温室効果ガスのメタン削減へ水田中干し延長 国内排出約4割が稲作由来、農家に収益も

「中干し」期間中の水田を確認する新篠津村ICT農業研究会の高橋一志会長=2024年6月、北海道新篠津村
「中干し」期間中の水田を確認する新篠津村ICT農業研究会の高橋一志会長=2024年6月、北海道新篠津村
  • 「中干し」期間中の水田を確認する新篠津村ICT農業研究会の高橋一志会長=2024年6月、北海道新篠津村
  • 「中干し」のため一時的に水が抜かれた水田=2024年6月、北海道新篠津村
  • 二酸化炭素の排出削減量がクレジットとして認証されたことを示す「カーボンクレジット生成証書」を手にする農業生産法人「輝楽里」の水田管理担当・田沢優さん(左)と藤城正興常務=北海道江別市
  • 地元農家の人たちに「中干し」の期間を延ばす取り組みについて説明をするフェイガーの松谷達馬さん(左端)=北海道新篠津村
2025年01月08日 07時04分

 夏場に水田の水を一時的に抜き、土壌に酸素を与えて稲の成長を助ける「中干し」の期間を延ばす取り組みが北海道で広がっている。温室効果ガスのメタン排出を減らす目的で、削減分を売買する「カーボンクレジット」を通じて収益も見込める。クレジットの販売などを手がけるフェイガー(東京)の担当者松谷達馬さん(39)は「農家フレンドリーな仕組みを目指したい」と語る。(共同通信=羽場育歩)

 環境省によると、メタンは二酸化炭素(CO2)の28倍の温室効果があるとされる。国内の2022年度の排出量のうち、産業別では農業が82%を占め、その半数超が稲作由来だ。

 フェイガーによると、田に水を張ると嫌気性のメタン生成菌が活性化。中干しは6月中旬から8月上旬にかけて1週間前後行う農家が多いが、1週間延長すると菌の活動が抑制され、排出を約30%減らせるという。

 「手間がほとんどかからず環境にも良い」。2023年に取り組みを始めた江別市の農業生産法人「輝楽里(きらり)」の水田管理担当・田沢優さん(43)は話す。

 農家が中干ししている写真や記録を提出すると、フェイガーを介し、認証されたクレジット(排出枠)に応じた金額が支払われる。輝楽里は2023年に約65ヘクタールで実施し、約150万円を得た。藤城正興常務(47)は「機械の更新など、前向きな投資に使える」とメリットを力説する。

 隣の新篠津村では、参加する農家が2023年は1戸だけだったが、2024年は76戸に急増。生産者でつくる新篠津村ICT農業研究会の高橋一志会長(50)は「全体で取り組むことで村と環境のためになり、個々の収益にもつながる」と期待を寄せる。

 フェイガーの協力農家は全国でも増えているといい、松谷さんは「地場産のクレジットを地元企業に販売し、循環できる仕組みを作りたい」と話した。

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