「子どもの不登校や非行、親の虐待など多様な問題を抱えた『困難事例』の家庭の中には、ヤングケアラーと思われる子が少なくない」。沖縄県内のスクールソーシャルワーカー(SSW)のスーパーバイザーを務める沖縄大学の名城健二教授(52)=精神保健=は、各地の学校現場に足を運び対応策を助言してきた立場からそう語る。
特に親の精神疾患が背景にあるケースが目立つという。気分が不安定な親の病と向き合う緊張状態の中で、子どもは話し相手や愚痴の聞き役になるなど知らず知らずのうちに感情面のケアを担っている。
留意すべきなのは「家庭内で大変なことが起きていても、表面に出さない子が圧倒的に多いということ」。家族のケアが当たり前の日常になっている、同情されたくない、親を悪く思われたくないといった理由で「気持ちを発散できずにため込んでしまう」と説明する。
名城教授がSSWとして、ある小学校に定期的に通っていた十数年前。2年生のクラス担任が母子家庭の一人の女児について、成績も生活態度も問題ないが「母親となかなか連絡が取れない」とつぶやいた。
事情を詳しく調べてみると、母親にはうつやギャンブル依存の症状があった。そして女児は母親の話を受け止めてあげたり、家事が難しい母の代わりに幼い妹の世話や食事を作ったりと、年齢に相応しない役割を担っていたことが分かった。
「不登校や非行はSOSの表現の一つであり発見しやすいが、学校を休まず聞き分けが良い優等生過ぎる子も注意が必要。自分の状況を言語化できない低学年児ほど目配りが大事だ」と実感を込める。担当校が変わり、...