計でいえば、日本は毎月17万円の借金をし、5379万円のローンを抱えた状態だと表現されている。 さらに動画は「子供に莫大な借金を残し、いつか国家が破産する」とかなり強めの煽りで締められている。官庁の公式チャンネルとして、このような表現は問題ないのか。 じつは、財政を家計に例えることは正しくない。 経済学では、経済活動の単位を「家計」「企業」「政府」と分けるが、家計は貯蓄主体、企業は借り入れ主体が基本形で、家計の借り入れは企業ほど多くない。そして政府は家計より企業に似ている。も
2018年、財務省はこう動く 2018年は日本にとってかなりの危機が降りかかってくる年になるだろう。なにしろ、北朝鮮の脅威が目前に迫ってきていて、国連の制裁決議も限界を迎えようとしているからだ。 国際政治の常識からいえば、国連軍が出動して直接制裁を加えることも現実的な段階に入ってきた。日本は国連軍に関する対話への参加を拒否しているが、アメリカと中国は北朝鮮への攻撃後をどうするかを話しあっている段階という。 核保有国である中国とロシアが隣国に存在することを加味すれば、北朝鮮による核拡散の「デッドライン」はそう遠いものではなく、この1年中ということになる。ひょっとしたら2月の平昌オリンピックも開催できなくなる可能性すらあるとすればイヤな話だ。 こうした国際情勢を考慮して、安倍首相は'17年10月に解散総選挙を行った。ここで財務省は首尾良く、総選挙の公約に'19年10月の消費増税を滑り込ませるこ
財務省に気を使ったの…? 税制改革が話題になっているが、アメリカでも税制改革が行われており、比較すると、日米での改革が好対照な状況になっている。 アメリカでは、共和党が35%の連邦法人税率を2018年から21%に引き下げる大型減税法案を決定した。個人所得税の最高税率も現在39.6%から37%に下げ、概算控除も2倍に増やすという。その結果、全体の減税規模は10年間で1.5兆ドル、年間円換算で17兆円となる。この減税規模は、過去最大とされた2001年の「ブッシュ減税」を上回るものとなる。 一方、日本では、自民党の税制改正大綱が決定され、法人税では「事業継承税制「賃上げ・設備投資減税」があったが、結果として「増税減税ゼロ」「所得税は900億円増税」、たばこ税は2400億円増税などで、結果的に全体で2800億円の増税である。 アメリカと比べて日本の状況をみると、なんとも寂しい気持ちになってくる。今
やめたい財務省、続けたい総務省 2018年度の予算編成に着手している財務省が、不況対策として設けられている地方交付税の「歳出特別枠」を廃止する方向で調整を始めた。 歳出特別枠とは、リーマン・ショック後停滞した地方経済への緊急経済対策。国が地方に配る地方交付税を特例的に上積みするもので、2016年度は4500億円を計上してきた。 財務省はこれを縮小または廃止する理由として、景気回復で地方自治体の財政が改善され、自治体の「貯蓄」に相当する基金の残高も増加傾向にあることを挙げている。 一方、財務省のこうした動きに神経質になっているのが、地方自治体を統べる総務省。総務省としては地方自治体の基金は守りたいが、財務省は地方交付税交付金を減額することによって少しでも多くのおカネを一般会計予算に回したい。 そのため両省の水面下での攻防が激しくなっているのだが、当の財務省も外国為替資金特別会計など、各種の特
財務省の真の思惑 安倍首相が衆議院を解散し、10月22日に総選挙を行うと表明した。北朝鮮情勢に揺れるなかでの解散となるが、野党では小池百合子氏を中心に大きなうねりが生まれている。民進党が「希望の党」に事実上合流するというから、自民党も油断できないだろう。 選挙で勝つためには、安倍首相は財務省の動きをいっそう気に掛けなければいけない。なにしろ財務大臣は盟友の麻生太郎氏で、総選挙で勝つためには麻生氏の協力も必要だ。また森友学園のときのように、政権に打撃を与えるような妙な動きを財務省にしてもらいたくないという安倍政権の意向もあるだろう。 一方、財務省の思惑といえば、今回の解散総選挙をうまく使い、'19年10月の消費増税を確実に実行することだ。アベノミクス推進のために再増税はできるだけ避けたい安倍政権だが、「妥協策」を財務省とのあいだに見出した。 それは(1)'19年10月の10%への消費増税は予
