ECサイトの作り方のひとつに、SaaSを活用した方法があります。この記事では、SaaSでECサイトを開設することのメリットについて解説します。国内で人気のSaaSも紹介しますので、自社ECサイトを構築するなら、どのプラットフォームが適しているのかを比較してみてください。
SaaSとは
サービスを提供している業者のサーバー上で運営・管理されているソフトウェアを、インターネットを通じて一般ユーザーが利用できる仕組みがSaaSです。SaaSは「Software as a Service(ソフトウェア アズ ア サービス)」の略で、日本語ではサースまたはサーズと呼びます。具体的には、Yahoo!やGmai、Microsoft 365、ZoomなどがSaaSに該当します。
SaaS Eコマースとは
クラウドベースのソフトウェアを活用し、商品の取引を行うのがSaaS Eコマースです。利用者はソフトウェアを使ってネットショップを立ち上げ、商品を販売したり顧客情報や在庫を管理したりできます。サーバー管理といったバックエンド業務が不要な点も特徴のひとつです。
一方、SaaS Eコマース事業者は、管理するソフトウェアのライセンスをほかの事業者や一般ユーザーに販売・提供しています。
SaaS Eコマースの仕組み
SaaS Eコマース事業者は、ソフトウェアを使用する企業の従業員数や必要な機能に応じて、さまざまな料金プランを用意しています。多くの場合、月額料金などの固定金額制(サブスクリプション形式)が採用されており、プランによって料金が異なります。
たとえば、最小限の機能を求める中小企業向けには、比較的低価格で利用可能なプランが、より大規模の企業や機能をカスタマイズして利用したい事業者向けには、サービスが充実した比較的高価格のプランが提供されています。
SaaSでECサイトを立ち上げるメリット
初期費用を削減できる
従来のECサイト構築では、ソフトウェア、ホスティング、ハードウェアなどの準備に多額の初期費用が必要でしたが、SaaSを利用することで初期費用を削減できます。SaaSのなかには、初期費用が無料で提供されているものもあります。多額の費用を使って一からECサイトを構築する代わりに、SaaSを活用することで、最小限の初期費用でオンラインストアの運用を開始できます。
すぐにECサイトを開設できる
SaaSの多くは、直観的に操作できるようになっており、プログラミング言語などの専門知識がないユーザーでもすぐにECサイトを開設できます。基本的には、オンライン上のプラットフォームを通じて必要な情報を入力して、サービス提供業者と契約を結ぶだけで利用できるため、できるだけ早く事業をスタートさせたい人に最適です。
Shopifyなどのプラットフォームには、サイトデザインのテンプレートが多数用意されているので、時間をかけずに理想に近いサイトに仕上げることができます。
ビジネスの規模に合わせて拡張できる
SaaSを利用することで、ニーズに応じて柔軟にウェブサイトを拡張することができます。たとえば、セールなどで需要が増加する際には、ECサイトが問題なく稼働するようにサーバーを増やしたり、システムを強化したりと、手動で対応する必要があります。SaaSを活用すれば、システムが自動的にサーバーの容量を調整してくれるので、訪問者が急増してもECサイトは適切に機能します。事前にリソースを割り当てる必要がないのは、SaaSならではメリットです。
自動更新により常に最新のサービスを利用できる
SaaSを利用してECサイトを開設すると、サービス業者がソフトウェアを定期的に更新してくれるので、常に最新の機能やセキュリティ対策が自動的に適用されます。そのため、利用者の満足度を下げることなく、信頼性の高いサービスを提供し続けることができます。
Shopifyでは、新しい決済代行サービスが登場してもすぐに利用できるように更新されるので、速やかに新サービスを導入できます。
どこからでもアクセスできる
SaaSを利用すれば、オフィスはもちろん、自宅や外出先など、どこからでもECサイトにアクセスできます。自分のアカウントからソフトウェアにアクセスするので、異なるデバイスでもサービスを利用できるためです。
さらに、複数人で同時にファイルの編集や管理も行えるので、チームメンバーが異なる場所にいても一緒に作業できます。どこにいてもデータの共有や共同編集が簡単に行えるのは、SaaSの大きな強みです。
セキュリティ対策の必要がない
SaaSでは、サーバーの運用や管理はサービス業者が実施するため、ユーザー側でコストをかけて特別なセキュリティ対策を行わなくても安全に利用できます。業者が実施している対策としては、データを暗号化して保護するSSL機能やセキュアな決済方法などがあります。
