学研と言えば「科学」と「学習」。もちろん真っ先に連想するのは、あの付録の数々だ。 「学習」は2009年冬号、「科学」は2010年3月号で休刊となったが、その編集スタッフがそのまま作っているのが「学研 大人の科学マガジン」である。実験キットや摩訶不思議なオモチャを、本の付録という体裁で書店を中心に展開。中には10万、20万という部数が出る人気の号もある。 大人の科学マガジンには「別冊」もあり、アナログシンセサイザーSX-150が付録の「シンセサイザークロニクル」などがある。大人の科学には「製品版」もあり「スターリングエンジン」や「メカモシリーズ」など、こちらは大型量販店や玩具店中心の展開だ。 その大人の科学のラインナップに「サウンドガジェットシリーズ」が新たに加わった。大人の科学としては初めて楽器店中心に展開するシリーズで、その第一号がアナログシンセサイザーの「SX-150 markII」。
だれもがあの番組を見たという。だが、いったいだれがあの番組を本当に見たというのか。 長嶋有のエッセイ&エセー集『安全な妄想』に収められた「愛しのジャパネット」および「続・ジャパネット考」というふたつの文章は、ジャパネットたかたから何の利益も得ていない人間の記したものとして唯一、ジャパネットの社史に刻まれてしかるべきテクストであると思われる。 だれの人生にとっても素敵な何かではない、《むしろノイズに近い存在》であるあのテレビショッピングを、2008年には《ほぼ毎晩みていた》という長嶋有が描き出すのは、見ているつもりでまるで見ていなかった、あの番組の姿である。 《彼らはいつも「ぽん」と押す。デジカメのボタンも、ハードディスク内蔵テレビの録画ボタンも。「ご覧のように、ぽんと押しますと」という。怖い機器ではないことを擬音で示している。女性陣は色のことを「お色」という。》「愛しのジャパネット」p65
毎日少しずつ溜まっていく売れない本を紹介していきます。先日、家庭でもめごとがあり、トサカにきたので2,3日家出しました。家出をしたところで捜索願が出されることもなく、ましてや数少ない友人に連絡を取ってみても『あー、今家出中なの?地に足が着いていない感じがしてとても似合っているよ、このまま下関までヒッチハイクしてフグでも食べてきなさいよ』などと言われました。ふてくされて近所の公園でブランコの立ち漕ぎをしていると、丁度マンションと民家の間からなにやら光る物体がにょっきりと姿を現したのです。 『おい、あれは何だ?』私は隣の砂場で大量の泥人形を作っている子供に向かって呼びかけました。すると子供は『あっ!UFOだ!ママ!ママー!』と言って家に帰ってしまいました。 UFOはまだ同じ民家の屋根の端っこにいて、飛んでいく気配もありません。 ただ鈍い光を放ちながら、時折赤や青色に点滅しています。 私はブラン
新潮社から新訳が出たトマス・ピンチョンの『V.』(1963)のうち、上巻と下巻にまたがる第九章「モンダウゲンの物語」は、1922年におけるドイツの南西アフリカ保護領を舞台にしています。 大学を出たばかりの技術者クルト・モンダウゲンは、空電の調査を命じられてはるばるこの地までやって来たものの、5月のある日、原住民のボンデルスヴァールツ族が反乱を起こしたと知らされる。 あわてたモンダウゲンが避難した先は、フォプルという農園主の屋敷。そこは外界から切り離された、ヨーロッパ各国の白人たちの集う社交場になっており、彼らは酒池肉林の“籠城パーティー”を始めていた。 パーティーの続くあいだ、屋敷ではあやしげな男女が次々に登場してそれぞれの思い込みをモンダウゲンの耳へ一方的に注ぎ込み、やがて壊血病にうなされる彼の脳裏には、これに先立つ1904年の原住民大虐殺の記憶が(他人の記憶なのに!)フラッシュバックす
片岡義男のことをよく知らない。 私はこの人の小説を、わりと最近、2冊しか読んだことがなく、それはどちらもめちゃめちゃ面白かったが(『花模様が怖い』、『ミス・リグビーの幸福』)、作者については、日本語と英語をまったく同等に使いこなすことと、村上春樹よりもずっとまえから 英語(アメリカ語)を日本語に移植するようにして文章を書いてきたらしいこと、それくらいしか知らない。合っているだろうか。 それともうひとつ、この人が雑誌や何かで書くエッセイは、英語と日本語のちがいを扱ったものであることが多く、そのすべてが、ことごとく面白いからすごいことだと思っていた。 この『日本語の外へ』は、片岡義男の英語・アメリカ語論であり(英語とはどんな言葉か)、それであるために日本語論となり(日本語とはどんな言葉か)、そこから当然のこととして、日本論へとなっていく(日本とはどんな国か)。 そう書くとデカい話だが、あくまで
