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積極的に専門人材の中途採用を進め、DX部門を急速に増強している。15年間で約10倍の規模に拡大。現在は約140人が在籍する。事業部門との人事交流も実施し、変革を全社活動に広げようとしている。

【直近の活動】

 三井不動産のDX(デジタル変革)に向けた取り組みは2017年から本格的に始まった。それまでの「情報システム部」を「ITイノベーション部」に改め、事業変革と働き方改革の2つの観点から、社内のデジタル化を推進してきた。

 主要な業務システムを相次いで刷新した。三井不動産単体では、主要システムの92パーセントは10年以内に刷新済みだ。システムの96パーセントはクラウドで稼働している。業務システムなどのITに対する社員の満足度は86パーセントに達した(2023年度、単体)。

 この間、社内のIT人材を急増させた。2009年の情報システム部員は15人だったが、後継の「DX本部」は、2024年8月時点で約140人が所属している。

【DXの位置付け】

 三井不動産はDXを、長期経営方針「& INNOVATION 2030」を支える3つのインフラの1つとして位置付ける。3つのインフラは人材、DX、ESGである。

 この長期経営方針に合わせて2024年8月に発表したグループのDX方針が「DX VISION 2030」だ。

図 三井不動産が掲げる「DX VISION 2030」の概要
図 三井不動産が掲げる「DX VISION 2030」の概要
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【DXの重点テーマ】

 DX VISION 2030では、大きく3つの変革を進めることを規定している。ビジネス変革の「&Customer」、AI(人工知能)/デジタル人材変革の「&Crew」、デジタル基盤変革の「&Platform」である。

 &Customerはデジタル技術を活用して既存の事業を拡大すること。例えば、ホテルや商業施設、住まい関連サービスなどで、事業横断的なロイヤルティー・プログラムを実施している。会員ステータスに応じて特典を提供する。

 他社と共同でサービス開発も進める。例えば、商業施設のららぽーとでテナントと共にデータを分析し、商品を魅力的に演出する「ビジュアル・マーチャンダイジング」に取り組む。柏の葉スマートシティでは、データ活用により、住民に健康支援サービスなどを提供している。

 &Crewでは、AIなどのデジタル技術に詳しい人材を増やしていく。「過去10年間、DXを進めてきたがまだまだやりたいことは多い。人材の力によって、実現可能なことが増える」と古田貴執行役員DX本部長は言う。中途採用に加え、社内の人事交流により人材を育成していく。

 最後の&Platformは計画的で安定したシステム開発を目指す。特にグループで統一した、インフラ・セキュリティーの仕組みづくりに力を入れていく。