カスタマーレビュー

  • 2010年7月5日に日本でレビュー済み
    プラス思考が隆盛の昨今ですが、多くの人は、一時的に気持ちだけ明るくして、ひどい現実はなりゆきに任せています。結果、いよいよ事態は悪化し、笑顔も引きつってきます。プラス思考が、サボりを心理的に正当化する理屈に堕しているのです。

    そこで著者は、「マイナス思考」をツールとして用いた生き方を説いています。リスクを直視し、実践的な対策を考え、具体的な努力をしていけば、失敗を避け、無難な人生を送れるだろう、というわけです。不安から備えを怠らず、震災を生き延びた、といったケースを想像してみれば、「不幸を切り抜けるだけ」でも素晴らしいことだと納得されると思う。

    一般に究極のマイナス思考は、「何をやっても無駄」という破滅的絶望だと思われています。しかし著者は、「現実は改善できる」と確信しています。その確信を支えるのは、マイナス思考に基づく日頃からの観察と分析、改善策の実践です。理性的なマイナス思考こそ、破滅的絶望の最も強力な予防策になるのです。

    とまあ、いちいち納得しながら読み進んだ私ですが、では今日から現実を改善すべく行動を開始するかというと……? 悲惨な領域に突入しない限りは、客観的に平均未満でも、現に主観的に幸福なら、努力するつらさが果実に見合わない。超えたいハードルの高さは、各自が決めればいいと思う。

    本1冊で、そうそう人生変わらないのは、著者も認めている通り。でも、こうした内容が整理された本があると安心できますし、何より本書は人間観察をテーマとしたエッセイ集として、単純に面白い。「あるある」と頷きながら楽しく読めますので、通勤の友や就寝前の読書用に、気楽に読める本をお探しの方にもお薦めです。
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