第2回固く門を閉ざした祈りの場 ウイグル族教授が残した「メッセージ」は

有料記事消えた聖地と研究者 中国・新疆ウイグル自治区の現場から

新疆ウイグル自治区=小早川遥平
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 中国・新疆ウイグル自治区カシュガルに、イスラム聖者廟(びょう)「マザール」の取材に訪れたのは6月末。砂漠にあるオルダム・マザールの取材を断念した後、レンタカーで再びカシュガル市街を目指していた。

 イスラム暦の1月を控え、かつてなら色とりどりの旗を手にオルダムを目指す巡礼者でにぎわっていた時期だろう。だが今、沿道で目に付くのは地図アプリで「反テロ訓練場」と表示される砂地や「習近平(シーチンピン)総書記と新疆各民族の心は一つ」と書かれた標語などだ。

 オルダム・マザールは衛星画像から消失した。しかしカシュガル市中心部にある、オルダム・マザールと関連が深い二つのマザールは現存していた。

 ウイグル族の女性研究者、ラヒレ・ダウト氏が2016年に記した論文によると、一つ目はオルダムと同じく、アリー・アルスラン・ハーンをまつるマザール。オルダムで仏教徒に討たれた後、首だけが市内に運ばれ、埋葬されたと伝えられる。かつてオルダム巡礼の際にウイグル族が立ち寄ったスポットの一つだった。

 だが、今は門は閉ざされ、一般人は立ち入ることができない。隣のホテルの敷地から墓のようなマザールの一部が確認できるが、正面からは「愛党愛国」と書かれたモスクのような建物しか見えない。

 住民にマザールのことを知っているのか尋ねてみた。

「愛国的でないと・・・」

 アリーがまつられていると知…

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この記事を書いた人
小早川遥平
上海支局長
専門・関心分野
中国社会、平和、人権

連載消えた聖地と研究者 中国・新疆ウイグル自治区の現場から(全3回)

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