オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第214回は「マラソン幽霊」だ。
昭和時代から平成時代初期にかけて、地方の国立大学の学生寮に出たといわれる名物幽霊である。深夜、学生寮に入居している学生たちが各部屋で寝ていると布団の上を踏みしめながら駆け抜けていくランナーが出没した。
これはかつてマラソン競技の有力選手であった某氏がマラソン大会の直前に病気で死亡した。以来、某氏のマラソンに執着する気持ちが幽霊となって現れたのが原因であるという。
毎晩毎晩続く幽霊騒動に、頭を悩ませた学生たちは妙案をひねり出した。幽霊の未練のもととなった「マラソン大会のゴールテープを切ること」を体験させてやれば、全て丸く収まると考えたのだ。
ある夜、寮の端っこの部屋に入居していた学生が布団の上にゴールテープを貼った。そして、マラソン幽霊が出る時間になった。幽霊がゴールテープを切った瞬間「ゴーーーール!」と絶叫してあげた。すると、マラソン幽霊は満足そうな顔をして、静かに消えていったという。こうして見事、成仏したのだ。
大学中の期待を乗せて走る選手の思いは並大抵のことではないだろう。また、マラソンに消費する壮大なエネルギーは、一般人と比べて非常に強く、これが霊となった場合、強力な霊力を発揮したことであろう。
走り回る幽霊としては、大手ゼネコンの社員が建設現場において、走り回る「縄文人の幽霊」を目撃している。また、福岡で「自転車ババア」という、自転車ごと池に落ちて死亡したババア系妖怪が存在している。