元は刊行前の最終原稿PDFを1本ずつ紹介したツイートをまとめていましたが,本誌が刊行されましたので削除しました.各論文の情報はオープンアクセスサイトをご覧下さい.目についた関連・反響ツイートを適宜後ろに付け足しています.心理学の明日はどっちだ.
私は主に研究職として仕事をしている若手の臨床心理士である。アメリカ心理学会が提唱した科学者―実践家モデルで言えば,前者の方に比重を置いている。より具体的には,研究職として仕事をしている時間が約80%,非常勤の心理職として仕事をしている時間が約20%の割合となる。学位をとるまでは,現在よりも実践をしている時間が長かったが,いずれにせよ研究に軸足を置いていた。 今回,若手の臨床心理士として働き始めた途端,「公認心理師ができてこれからどうすんの!?」というテーマをいただいた。いただいたテーマとは違うのだが,せっかくご依頼をいただいたので,今まで漠然と考えていた,公認心理師への懸念について述べたいと思う。 私が現在,公認心理師に対して抱いている懸念は,その職務内容に「研究」が含まれていないことである。公認心理師推進ネットワークのホームページには,公認心理師法案が掲載されているので,まずこの法案を引
信頼性検証論文への疑義? 心理学の再現性、再現可能性についての議論が再燃しています。 以前、サイナビ!では再現可能性についての連載「心理学研究は信頼できるか?――再現可能性をめぐって」(池田功毅,樋口匡貴,平石界,藤島喜嗣,三浦麻子)を掲載し、ブックレットにもまとめました。 その中でも2015年8月にScience誌に掲載された信頼性検証論文では、100論文について追試した結果、「追試では36%、追試の効果量の95%信頼区間に元論文の効果量が含まれていた(つまり「ほぼ」も含めて再現されたと考えてもよさそうな)研究は47%」(上記記事より)だったということです。 ●原論文:Open Science Collaboration (2015). Estimating the reproducibility of psychological science. Science, 349(6251).
● はじめに みなさんこんにちは。 先の分散分析は長々とした説明になってしまいましたが、理解度の方はいかがだったでしょうか? 統計は如何に目に見えないものを目に見えるようにするかの手法を追及してきた歴史があります。 今回はまた歴史が少し進んだお話。 多重比較検定というものを扱います。歴史とともに分散分析から少し進んだ、先の統計の手法をお感じあれ。 ● 多重比較検定とは 分散分析は、帰無仮説を棄却することにより、要因中に影響を与えているものがある、という結論を導き出すことができました。しかし、観測値に影響を与えている要因の度の水準間に差があるのかは分かりません。 例えば、分散分析で出した、趣味と睡眠時間の例を取って見てみましょう。 このとき分散分析では「趣味は睡眠時間に影響している」ことがわかりましたよね。 しかし、どの趣味の間で差が生じているのだろうというところは分からなか
オンライン調査協力者は質問を読まない? 三浦麻子・小林哲郎 (2015). オンライン調査モニタのSatisficeに関する実験的研究 社会心理学研究 第31巻第1号 オンライン調査会社のモニタの過半数は、教示を読まずに回答している ・・・なんと衝撃的な報告であろうか! インターネット上で調査に回答している様子を思い浮かべてほしい。 回答を進めていくと、ある1ページがあらわれる。 「以下の質問には回答せずに(つまり、どの選択肢もクリックせずに)、次のページに進んでください。」という教示が表示され、その下には選択形式の質問が3つ並んでいる。 調査協力者がもし教示をきちんと読んでいれば、これらの質問に対して回答を選択せずに、次のページへ進むはずだ。 しかし、もし教示文を読んでいなかったら? ページ後半の質問から読み始めて、そこで何らかの回答を選択することだろう。 つまりこの設問は、「教示を読ん
東京大学医学部卒(生物統計学専攻)。東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、現在はデータを活用する様々なプロジェクトにおいて調査、分析、システム開発および人材育成に従事する。著書に『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)、『1億人のための統計解析』(日経BP社)などがある。 『統計学が最強の学問である[実践編]』発刊記念対談 35万部を突破したベストセラー『統計学が最強の学問である』の続編、『統計学が最強の学問である[実践編]』の出版を記念し、著者・西内啓氏をホストに統計学をめぐるシリーズ対談の連載がスタートします。 ゲストは前統計学会会長、気鋭の経済学者、統計学者など。普段は知ることのできない統計学者の斬新な視点と意見をお楽しみください。 バックナン
