取材日:2021年2月12日
1961年の創業以来、「アナログコア技術」を事業の核として進化させてきたマクセル株式会社(東京都港区)。他社や社外機関との協業・共同プロジェクトが増えるなかで 、権利・義務関係や発明の帰属を明確にするべく、アイ・オー・データ機器のタイムスタンプソリューション「eviDaemon」組み込み済み 2ドライブアプライアンスBOX APX-TSFI/5Pを導入。選定に至るまでの背景と利用状況を、イノベーション部の橋本康宣(はしもとやすのぶ)様に伺いました。
橋本様当社は磁気テープと乾電池製造過程で生み出された技術を起点にした「アナログコア技術」を核に、さまざまな事業を取り込みながら裾野を広げてきました。事業が広範囲にわたるにつれ、特許で扱う技術や事業部ごとの事情も多種多様となり、知財・イノベーション本部では間口の広い対応を行っています。
橋本様我々の部門では担当事業部の特許関連業務を主としていますが、知財担当者だけでなく技術者が在籍し、特許関連業務に対する技術的サポートのほか、将来的な技術関連の研究開発も行っているのは珍しいかもしれません。
橋本様将来的な技術関連の研究開発は他社や社外機関との協業も多く、権利・義務関係の取り扱いについては丁寧に対応する必要があります。そのような背景から、2年前に、ある共同プロジェクトを開始する際、発明の帰属に関して争いにならないよう、アイデアを思い付いた時点でその日付の証明を残しておくべきだと考えました。ファイルにタイムスタンプを付与することは公証人役場でもできますが、実務的な手続きが煩雑で時間もかかるため、タイムスタンプソリューション(「eviDaemon」組み込み済み 2ドライブアプライアンスBOX APX-TSFI/5P)を導入することにしました。
橋本様同商品を選んだのは、導入コストも低く、5年間押し放題でリーズナブルだと感じたからです。また、オンラインでその都度使用料金が発生するのではなく一度きりの買い切りになること、今の時代の流れにスピードを持って対応できることもメリットでした。実際、導入後、公証人役場を利用していた時と比べて、作業が格段に早く楽になりました。
橋本様ドキュメントの日付証明は既存の社内システムの記録でもある程度は有効ですが、同商品の導入で社内システムに登録する前段階、より早い時点での日付証明が得られるようになりました。例えば、特許の場合は、社内の管理システムだけではアイデアの着想から管理システムに登録するまでの間に、アイデアの検討でかなりの時間が経過してしまう場合があります。しかし、タイムスタンプを押すことで、アイデア着想時点での日付証明が有用性を発揮しますし、それが第3者による日付証明である点で、証拠能力として一段上となることは言うまでもありません。
橋本様アメリカの特許法は、2013年に最初に特許を出願した者が優先される先願主義に改正・施行されましたが、それ以前は最初に発明をした人が優先される先発明主義でした。そのため、私が若い頃は、まだIT環境が整っていなかったので、多くの技術者は、アイデアの日付証明としてノートにペンで記録と日付を書いていくことを、仕事の流れの中での習慣としていました。この先発明主義で根づいた、丹念にアイデアの着想時点の記録と日付を残す習慣こそ、他社や社外機関との協業が増え、国内外での競争が激しくなる現代において、今後より重要になるのではないかと感じています。
橋本様今はまだノート時代の記録が残っている場合もありますが、もっと年数が経って電子ファイルやメールの記録しかなくなったとき、発明の帰属で話がこじれることがあるかもしれません。誰が着想したかという記録は非常に重要で、しっかりしたエビデンスが出せれば泥沼にはまるような議論にはなりません。研究開発の作業がアナログからデジタルへ移行するなかで漏れていってしまう証拠性の高い記録の習慣化を促進してくれるものが、同商品のタイムスタンプ機能ではないかと思っています。
橋本様現在、同商品は、主に発明アイデアを含む会議資料を集めてタイムスタンプを押し、バックアップの運用をしているサーバー上の保管用フォルダに格納するという流れで使用しています。選り分けの段階でミスがあると終わりですので、タイムスタンプを打つために関係のありそうなものは全部集約フォルダに集め、一気にタイムスタンプを押すようにしています。
橋本様運用方法としては模索している部分もあり、試行錯誤しながら改善を図っているところです。今は1週間ごとにまとめて処理をしているのですが、電子ファイルでドキュメントをつくるという従来の作業に、プラスαでタイムスタンプを押す作業が加わるため、個人任せにしていると抜けが出てくることがあります。タイムスタンプを押すために、人が〝必要な書類をフォルダに入れる〟という流れをどう浸透させていくかがひとつの課題だと思います。
橋本様当社は現在、約2000件以上の特許を申請しています。その一方で、製品化の事情等から、着想としてドキュメント化しても特許出願はしないケースも多くあります。近年は、他社との協業のなかで、そういったアイデアが見直される機会も増えており、タイムスタンプでアイデアを思いついた時点の日付を記録することは後々有効になると考えられます。
橋本様さらに、その時点では特許にならないアイデアが、外部の条件や状況の変化で特許に活かせるようになるケースもあります。今後、国内外の競争相手に対抗して優位性を維持していくためにも、自分たちの技術を特許としてもっと出していくことが必要であり、発明の帰属を明確にしてくれるタイムスタンプの導入は充分意味があると思います。
橋本様同商品は現在我々の部門のみでの運用ですが、基本的に社内のどこからでも使えるので、これからより良いやり方を練って社内で広報活動をし、各部に取り入れていってもらえたらと思っています。同商品の導入で、他社の権利も尊重し、お互いにリスペクトしあう関係性を築きながら、業界全体で発展してゆく未来を創り出していきたいと考えています。