日銀総裁、利上げ判断「時間的に余裕」 金利は据え置き
日銀は20日開いた金融政策決定会合で、金融政策を現状維持し政策金利を0.25%に据え置いた。会合後の記者会見で植田和男総裁は、今後の追加利上げの判断に「時間的な余裕はある」と述べ、米経済や国内の経済・物価情勢を見極めていく姿勢を示した。
7月末の会合で利上げを決めた後、為替相場が円高方向に動いた。植田総裁は2024年の年初からの円安進行に伴った物価の上振れリスクは「相応に低下した」と指摘した。
金融市場の動きは「引き続き不安定な状況にある」との見解を示し「極めて高い緊張感をもって注視する」と強調した。
会見開始直後に外国為替市場で1ドル=141円台後半を付けた円相場は、早期利上げの可能性は低いとの観測から、一時144円台に下落した。
植田総裁が追加利上げの判断に時間をかける姿勢を見せたのは、海外経済の先行きに「不透明感がある」との背景がある。金融資本市場の不安定な動きにもこうした見方が反映されているとの認識だ。
米連邦準備理事会(FRB)は18日、通常の倍となる0.5%の幅で4年半ぶりの利下げを決めた。植田総裁は、米国経済がソフトランディング(軟着陸)するとの見通しについて「メインシナリオと見ている点に変わりはないが、リスクは少し高まっている」と語った。米国は個人消費が好調な一方、労働市場が弱含んでいることを理由に挙げた。
今後の米経済やFRBの金融政策は「全体像がまだ見えていない。注意してみていきたい」と話した。
植田総裁は海外の不確実性をリスク要因として注視しつつ、これまで示してきた利上げ方針は維持した。経済・物価の見通しが実現していけば「政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」との考えを改めて示した。
現状の政策金利である0.25%は、インフレを考慮した実質金利でみて「極めて低い水準にある」として、複数回の利上げが可能なことを示唆した。
日銀は追加利上げの判断で、一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率の動きを重視する。堅調な個人消費などを受け、現状で基調物価の判断を「若干なりとも上げてもいいような材料」があると言及した。
ただ米国経済の動きが先行きについて「若干の不透明性を高め、(国内の好調と)相打ちのような形になっている」との状況認識を示した。
植田総裁は「見通しの確度が高まったからすぐ利上げとはならない」と述べ、決められた利上げのペースやスケジュールがあるわけではないと語った。「ある程度まとまった情報が得られたと判断できたところで、次のステップに移るとならざるを得ない」と述べ、データ次第との姿勢も重ねて強調した。
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