質問者2 のブログ 「不世出」のセントラルバンカー「白川方明(しらかわまさあき Masaaki Shirakawa)」さんの話題や金融政策、財政政策などマクロ経済政策を主体に書いていこうと思います。 債務超過の日本政府 | COMEMO https://comemo.io/entries/2712 日本政府が債務超過である点に着目され、統合政府で見た際に日本政府債務である国債と日銀保有資産である国債を相殺するのは「乱暴な議論」となさっています。 「乱暴な議論」と認識される論理的な理由が分かりません。 国債の問題を考えるうえで、総額と純額を区別し、統合政府で考えることは学部生レベルの基本的なことです。 企業の連結決算において、例えば親子会社間の債権債務を相殺せずにバランスシートを作成したら「粉飾」になってしまうのではないでしょうか。 ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ氏やシムズ氏は、統合
消えた「消費増税」の文言 6月9日、政府は経済財政運営の基本策となる「骨太方針」を閣議決定した。注目すべきポイントとしては、過去の骨太方針に再三盛り込まれていた「消費増税」への言及が消えていることだ。 これに肝を冷やしているのは、もちろん財務省をはじめとした増税論者たちである。2度延期されている再増税が、政府内で議論すら行われなくなるかもしれないからだ。政府がこのような方針を示したことには、どのような意味があるのか。 '16年の「骨太方針」では、「成長と分配の好循環」の実現に向け、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、消費税率の10%への引上げを'19年10月まで2年半延期するとともに、'20年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の達成を目標とする、と記されていた。 しかし、先頃公表された'17年の「骨太方針」では、「経済再生なくして財政健全化なし」という基本目標から先
「国の借金1000兆円」と言われているが1000兆円と言われている根拠はなにか。財務省によるその数字のトリックを経済学者の高橋洋一が説く。 自民党チームの前で話したこと 2017年5月10日、自民党・教育再生本部の恒久的な教育財源確保に関する特命チーム (馳浩前文部科学相・主査)に呼ばれたので、筆者はここで教育投資の話をした。 5月3日、安倍首相が憲法改正の例として教育無償化を取り上げたことで、特命チームの馳浩主査は「具体的な検討を急ぐ」といっていた。6月に球出しがなされる政府の骨太方針に、この教育無償化を入れ込みたいようだった。 自民党の特命チームには、文科省と財務省の官僚も傍聴にきていて、議論をフォローしていた。 筆者と同じ日に呼ばれたのは、財政学の佐藤主光教授(一橋大)であった。財務省の財政審委員と税調委員を兼務している。両者を兼務している学者やマスコミは多くない。財務省が最も信頼度
大蔵省解体の屈辱 経団連の榊原定征会長が、財務相の諮問機関である財政審(財政制度等審議会)の会長に就任した。経団連の会長が財政審会長に就くのは、2001年1月から2年間務めた今井敬氏以来、実に16年ぶりのことである。 予算編成に大きな影響を与える財政審だが、財務省のこの人事にはどのような思惑があるのか。 まず、今井氏が就任した'01年当時を振り返る。財務省(旧大蔵省)は、'90年代後半に次々と明るみに出た官僚の接待スキャンダルで、世間から猛烈な批判を浴びていた。そのなかで、旧大蔵省は、中央省庁等改革基本法により金融庁と財務省に解体され、'01年1月に「財務省」へ名称が変更になった。 ちなみに、この名称変更は旧大蔵官僚には最大の「屈辱」。省庁の前に掛かる看板は、当時の大臣が揮毫するのが通例だが、大蔵官僚出身で「最後の大蔵大臣」となる宮沢喜一氏はそれを拒み、コンピュータの楷書体になったといわれ
昔は、政治家に説明したりもしたんだけどね。本題より、間違った思い込みを正すのが大変で、そんなことに労力を使うのがアホらしく、すっかり遠慮するようになった。日経の小泉進次郎議員のインタビュー(4/14)を読んで、かつてのことが思い出されたよ。それでも、子供の養育に社会保険が必要という一点は、正鵠を得ている。こんなことから、改めて筆を取る気になった。 ……… 保険はリスクに備えるものだから、「子供を持つことがリスクになるのか」という批判は分からなくもない。しかし、それは、モノの見方次第である。一つの方法は、どんな経済状態の親の元に生まれるか分からないというリスクへの対処と考えることだ。つまり、貧しい親の元でも、給付が受けられることで、最低限の養育が保障されるわけである。この場合、保険の加入者は、子供自身となる。 したがって、保険料も、子供が負うことになる。むろん、払うのは、大人になってからだ。
