持ち株会社で全世界の方針を決め、地域ごとにDXの施策を進める。2025年までに生産性向上のためのシステム構築などに500億円を投じる。生成AI活用の業務活用や社員へのデジタル教育も積極的だ。
【直近の活動】
グローバルに事業を展開するアサヒグループホールディングス(HD)は、ここ数年、世界共通システムの整備を進めてきた。サプライチェーンのKPI(重要業績評価指標)計測などのシステムを構築した。全世界で共有するデータ、業務アプリケーション、UI(ユーザーインターフェース)の大きく3層に分けて、全世界のシステムを整備している。
加えて最近は生成AI(人工知能)の活用に積極的だ。国内では、生成AIを用いた社内の情報検索システムを導入した。人事や経理、研究開発といった分野の社内文書を検索し、質問に回答する生成AIを構築済みだ。生成AIの社会実装を目指す一般社団法人のGenerative AI Japanにも会員企業として参加している。
【DXの位置付け】
アサヒグループ長期戦略のコンセプトは「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」である。この実現に向けた「コア戦略」として「サステナビリティー」「R&D」と共にDX(デジタル変革)を位置付ける。DXは「中長期戦略全体に影響を与える機動力」と規定している。
【DXの重点テーマ】
アサヒグループはDXを事業の根幹を変える「ビジネストランスフォーメーション(BX)」と定義している。具体的には大きく3つの変革で構成する。「ビジネスイノベーション」「プロセスイノベーション」「組織イノベーション」である。
ビジネスイノベーションでは顧客1人ひとりのニーズに対応する「パーソナライゼーション」や持続的な社会の実現を目指す「サステナビリティー」をテーマにデジタル技術を使う。例えばスマートフォンアプリで血中アルコール濃度を算出する「酔いの数値化」を実施し、不適切飲酒の撲滅を推進する。
プロセスイノベーションではグローバル規模を生かして「生産性の向上」を目指す。ビジネスモデルの変化に対応できるシステムを構築する「柔軟性の確立」も進める。
ビジネスイノベーションとプロセスイノベーションを実現するために、必要な組織を作るのが組織イノベーションだ。人材の獲得と育成によって「デジタルネーティブ組織」の構築を狙う。