あ〜る菊池誠(反緊縮)公式 @kikumaco 「ご清聴ありがとうございました」スライド撲滅キャンペーンの時期だな。発表の最後は「全体のまとめ」を出して終わること。「ご清聴ありがとうございました」スライドは決して決して決して用意しないこと 2015-02-12 13:18:06
マンガを使った認知行動療法eラーニングのうつ病予防効果を調査した結果を示す図。eラーニングの受講者(介入群:381人)とeラーニングを調査期間後に遅れて受講する受講者(対照群:381人)のうつ病発症を12か月間追跡した。図は、両群でうつ病を発症しなかった人の割合を表している。対照群と比較して、介入群ではうつ病発症が約1/5 に減ったことを示している(東京大学の発表資料より)[写真拡大] 東京大学の川上憲人教授・今村幸太郎特任研究員は、マンガを使ったeラーニングによってうつ病の発症率が1/5に減少することを明らかにした。 働く人のうつ病が増加しているが、これまでのストレスマネジメントは、抑うつや不安を減らす効果があることは分かっていたものの、うつ病を予防できるかどうかについては不明であった。 今回の研究では、「過去1ヶ月以内の大うつ病性障害に該当しない」などの基準を満たすIT系企業の社員76
2017年1月20日追記:『ダメな統計学――悲惨なほど完全なる手引書』という本が出版されることになった。この本は、ここに掲載されているウェブ版の『ダメな統計学』に大幅に加筆したものだ。ウェブ版の『ダメな統計学』を読んで興味を持った方は、書籍となった『ダメな統計学』をぜひ読んでいただければと思う。書籍版の詳細については「『ダメな統計学――悲惨なほど完全なる手引書』の翻訳出版」という記事をご参照願いたい。 ここに公開する『ダメな統計学』は、アレックス・ラインハート (Alex Reinhart) 氏が書いたStatistics Done Wrongの全訳である。この文章は全部で13章から構成されている。詳しくは以下の目次を参照されたい。 はじめに データ分析入門 検定力と検定力の足りない統計 擬似反復:データを賢く選べ p値と基準率の誤り 有意であるかないかの違いが有意差でない場合 停止規則と
重力がなく上下がない宇宙空間では、人間関係の「上下」もなくなるかもしれない。宇宙飛行士の野口聡一さん(49)が、国際宇宙ステーション(ISS)滞在時の体験などをもとに、飛行士のふるまいを分析した論文をまとめ、8月発行の日本社会心理学会の学会誌で発表した。 野口さんは、2009年12月から10年6月まで滞在した間に飛行士を撮影した約2600枚の写真について、共同研究者の木下冨雄・京都大名誉教授(社会心理学)と議論。大きく四つのタイプに分けて、乗組員たちの位置取りと階級の関係を分析した。 最も多いタイプは、カメラをさほど意識しない日常風景。船長(司令官)が位置取りの上で尊重されていると思われるシーンは見つからなかった。例えば、テーブルを囲んでの食事では、船長の頭の上に他の飛行士が浮かんでいた。 上下を意識しないもう一つのタ… こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけま
2016.2.22 田口たつみさんとのコラボによる解説記事のリンクです。 「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター解説(1)扇情的な見出し・結果の曲解 「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター解説(2)「利益相反」 「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター解説(3)「相関関係と因果関係の混同」 「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター解説(4)推測表現 (おまけ:「科学的風だけど実は科学的証拠ではないもの」の例) 「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター解説(5)小さすぎるサンプルサイズ/代表的でないサンプル 「ダメな科学」を見分けるための大まかな指針」のポスター解説(6)対照群がない/盲検試験が行われていない 2014.6.26改定 ファイル名が「.JAPなのはヤバイ」というご指摘を受け、「.JP」に直しました。 元サ
3月28日 農業は地球の環境悪化の緩和に重要な役割を果たす フランス農学・獣医学・林学研究院 アグリニウム会長 マリオン・ギュー 氏 3月8日 近未来SF漫画で描かれるテクノロジーの未来 漫画家 山田胡瓜さん 12月28日 「世界中の望遠鏡が協力して中性子星合体を観測 ―重力波と光の同時観測『マルチメッセンジャー天文学』の幕開けは、何を意味するのか?」 理化学研究所仁科加速器研究センター 玉川 徹 氏 4月2日 《JST主催》「トップサイエンスによる社会変革への挑戦」―JSTの第2回ACCELシンポジウム開催 サイエンスポータル編集部 3月22日 第84回「日本発のデザインバイオロジー確立に向けて」 科学技術振興機構 研究開発戦略センター ライフサイエンス・臨床医学ユニット 山本秀明 氏 3月9日 市民の感情に「科学的知見」を持つ科学者はどう向かい合うか―AAAS年次総会2018レポート
