【GA応用編】独自のカスタムディメンションを作成・設定する方法とは[第54回]
トラッキングコードのカスタマイズの第3弾は、自分なりの分析軸「カスタムディメンション」を追加するためのトラッキングコードを解説する。
「カスタムディメンション」とは、標準のトラッキングコードでは収集しない情報を、Googleアナリティクスの新しい分析軸として追加したい場合に利用する機能だ。たとえば、次のような場合に利用する。
- ログインしたセッションとログインしなかったセッションを区別したい場合
- イベントトラッキングに4つ目、5つ目の分析軸を追加したい場合(通常はカテゴリ、アクション、ラベルの3つ)
- eコマーストラッキングで標準の3つ(商品カテゴリ、商品、SKU)以外の分析軸(サイズやカラーなど)を追加したい場合(eコマーストラッキングは次回詳しく解説する)
Webサイト特有の新しい分析軸をGoogleアナリティクスに登録したい場合に、このカスタムディメンションのトラッキングコードのカスタマイズを検討してみよう。
- 自社の目的に合った独自の分析軸をカスタムディメンションでGoogleアナリティクスに追加できる
- カスタムディメンションをレポートで確認する方法がわかる
カスタムディメンションでどんな軸を分析したいのか確認する
カスタムディメンションはさまざまな用途で使えるが、今回はユーザーにログインしてもらいサービスを提供するWebサイトで、かつ複数のユーザー区分を用意しているような場合を例に解説していく。たとえばユーザー区分に「無料会員」「標準会員」「プレミアム会員」の3種類があるならば、会員登録をしていない「その他」も含めてユーザー区分は4つ存在することになる。
こうしたサイトでは、それぞれの会員の特徴を分析して「どのようにすれば1つ上の会員になってもらうことができるのか」を分析したいだろう。そのような場合に、今回紹介するトラッキングコードのカスタマイズが有効になるわけだ。
区分を確認したら、カスタムディメンションを設定していこう。カスタムディメンションの設定には、「管理」画面で設定したうえで、さらにHTMLに貼り付けているトラッキングコードをカスタマイズするという2ステップが必要だ。
設定1「管理」画面からカスタムディメンションを追加する
「カスタムディメンション」を利用するためには、「管理」画面(図1赤枠部分)でその準備を行っておく必要がある。プロパティの列(図1青枠部分)の項目の「カスタム定義」(図1緑枠部分)をクリックして表示される「カスタム ディメンション」(図1茶枠部分)をクリックしよう。
そして上部に表示された「+ 新しいカスタム ディメンション」(図1黒枠部分)をクリックする。すると図2のような画面が表示される。
今回は図3のように指定しておくものとする。これで、「1つ目の新しい分析軸(カスタムディメンション)を使いますよ」という宣言をしたことなるのだ。
作業内容は、まずカスタムディメンションの名前を付ける。今回は「User Category」(図3赤枠部分)という名前を付与している。その下にある「範囲」はプルダウンを表示してその選択肢の中から「ユーザー」(図3青枠部分)を選択する(ほかの選択肢については後で解説する)。そして「作成」(図3緑枠部分)をクリックすれば終了だ。
するとトラッキングコードの例が表示される。トラッキングコードについては後で説明するので、ここでは無視して「完了」をクリックしよう。すると1つ前の画面に戻り、確かに1つ目のカスタムディメンション(図4赤枠部分)に今作成した「User Category」というカスタムディメンション名が登録されている(図4青枠部分)ことを確認できる。
なおカスタムディメンションは全部で20個まで作れるので、リストの下に「残り19個のカスタムディメンション」と薄く表示されているわけだ(図4緑枠部分)。「インデックス」という列が、何番目のカスタムディメンションかということを表している。
カスタムディメンションで設定している内容と意味
ここまでの設定内容の意味を補足しておこう。新しく作成したカスタムディメンションの名前「User Category」(図3赤枠部分)は、通常のレポートでいう「プライマリディメンション」で表示される文字列に該当する。