一例として、ShopifyのShop Pay(ショップ ペイ)では、クレジットカード業界のセキュリティ基準(PSI DSS)を満たすサーバーを利用し、安全な支払いを実現しています。さらに、支払い時にパスキーや6桁のShop Payコードを使用して認証することで、第三者による不正利用を防止しています。そのため、自社でセキュリティ対策を行う必要がありません。
SaaSとオープンソースの比較
SaaSとよく比較されるのは、オープンソースサービスです。オープンソースとは、すべてのユーザーが自由に利用できるように、ソフトウェアを構成するソースコードを一般公開することです。一方、SaaSはサービス業者がソフトウェアの管理や運営を行い、ソースコードは一般公開されていません。
SaaSとオープンソースには、コストと表示内容、カスタマイズ、安全性に大きな違いがあり、使用するために必要な専門知識のレベルも異なります。
コスト面
SaaSとオープンソースのプラットフォームを利用するにあたって、いずれもコストがかかりますが、金額が異なります。
SaaSでは、ソフトウェアの使用料として、月額または年額料金が発生するケースがほとんどです。料金には、ホスティング費用や定期的なアップデート費用などが含まれています。
一方、オープンソース型のソフトウェアは無料で利用できることが多いですが、実際に運用する際にはコストがかかります。具体的には、ホスティング費用やセキュリティ対策、専門的なサポート、必要な機能を実現するためのプラグインやカスタマイズの費用などです。専門知識が必要であるため、適切な人材がいない場合は、開発者を雇うための人件費も必要になります。
表示内容
SaaSもオープンソースも、ECサイトのデザインやページの表示内容を変更することができます。いずれの場合も、幅広いデザインテンプレートが用意されています。
SaaSの場合は、テーマパラメータを使用することで、比較的簡単に色やフォント、レイアウトなどを変更できるようになっています。しかし、専門知識がない場合は、表示内容を細かくカスタマイズできない場合があります。
オープンソースサービスの場合は、プラットフォームで使用されているスクリプト言語やプログラミング言語の知識があれば、表示内容を自由に変更することが可能です。
カスタマイズ性
オープンソースサービスは、ソースコードを編集して自由にカスタマイズできますが、SaaSでは利用できる機能が限られています。
オープンソースサービスの場合、高度な専門的な技術と知識が求められますが、ソースコードを編集して、ニーズに合わせてECサイトの細部までカスタマイズできます。一方、SaaSはウェブ開発の経験がないユーザーでも、用意されているオプションや拡張機能、外部サービスとの連携を通じて、サイトに必要な機能を導入することができます。
安全性
SaaSもオープンソースも安全性は高いですが、オープンソースサービスを利用する場合は自社でセキュリティ対策を講じる必要があります。前述のとおり、SaaSでは、サービス業者がサイトのセキュリティを監視しています。そのため、自社でセキュリティ対策を講じる必要がなく、安心して利用できます。
一方、オープンソースサービスでは、自社サイトのセキュリティ対策を実施し、必要に応じてアップデートを行わなければなりません。そのため、セキュリティ対策を万全にするために、経験豊富な開発者のサポートが必要となることも少なくありません。
おすすめのSaaSプラットフォーム5選
1. Shopify(ショッピファイ)
Shopifyは、ECサイトを手軽に構築したいと考えている人に最適なSaaSです。世界中で400万以上のオンラインストアをサポートしており、24時間365日のカスタマーサポートやコンテンツの管理システムなどを提供しています。さらに、Shopify App Storeでは、決済代行サービスや請求管理ツールなど、8,000以上のECサイトの運営に役立つ便利なアプリを提供しています。
ほかにも、オンラインストアを快適に利用できたり、ソーシャルコマースやドロップシッピングといった、人気のEコマースモデルを試したりすることができます。さらにShopifyでは、インターネット上で最もコンバージョン率の高い決済機能を利用できるので、オンラインでの売り上げを増やすことも可能です。実店舗で対面販売を行っている事業者は、Shopify POSを使用することで注文データなどを一元管理することができます。
また、専門知識がない事業者が安心して利用できるように、ビジネスに必要なサポートを受けられるShopifyパートナーサービスも提供しています。サービスを通じて、サブスクリプションサービスの管理やサイトをより使いやすくするための取り組みなどを実施できます。
ほかにも、Shopifyには以下のような機能があります。
- 在庫管理機能
