2025年3月1日(土)

プーチンのロシア

2025年2月27日

本当に資源はあるのか問題

 さて、肝心の資源状況について、吟味してみたい。上述のとおり、トランプの要求は、当初のレアアースからレアメタル全般に広がっている模様なので、以下でもレアメタル全般を取り上げる。

 まず、重要な点として、現時点でウクライナにおいてレアアース、レアメタルが本格的な規模で採掘されている実例は乏しく、あくまでも地質学的なポテンシャルがあるというだけである。今回の騒ぎが持ち上がって以降、ウクライナの重要鉱物の分布状況を示した地図が各メディアによって取り上げられている。

 筆者の理解によれば、その資源マップはソ連時代の地質調査に基づく古くて大まかな地図であり、商業開発を進めるためには資金を投じてより本格的な探査や試掘を行うことが必要となるはずである。

 逆に言えば、ソ連時代から、資源の賦存は知られていながら、それなりの理由があって、開発には手が付いていなかったということになる。資源自体は存在しても、現実的に採掘可能なのか、商業的にペイするのかというのは別問題であり、実際に開発が進んでいなかったということは、それらの観点から微妙な資源であることが示唆される。

 レアアースに関して言えば、スカンジウムが中部のジトーミル州などに分布しているようだが、埋蔵量は国家機密とされており、不明である。セリウムは中部ポルタヴァ州で埋蔵が確認されている。

 そのほか、イットリウム、ネオジム、ジスプロシウムなどの資源があることが知られている。なお、ウクライナのレアアース資源の33%は、現在ロシアによって占領されている地域に所在するということである。

 ウクライナのレアアース以外のレアメタル資源の中で、言及されることが多いのが、バッテリーに欠かせないリチウムである。しかし、これも資源の存在が知られているだけで、採掘には至っていない。

 埋蔵量は一定程度あるらしく、欧州では最大の資源量と言われている。ただ、中部のキロボフラード州はともかく、東部のザポリージャ州、ドネツク州の鉱床はロシアの占領下にある。

 残念ながら、ウクライナのリチウム資源はすべて固い岩石中にあるとされ、採掘は難航するのではないか。ある専門家は、「トランプの働きかけでウクライナに新たなリチウム鉱山を建設する合意が成立したとしても、2040年までに開鉱する可能性は低い」との見解を述べている。世界のリチウム採掘の中心である南米のボリビア、チリ、アルゼンチンでは、塩湖からのリチウム採取が可能なわけで、ウクライナでの開発はコスト面で分が悪そうだ。


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