カスタムディメンションをどんなレポートで確認できるのかについては記事の最後でまとめて説明するが、新規に作成したカスタムレポートでいえば、プライマリディメンションのところに表示される文字列(図5赤枠部分)に相当する部分ということだ。そして、実際のユーザー区分の名前はそれぞれの値(図5青枠部分)として表示されることになる。
また、「カスタム ディメンションを追加」の画面(図2、図3)には、「範囲」を選択するプルダウンがある。「範囲」とはその分析軸の値を付与する範囲を示しているもので、「ユーザー」「セッション」「ヒット」「商品」の4種類がある。
具体的には「ユーザー」を選択した場合、一度該当する「ユーザー」に「プレミアム会員」というラベルを貼ったら、それ以降のその人の行動データにはそのラベルが生涯付き続けると考えてほしい。
「セッション」を選択した場合は、ある行為をした「セッション」全体にラベルが貼られる。セッション単位なので、その人が後日サイトを訪問したら別扱いになり、新しいセッションにはまた新たにラベルを付けるということだ。たとえば「ログインしたセッションとログインしなかったセッションを区別したい」といった目的の場合には、こちらを選択すればよい。
同様に「ヒット」であれば、あるイベントやあるページビュー、あるトランザクション(eコマースの売上データ)の1つ1つの点(ヒット)にだけラベルを付ける。「商品」はトランザクションを構成する明細の商品単位にラベルを付けるといった具合だ。つまり「どの『範囲』に識別子を付けておくか」ということを表している。
設定2カスタムディメンションを計測するトラッキングコードの記述例
次はいよいよトラッキングコードのカスタマイズの方法について解説しよう。
前段の準備の途中(図3の後)で、トラッキングコードの例として下記のような画面が表示されていた。スマホアプリ用(Android SDK、iOS SDK)のトラッキングコードも表示されているが、通常のWebサイト計測でカスタムディメンションを計測するトラッキングコードは一番上の「JavaScript(ユニバーサルアナリティクスのプロパティでのみ有効)」が該当する(図6赤枠部分)。
それでは詳しく説明していこう。記述の方法は何種類か存在するが、代表的な記述法で説明していく。簡単にいうと、下記1行のような形式の記述を通常のトラッキングコードに追記すればよい。
赤字を除く部分が固定の文字列で、赤字部分にはこのカスタムディメンションの値を指定する。つまり今回のユーザー区分「User Category」の例でいえば、「無料会員」「標準会員」「プレミアム会員」などの文字列に該当する部分に相当する。Aさんは「無料会員」、Bさんは「標準会員」などと、人によって与えられる値を動的に変化させる必要がある。
青字部分の「dimension1」は「カスタムディメンションの1つ目のことだよ」ということを明示している。今回の例では、「インデックス」(採番した番号)が「1」なので「dimension1」となる。「インデックス」が「2」のカスタムディメンションを指定する場合は、「dimension2」と記述するわけだ。
文字列はクォーテーションで囲う必要があるので、実際の記述は下記のようになる。「'無料会員'」の部分は、ユーザーの状態によって「'標準会員'」や「'プレミアム会員'」と出し分ける必要がある。
イベントトラッキング本体のフルの記述形式
最終的にトラッキングコード一式としてどう記述するかは、以下のとおりだ。標準のトラッキングコードに加えて、赤文字部分が追記した1行になる。追記は青文字部分の直前に記述すると覚えておこう。
では、このトラッキングコードの記述を、どのページに実装したらようのだろうか? これは計測対象サイトのページの作り方などによって変わるので1つの正解があるわけではないが、典型的な例を紹介する。記述そのものというよりも考え方を参考にして、実際に実装するサイトやページの事情に即して、調整していただきたい。
