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 オープンソースソフトウエア(OSS)の専門部隊であるOSPO(Open Source Program Office)の役目は、主に自組織のOSS戦略の立案やコミュニティーへの貢献、自組織でのカルチャー醸成、OSSのライセンス管理などがある。

 NECは社内にOSPOの役割を果たす「OSS推進センター」を設けている。同センターの特徴は、ITベンダーとして「稼ぐ」OSPOを目指していることだ。社内のOSS組織と聞くと、システム開発の裏方であり、バックオフィスの業務と思われがちだ。コストセンターと言われることもある。

 しかしNECの同センターは、社内における活動だけでなく、社外へのサポートビジネスなどにも積極的に携わっている。NECの久冨孝司OSS推進センター長は「OSPOの活動を、顧客にも価値のあるものにする。顧客ビジネスの利益に結び付けることが重要だ」と説明する。OSS推進センターは顧客が事業を継続できるよう、OSSの保守サポートサービスや設計・構築支援の技術サービスなどを有償で提供しているという。

OSSを適正・安全・効率的・効果的に活用する

 NECがLinuxに関するサービスを開始したのは1999年のことだ。2001年に開設したOSS推進組織の統合や改称を経て、2006年からOSS推進センターの名称で活動。法務部門や知財部門、情報セキュリティー部門、輸出管理部門、品質保証部門、NECグループ会社のOSS推進組織などと幅広く連携している。

NECの久冨孝司OSS推進センター長
NECの久冨孝司OSS推進センター長
(写真:NEC)
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 NECの山本勝之OSS推進センターシニアプロフェッショナルは同センターが果たす役割を「NECグループ全社に対して、OSSライセンスの順守やOSSの脆弱性などへのリスク対応といった、OSSを適正・安全・効率的・効果的に活用する取り組みを推進することだ」と説明する。

 具体的な取り組みは、OSS活用に関するガイドラインの整備や非推奨のOSSリストの作成、NECグループ社員約4万人へのOSS教育、といった活動をしている。リストは社内外のプロジェクトを進める際、OSSの選定に役立つ情報となる。またNECグループ社員への教育は2020年から毎年実施しているという。

 OSPOはNECが先進的なOSSを適切かつ効率的に活用してシステムを顧客へ提供し、稼ぐことを支援する。このために重要なのが、ガイドラインだ。

 NECのOSSガイドラインは3つから成る。まず大前提となるガイドラインがNECの吉崎敏文執行役Corporate SEVP兼CDO兼デジタルプラットフォームビジネスユニット長が発行者となり、2021年9月に制定した「オープンソースソフトウェアの取り扱いに関する基本方針」である。海外を含めたNECグループ全社員が順守すべきガイドラインだ。この基本方針では、OSSコンプライアンスの徹底や、教育の実施、問題発生時の誠実な是正措置、再発防止などを宣言している。

 2つ目が基本方針を素地として示した「OSS利活用ガイドライン」である。プロジェクト関係者の全員が理解すべき現場の運用指針として提示した。ライセンス違反やセキュリティー事故などを防止するガイドラインに加えて、OSSの公開や貢献活動に関する検討事項などを記載した詳細編を用意した。

 3つ目が開発現場で実際に参照する具体的な手順を示した「OSS利活用プロセス」だ。製品・サービス・システム構築向けでは、企画~出荷と運用・保守の2つのプロセスについて、OSSリスクを網羅的かつ効率的に検証できるようにした。この他、OSS貢献プロセスとOSS公開プロセスも用意した。利用と貢献の双方を支援する。