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経済の停滞や落ち込みが人の死亡リスクを高めることは、多くの学術研究で指摘されています。以下、いくつかの代表的な研究を紹介しながら説明します。
経済の停滞は失業率の上昇を招き、それが自殺率の増加につながることが多くの研究で示されています。
Brenner (1976) は「Economic Changes and Heart Disease Mortality in the U.S.」の研究で、景気後退期には自殺率や心疾患による死亡率が上昇することを指摘しました。
Stuckler et al. (2009) の「The public health effect of economic crises and alternative policy responses in Europe」によると、2008年のリーマンショック後、失業率が1%上昇すると自殺率が約1%上昇することが示されました。
日本でも、バブル崩壊後の1990年代後半やリーマンショック後に自殺者数が増加したことが統計で確認されています(厚生労働省「人口動態統計」)。
Marmot (2005) の「Status Syndrome: How Your Social Standing Directly Affects Your Health and Life Expectancy」によると、社会経済的地位が低いほど平均余命が短くなることが示されています。
Case & Deaton (2015) の「Rising morbidity and mortality in midlife among white non-Hispanic Americans in the 21st century」では、経済格差が拡大することで、薬物中毒やアルコール依存、心疾患などが増加し、中年層の死亡率が上昇したことを報告しています。
日本でも、相対的貧困率の上昇に伴い、栄養不足や医療費負担の増加による健康悪化が問題となっています。
経済停滞が続くと、政府の財政が悪化し、医療や福祉への支出が削減される可能性があります。
Stuckler et al. (2011) の「Effects of the 2008 recession on health: a first look at European data」によると、経済危機による政府支出削減が医療サービスの低下を招き、疾病の早期発見が遅れるなどの影響があったとされています。
Ruhm (2000) の「Are Recessions Good for Your Health?」では、経済が停滞すると医療サービスの利用が減少し、特定の疾病の死亡率が上昇することが示されました。
日本でも、医療費の自己負担増加や介護サービスの削減が進められており、高齢者や低所得者の健康リスクが高まっています。
経済の不安定化は、人々の精神的ストレスを増加させ、それが健康悪化や死亡リスクの上昇につながります。
Wilkinson & Pickett (2009) の「The Spirit Level: Why More Equal Societies Almost Always Do Better」では、経済格差が拡大すると社会的ストレスが増加し、うつ病や自殺が増えることが指摘されています。
Kawachi & Berkman (2001) の「Social Ties and Mental Health」では、経済的不安が社会的孤立を引き起こし、精神疾患のリスクを高めることが報告されています。
日本では、リーマンショック後に「派遣切り」などの影響で多くの人が職と住居を失い、自殺や健康問題が増えました。
経済停滞は、失業の増加、貧困の拡大、医療・福祉の低下、心理的ストレスの増加などを通じて、人々の死亡リスクを高めることが学術的に示されています。特に日本のように高齢化が進んでいる国では、経済の低迷が社会保障制度の持続性にも影響を及ぼし、さらに深刻な問題を引き起こす可能性があります。