今回は「範囲」を「ユーザー」としたので、一度ユーザー区分のラベルを貼ることができれば、その後はずっと覚えておいてくれる。とすると、ユーザー登録を完了したタイミングでこのユーザー区分を付与するのがよいだろう。つまりユーザー登録完了ページに含まれるトラッキングコードに、1人1人のユーザー区分に応じて変化した追加の1行を動的に加えるようにプログラミングしてもらうのだ。
ただし、利用しているブラウザのクッキーをユーザーが削除したり期限切れになったりログアウトしたりしたら、情報がクリアされてしまうことに注意が必要だ。そのためユーザーがログインするたびにこのカスタマイズを施したトラッキングコードを出すといった工夫も必要だ。
カスタムディメンションをレポートで確認する3つの方法
最後に、実際にどのようにレポートで確認したらよいのかを説明しよう。カスタムディメンションは、その名のとおり自分でカスタマイズしたディメンション(分析軸)なので、標準のレポートのどこにも「カスタムディメンションで分析」といったメニューは存在しない。レポート上で活用するための方法は次の3つがある。
- 標準のレポートのセカンダリディメンションとして表示させる
- セグメント機能の条件として利用し、絞り込んだり比較したりする
- ディメンションと指標を自由に組み合わせられる「カスタム レポート」のディメンションで表示する
セカンダリディメンションで選択する
図7は[ユーザー]>[行動]>[新規とリピーター]レポートにセカンダリ ディメンション(図7赤枠部分)を適用しようとしている画面だ。
このプロパティでは、カスタムディメンション「User Category」を作成しているので、「セカンダリ ディメンション」にある「カスタム ディメンション」(図7青枠部分)の選択肢に、新規作成したカスタムディメンションの名前「User Category」が表示されている(図7緑枠部分)。
このようにして既存のレポートのセカンダリディメンションに追加すれば、分析軸として表舞台に出して使うことができる。
セグメントの条件として使用する
2つ目は、さまざまなレポートにこのカスタムディメンションの条件で絞り込んだセグメントを適用する使い方だ。セグメント機能を使えば、該当の条件に絞り込んだり、ユーザー区分の異なる2つのセグメントを同時に表示して比較したりすることが可能になるので、ユーザー区分別の行動特性の違いや成果への貢献度の違いなども確認できる。
セグメントを適用したいレポートを表示した上でセグメント機能を起動し(図8)、「+ 新しいセグメント」(図8赤枠部分)をクリックする。
表示されたセグメント ビルダーの「条件」(図9赤枠部分)の指定で、カスタムディメンション(図9青枠部分)の中の「User Category」(図9緑枠部分)を選択する。
フィルタは「ユーザー」「含める」(図10赤枠部分)とし、その下は「User Category」「完全一致」「標準会員」(図10青枠部分)と指定すれば、「User Category」が「標準会員」のユーザーに絞り込むセグメントが作成される。「標準会員の行動」(図10緑枠部分)などわかりやすいセグメントの名前を付けて「保存」(図10黒枠部分)すればいつでも呼び出せるようになる。
カスタムレポートを作成する
最後は、自由にレポートの形式を作成できる「カスタム レポート」を作成する方法だ。カスタムレポートの作成方法については、後日別途連載の中で解説する予定なので詳細はそちらを参照してほしい。ここで簡単に説明しておくと、「表示するディメンションと指標の組み合わせを自由に選択できる」のがカスタムレポートだ。
図11の例は、ディメンションに「User Category」を指定し(図11赤枠部分)、「ユーザー」「セッション」「ページビュー」を指標に指定した(図11青枠部分)フォーマットのカスタムレポートだ。それぞれのユーザー区分の行動の量をざっくりと比較したレポートになるというわけだ。
このようにして、新しく作成したカスタムディメンション「User Category」を分析に活用することができるようになる。
📝筆者が継続的に主催している講座群(Google アナリティクス中心)に興味がある方はこちらをご確認ください。
http://xfusion.jp/train.html
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