さて、昨日の投稿の続きを書きます。 まず、エドナ・オブライエンはブローティガンの最初のガールフレンドと、かれの親友の母親だった。の母親だった。 この未発表作品集のタイトルは、The Edna Webster Collection of Undiscovered Writings となっている。やっ、やっ、なんてこった。昨日のブログにはエドナ・オブライエンと書いて平然としていたのだ、このわたしといううっかり者は。オブライエンという名はどのようにして、あたかも黒頭巾、黒装束の忍者みたいに、わたしのこころに忍びこんでいたのか。 つくづく、自分に愛想をつかしているが、かといって、それでどうなるわけでもないから、「恥じさらし」を特技とした人間なんだとあきらめよう。 一九九二年の十月、やがてこのコレクションの編集をすることになったバートン・ワイスはブローティガンの作品のみを蒐集していたある友人から電話
ただの留学生には中国ミステリ業界の隆盛を肌に感じることは難しいが、のんびりと一年も北京に暮らし毎月数冊の雑誌を買っていると雑誌の傾向や読者の好みなどがそろそろわかってくる。 これは紙質同様内容も粗悪でエログロであるとか、ホラー色が強いとか、作品よりもコラム系に力を入れているとか各雑誌の力の入れ所が違い面白い。 その中でボクが定期購読している『推理』はわりと良質なミステリ雑誌と言えるでしょう。日本や諸外国の名作を翻訳して無断掲載しているのでまるっきり真っ当というわけではないが、今のところボクの肌に一番合っているのがこの本だ。 だけど何か特別なところがあるわけではない。『推理』を含めて全てのミステリ雑誌の構成はどんぐりの背比べのようなもので推理小説初心者向けの造りになっている。『推理』は毎月一人国内外の有名作家や作品を紹介するスペースを設けており、『推理倶楽部トップ10』という企画をしている。
長嶋有のあたらしい短編集『祝福』は、女主人公もの → 男主人公もの → 女主人公もの、と交互に繰り返される計10編だそうで、オビには「ひとり紅白歌合戦」とある。 じっさい大晦日に紅白を眺めながら読んでいったらきっと楽しいと思うが、とてもそこまでは待っていられず読みはじめた。 冒頭の1編「丹下」(すごくいい)のことはちょっと措く。2編め「マラソンをさぼる」について、どうしても書いておきたいことがある。 (「マラソンをさぼる」についてというよりも、「マラソンをさぼる」のごく一部についてでしかないから、状況の説明はしない。ネタバレではないと思うけど、“小道具バレ”ではあるので、そういうのが嫌なかたは注意されたい) 高校生男子の会話中、唐突にこのような話題が出てきたのである。 《「なあ、おまえ、浅香唯の『セシル』って歌、知ってるか」[…]「その歌詞にさぁ。『映画で観たセシルのように嘘はつきたくない
ラスコーの壁画が人類遺産として保全されているように、同種の壁面芸術(?)を記録したこの本も、後世の人類学者(w)にとって貴重な資料となるかもしれません。実は私も以前、電話ボックスのピンクチラシを、同時代の資料として残すべく、人目を憚りつつ収集していたことがあるのです。 ところで、文中の「総武線・錦糸町駅」の文字に古い記憶が俄かに甦りました。 錦糸町の安アパートに下宿していた学生時代、土曜の夜はいつも駅前の映画館に篭り、日活ロマンポルノの三本立てを観て過ごしていたのですが、そこの便所、客の飛ばした白濁液が個室の壁面を彩って壮絶でありました。落書きより直截的な、一種のアクションペインティングと言えるのではないでしょうか。 映画も終わり表に出ると、うらぶれた感じの中年の御婦人たちが「ねぇお兄さん、遊ばない?」と声をかけてくるのです。 今から30年ほど昔、なんとなくクリスタルでおいしい生活な時代の
ある道を極めた人物について、その業績を綴った本はいつもハズレがない。自分の知らなかった世界を知ることができるのは刺激的だ。特殊な世界であればあるほど、その刺激は強くなる。銀行業界よりも植木職人の世界の方が興味深く、植木職人よりも野菜の種ひも製造業の世界の方が興味深い。 そんなわけで『牛づくり八十年』である。 『牛づくり八十年/蝦名賢造』(1963年 毎日新聞社) おれはいつもそうなんだけど、この本も見た瞬間に買った。そりゃそうだよ、なんたって牛を作って80年だもん。たかだか古本集めて35年のおれが勝てる相手じゃない。 本書の主役は、北海道江別市で牧場を経営する町村敬貴さん。アーネスト・ボーグナインを温和にしたような、でも温和にしたらそんなのボーグナインじゃないよ!的なナイスなお顔立ちがいい。ここでぐっと引き込まれる。これで81歳なんだよ! 町村さん曰く、 私になにか若返り方法があるんだろう
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