Youtubeで公開されていた「日本社会心理学会 春の方法論セミナー」を観ました(発表資料がダウンロードできる学会のHPはこちら)。 「再現できない実験」という、時機にかなったテーマについて、3人の研究者が、主に統計的な手法の問題点と改善策について、わかりやすく解説してくれています。 これは心理学を学んでいる大学院生には必見のコンテンツです。十年以上前に講演やシンポジウムのネット配信をずいぶんとやった経験から、ネット講義には懐疑的なのですが(しっかり最後までみる人は本当に少ないから)、全部で3時間以上ある動画をほぼ“ながら”せず、最後まで見終えました。 社会心理学ではそもそも追試研究が軽んじられる(投稿してもリジェクトされる)ことや、統計的有意差だけを追い求める傾向(p-hacking)やその背景と、なるほどやっぱりという話もあれば、主要な研究を国際的、大規模に追試しようとするプロジェクト
マイクロブログから特定の話題に対するユーザの反応を取得する技術が研究されている.マイクロブログをソーシャルセンサとして有効活用するには,ユーザごとの特性を知る必要がある.しかし,マイクロブログでは,ユーザが属性を公開していない場合が多々あるため,ユーザごとの特性を把握できない.このことから,マイクロブログのユーザ属性を推定する研究が注目されている.しかし,既存手法では,主にマイクロブログの投稿内容にのみ着目しており,リアルタイムに発信されるマイクロブログの特性を属性推定に活かせていない.そこで,本研究では,各単位時間の投稿数に基づきユーザをクラスタリングし,投稿内容,生活習慣と投稿時間帯から職業属性を推定する手法を提案する.実証実験では,投稿内容のみを使用して推定する既存手法と,時間的特徴をも考慮する本手法について比較実験を行い,本提案手法の有用性を確認した. Research is be
アルツハイマー病の早期発見と根本的な治療法の開発を目指し、東京大学など全国38の医療機関が参加して進めている国内最大規模の臨床研究で、条件に合わない患者の登録が多数行われ、5年間にわたる研究の成果が出せない状態になっていることが、参加する筑波大学などの研究者の調査で分かりました。 研究は国などから20億円以上の資金を受け行われていて厚生労働省も調査を始めました。 「J-ADNI」と呼ばれるこの臨床研究は、平成20年から全国38の医療機関が参加して行われている国内最大規模のもので、認知症の前段階とされる軽度認知障害や、初期のアルツハイマー病の患者など500人以上を3年間追跡し、脳の中の変化を調べることで病気の早期発見と根本的な治療法の開発につなげることが目的でした。 ところが、筑波大学の朝田隆教授をはじめとするデータ分析のグループが調べたところ、アルツハイマー病以外が原因の認知症の患者や、病
夜回り2.0 本日、12月18日(水)、WHO世界自殺レポート会議及び関連行事の公開イベントであるメディア・カンファレンスで喋ってきました。個人的には、論文で名前を見たことがある有名どころの研究者を生で見れて、大興奮でした。レストランで隣に森本稀哲が座ったときより興奮したわー。 さて、どんな話をするかは以前からスライドを公開していたのですが(私も協力しているOVAの夜回り2.0の話ですね)、せっかくなので、講演内容に関する動画を作ってみました。来れなかったけど、「ネットと自殺」的なテーマに興味ありますという方には是非とも見ていただきたいです。(OVAについては、代表ブログ参照:http://ova-ceo.lolipop.jp/) 録音時に微妙にかんでるところありますけど、そこはスル―して下さい。 アブストラクト: インターネットやメディアは使い方一つで、自殺を誘発する凶器になることもあ
文科省が国立大学の改革プランを発表したが、その中で、教員の給与システムに「年俸制」を導入することが謳われて話題になっている。下村博文文科相が目指すのは国際競争力のある大学像であり、そのために教員たちのぬるま湯体質を是正したいのだろう。 これまで国立大の偉い先生方は、民間企業に対して「国際競争力をつけるには、従来の年功序列賃金ではなく実力主義の年俸制を導入すべき」と言ってきた。そして、そのためには業績評価が重要だ、と。多くの企業は、やむを得ずその流れに従ってきた。ところが、それがブーメランとなって、国立大の教員にまではね返ってきたのだ。 大学は、官僚にとっての「最後のパラダイス」と言われている。かつては国家公務員になると天下りが保証され、優雅な老後が待っていたが、最近では徐々に厳しくなってきた。それでも、いまだに大学に天下りをするのは楽勝といわれる。というのは、大学の教員は狭い世界にいて世間
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