- 梱包や配送などを代行するフルフィルメントサービス
- 詐欺やリスクなどの分析機能
- 各種SNSとの連携機能
- 業務の自動化機能
- B2B向けの機能
- 国際ドメイン
- マーケティングツール
Shopifyの無料体験を始めるのは簡単です。100種類以上のデザインテーマから好きなものを選ぶだけで、すぐにECサイトを構築できます。無料体験後は、1か月150円で利用可能です。料金プランは変更される可能性があるので、最新情報はShopifyの公式サイトでご確認ください。
2. BASE(ベイス)
BASEは、初期費用や月額費用を抑えてオンラインストアを始めたい人におすすめです。初期費用や月額費用が一切かからず、商品が売れた場合にのみ手数料が発生するため、低コストで事業を始められます。売り上げが伸びるまで、無駄なコストをかけずに運営することが可能です。
さらにBASEは、集客や販売促進に加えて、マーケティングや運営の効率化を図る機能も充実しています。オンラインストアを開設するまでの手続きは約30秒、販売を開始するまでの手続きは30分ほどで完了するので、すぐにオンラインストアを開設できる点も魅力です。
3. ecforce(イーシーフォース)
ecforceは、企業から顧客へ直接アプローチするD2C事業の売り上げを伸ばしたい場合におすすのSaaSです。D2C事業でありがちな、カートに商品を入れたものの、購入手続きが複雑で面倒に感じ、最終的にサイトから離脱してしまうカゴ落ちへの対策が充実しています。
具体的には、ユーザーが何度も操作しなくても済むように、ワンクリックで決済を完了できるシステムと、販売促進のためのカゴ落ちメールの自動送信機能が備わっています。
4. futureshop(フューチャーショップ)
futureshopは、ECサイトのデザインや機能性を充実させたい人におすすめできるSaaSです。商品情報を登録するだけで商品ページが自動的に作成され、お問い合わせやスライドなどのサイトを構築するパーツの表示順を自由に変更できます。最大40枚まで商品画像を登録したり(画像のホスティング機能)、商品ごとに「裾上げ」や「刻印」といったオプションを追加することも可能です。
専門知識が求められますが、HTMLタグやCSSを適用して、各パーツやサイトの見た目を変更する機能も備わっているので、細部にこだわってサイトをデザインできます。
5. ebisumart(エビスマート)
ebisumartはカスタマイズ性が高く、事業のニーズに合わせたECサイトを構築したい場合におすすめです。BtoB向けのECサイトにも対応しており、顧客情報や受注データに加えて、出荷や見積もり、請求なども管理することができます。
さらに、専門知識がない人でも簡単に操作できるように、専任のスタッフがECサイト運営に関する悩みを聞いて、サポートしてくれます。定期的に開催される少人数制の講座で、運用方法を学びながら実践できるのも大きな特徴です。
まとめ
SaaS型ECサイトを構築することには、たくさんのメリットがあります。一般的なECサイト構築サービスと比較して、初期費用や運用コストを削減でき、サーバーやソフトウェアの保守もSaaSの提供業者が行ってくれるので、手間がかかりません。簡単な操作ですぐにECサイトを開設でき、常に最新の機能やセキュリティ対策が自動的に適用される点も大きなメリットです。
さらにSaaS型ECサイトは、専門知識がなくても、手軽にECサイトの運営やカスタマイズができる点も魅力です。Shopifyでは、豊富なデザインテンプレートやマーケティングツール、24時間365日のカスタマーサポートを提供しています。無料体験も実施していますので、ECサイトを低コストで開設して売上を伸ばしたいと考えている方は、Shopifyをご活用ください。
よくある質問
SaaSとは?
SaaS(Software as a Service)は、インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービス形態のことです。ユーザーはソフトウェアをインストールする必要がなく、クラウド上で利用できます。
SaaS型ECとは?
SaaS型ECとは、クラウドを活用してECサイトの開設や運営をサポートするサービスです。通常であれば自社で管理する必要があるサーバーを持たずに運用できるため、短期間でサイトを構築できますが、カスタマイズ性に制限がある、といったデメリットがあります。
SaaS型ECサイトの特徴は?
- コストを抑えてECサイトを構築・運用できる
- 時間をかけずにECサイトを開設できる
- 自動更新により常に最新のサービスを利用できる
- どこからでもアクセスできる
- 自社でセキュリティ対策をしなくても、安全にECサイトを運用できる
文:Yukihiro Kawata