【球界こぼれ話】「このまま他球団に移籍ならやっぱりモヤモヤした感じは残りますよね」

 先週、パ・リーグ関連の取材現場に赴くと、こんな声を頻繁に耳にした。元レッドソックス・上沢直之投手(30)の日本球界復帰が確実視されていたからだ。

 今季プロ10年目だった右腕は昨オフ、日本ハムからポスティングシステムを利用して米メジャーリーグに挑戦。レイズとマイナー契約を結び、今年2月に海を渡った。だが、春季キャンプで結果を残せず、開幕直前にレッドソックスに移籍。4月末にメジャー初昇格を果たすも、わずか2試合の中継ぎ登板後にマイナー落ち。そのままシーズンを終えた。

 日本ハム時代から温厚で人格者としても知られる上沢。通算12年で計70勝と実績も悪くないため、球団内では米移籍前から「将来の幹部候補」として期待を寄せる関係者も少なくなかった。だからこそ球団側もポスティングの譲渡金が約95万円(当時レート)という少額だったにもかかわらず、本人の思いを優先。エース右腕を気持ちよく送り出した。

 そんな経緯があった中での日本球界復帰である。しかも移籍先が日本ハムの最大のライバル・ソフトバンク。となれば、冒頭のような声がファンや球団関係者、報道陣の間でささやかれるのも無理はない。

 ポスティングでメジャー移籍した選手が短期間で日本球界に復帰しても古巣復帰が強制されるわけではない。この点を考慮すればファンや関係者が「なぜ日本ハムに戻らないんだ」と批判するのは的外れといえる。それでも、今回の一件で上沢が批判されがちな背景には「事実上のFA短縮を試みたのでは」という疑念が生じるから。

 数年前から米移籍願望が強かった本人にそんな意図はなかったはずだが、仮に1年間のメジャー挑戦後に古巣以外のNPB球団と大型契約を結べば、いや応なしに野球ファンや関係者はそう疑ってしまう。であれば、当該選手や受け入れる球団のためにも適切なルール作りに着手すべきだろう。

 昨今の日本球界は選手側が要望するポスティングに寛容である半面、出戻りする選手に対しての基準や制限があいまいと言わざるを得ない。このままでは同じような事例が今後、頻発する可能性も否めない。

 当事者や周囲に遺恨や誤解を生じさせないためにも、誰もが納得する制度改革が待たれる。