私は2017年6月29日、フジテレビの「ユアタイム」のインタビューを受けました。当時の菅義偉官房長官の危機対応について、「これは危機管理ではなく危機喚起ですね」というコメントを出したのです。まさか、それと全く同じコメントを、フジテレビの危機対応に向けて出すとは思ってもみませんでした。フジテレビは早く方向転換をしないと、取り返しのつかないことになってしまうと懸念しております。
では、そもそもどのような危機対応をすべきだったのか? あるいは、今後はどのようにしたら良いのか? 報道されている範囲の情報を元に、その2点に絞ってお話をさせて頂きたいと思います。
いったん不祥事が起きれば、会社が100%傷つかないダメージコントロールは不可能
1999年5月に上梓した『企業危機管理 実戦論』という書籍の中で、私は次のような記述をしております。「セクハラを防ぐには(1)事業主の方針の明確化とその周知・啓発(2)相談・苦情への対応のしくみを充実させる(3)セクハラが生じた場合には迅速・正確に対応する」の3点が大切だと。この考えは四半世紀を経た今でも変わっておりません。
特に(3)の「セクハラが生じた場合には迅速・正確に対応する」については、次のような方策を述べております。「①相談・苦情に対しては、セクハラの担当者が迅速・正確に事実確認をする ②人事部門が直接に事実関係の確認をする ③セクハラに関する専門の委員会が事実関係の確認をする ④違反した社員に対して配置転換などの処置をとる ➄違反した社員に対して就業規則に基づく処置をする」の5点です。言わば、何重もの事実確認をした上で、応急措置と恒久措置の両方をとるべきだ、と書いたのです。ですから、決してフジテレビに対して、後講釈を述べるわけではありません。
結論を言えば、フジテレビの社長がこの通りに行動しておれば、今回のような究極のセクハラは発生しなかったはずです。また、これに沿った内容の説明を記者会見でしておれば、ここまで批判が高まることは無かったと思います。
では、今からどのような施策を打てば良いのか? まだ間に合うのか? について述べてみたいと思います。
事後の危機管理は「ダメージコントロール」と呼ばれています。すなわち、100あった信用やレピュテーションの低下を、何%で食い止めるのかという作業なのです。80%で収めるのか60%にしてしまうのかということです。
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