そもそもの意味が違う 麻生太郎副総理は自民党が幼児教育・保育を無償化する方法として、自民党若手議員らが提案した「こども保険」について「建設的な案だ」と評価した。 一方で、教育無償化を「教育国債」を発行してまかなう案には、「次世代へ先送りになる」として否定的な姿勢を示した。 こども保険は、勤労者と事業者から、いまの社会保険料に上乗せして徴収し、財源を確保するもので、小泉進次郎氏が提唱者の一人である。 では、麻生副総理がこども保険を評価し、教育国債を否定するのはなぜだろうか。 * 麻生副総理は財務相と金融相を兼任しているが、まず金融相の立場として「保険」という用語にはもう少し注意深くなるべきだ。 というのも、金融相は、保険業を営む保険会社に免許を与えており、その保険会社は「保険」を正しく行うことを前提としているからだ。だから免許権者である金融相が、その言葉の意味を拡げることになれば問題だ。 そ
総選挙を見越した調整 トランプ政権の誕生、欧州での保守政権台頭の予兆、中国経済の低迷など、いつ世界が「激動」してもおかしくない2017年。日本では解散総選挙の実施が囁かれるが、昨年はおとなしかった財務省はどのような動きを見せるのだろうか。 今年の財務省の動向を読み解くカギは、ズバリ閣議決定された'17年度予算案にある。 「目玉」となるような予算はないものの、社会保障費の増額などが影響し、最大規模の歳出が盛り込まれている一方で、国債発行は久しぶりの減額を達成した。 この予算で注目すべき点は、公債や借入金の償還、利子の支払いに必要な国債費が、目下のマイナス金利にもかかわらず前年度と「同額」。さらに歳入も2.5%と高い経済成長率を見込んでおきながら前年と同じになっていることだ。この予算では国債費は「過剰歳出」、税収は「過少歳入」となっており、最終的には予算が余る。 財務官僚がこのような予算案を作
日本の経済と財政を良くするためには財務省の嘘に騙されてはいけません。 ※ 『データが示す、「消費増税は家計の消費を減らす」という事実』を追記しました。
最初は勉強会だったのに大川隆法氏は1991年に突然に自分は地球神・エルカンターレだと宣言し、宗教法人となった。 夕刊フジ 【お金は知っている】日銀による異次元緩和政策は、まる3年経ったが、無力だという批判が多い。筆者はこれに対して、効力をつぶしているのは消費税増税・財政支出削減であり、政府が緊縮財政政策を止めると金融緩和の威力がよみがえると主張している。 安倍晋三首相周辺は来年4月に予定されている消費税率の10%の引き上げ凍結と大型補正予算編成の検討を急いでいる。 増税と緊縮財政路線にしがみつく財務省、同省ご用達の学者と日経新聞、朝日新聞などのメディアはこれに対して、今回ばかりはなぜか声が小さい。 日経に至っては、社説で「増税延期の是非慎重に判断を」(3月19日付朝刊)と弱々しい。 代わりに、日経の子会社となった英フィナンシャル・タイムズ紙が31日付の社説で「安倍首相は消費増税を見送るべき
先日、ラジオ日本の番組に出演し、財務省出身の国会議員と議論した。そこで、相手は財務省が作成した筆者への反論資料を持っていたのだが、その多くがかつて筆者が大蔵省の官僚時代に書いたものと同じだったことには、少し驚いた。 本コラムの読者であれば、筆者が20年以上前の官僚時代に政府の連結の貸借対照表(バランスシート)を作成したことをご存じだろう。それらを踏まえ、今の政府は財政危機ではないことを主張している。 実は、この主張は増税の必要性を訴える財務省にとっては目障りだ。しかし、連結バランスシートで財政状況を見るというのは、ファイナンス理論の基本中の基本なので、反論しても無駄なのだ。 そもそも、財務省が依拠する考え方が間違っていると言わざるをえない。筆者からみると、財務省は「財政再建至上主義」だ。まず財政再建ありきで、それをやらなければ経済はダメになるという「財政再建ファースト」である。 財務省に言
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