全2169文字

 1台の物理サーバー上に、仮想サーバー(仮想的なサーバー環境)を複数構築するサーバー仮想化技術。「サーバーを物理的に増やさなくても複数のシステムを構築・運用できる」という利点が広まり、多くの企業に浸透した。米Amazon Web Servicesや米Microsoftなどが手掛けるクラウドサービスも、サーバー仮想化技術を応用して実現している。

 こうした中、「仮想サーバーはサーバー管理者に任せていればよい」と考えているネットワーク技術者がいるかもしれない。だが、実はネットワークの知識や技術を生かしてこそ、仮想サーバーは十分な性能を引き出せる。仮想サーバーは物理サーバーと同様、ネットワークに接続して他の端末と通信する上、仮想サーバーならではといえるネットワーク周りの機能があるからだ。

仮想サーバー用のネットワーク

 ネットワーク技術者がサーバー仮想化環境と向き合う際、理解しておきたい3つのポイントがある(図1-1)。1つ目は、物理サーバーに複数の仮想サーバーを構築*1していることだ。複数のシステムが1台の物理サーバーで動くため、単一のシステムを運用するときよりも通信量が増えがちだ。障害の影響を抑える冗長化などへの配慮が欠かせず、ネットワーク側でも配慮が求められる。

図1-1●サーバーの仮想化環境でもネットワークの知識が大切
図1-1●サーバーの仮想化環境でもネットワークの知識が大切
複数の仮想サーバーを稼働させることで通信量が増えやすく、ネットワーク障害の影響も大きくなる。また物理サーバー内部に仮想サーバー用のネットワークが生成されるため、その機能を理解して設定や物理ネットワークとの接続方法を考慮することで使いやすさが高まる。
[画像のクリックで拡大表示]

 2つ目のポイントは、仮想サーバー用のネットワークが内部に存在することだ。この内部ネットワークがどんな機能を備え、どう動作するのかを知っていると、性能などを確保しやすくなる。

 3つ目は、物理ネットワークが様々な用途の仮想サーバーと接続することである。それぞれの仮想サーバーの挙動を想定した設定が求められる。

 特に、複数の物理サーバーで仮想サーバーを動かしている場合などに要注意だ。例えば、ある物理サーバーで稼働する仮想サーバーをそのまま別の物理サーバーに移動させる「ライブマイグレーション*2」と呼ばれる仕組みがある。こうした仕組みが有効に働くようにネットワークを設定しておく必要があるわけだ。