2024年10月、東京、三田。東京タワーにほど近い聖坂の一角にて、蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)がついにその全貌を現した。蟻鱒鳶ルとは、建築家の岡啓輔によって、20年間にわたりセルフビルド(設計から施工まで自分自身で行なうこと)でつくられた、異形の建築物だ。 「東京のサグラダ・ファミリア」と呼ばれ、永遠に完成しないかと思われたこの建築も、竣工まであと一歩となった。これから約1年は、都市再開発との兼ね合いで10メートルほど曳屋(建物を解体せずに移動する工法)を実施。そののち、さらに手を加えてから完成する見通しだという。 きわめて装飾的で、人間の根源的なエネルギーに溢れた建造物が、東京のど真ん中に屹立しているさまに、ただただ圧倒されてしまう。では、そんな唯一無二の建築は、一体どんな目的で、どんな手法で、そしてどんな想いでつくられてきたのだろうか? いまだ普請の音が響く蟻鱒鳶ルのなか、「三田のガウ