Sports otto!
女子バレーチームGM、鬼コーチ、うなぎ料亭社長…引退した人気選手・熊本比奈さんの現在地「もっと、もっと上を目指せる」
2024.07.23 11:13(Updated:2024.08.06 13:16)
バレーボールの国内リーグは今秋から最高峰の「SVリーグ」と「Vリーグ」に再編されてスタートする。下部に相当するVリーグのカノアラウレアーズ福岡で、今季からゼネラルマネジャー(GM)を務める熊本比奈さん(28)は選手から親しみを込めて「鬼コーチ」と呼ばれている。Vリーグ3部(V3)で戦った2023~24年シーズンをキャプテンとエースアタッカーで引っ張り、引退した現在はフィジカルコーチ的な役割も担っているからだ。現役時代からSNSで積極的に情報発信するなど、人気面でもカノアの「顔」として精力的に活動してきた。変わらぬ愛情をチームに注ぎ続ける情熱の源泉に迫った。
小学6年生だった07年。熊本は西日本新聞の地域版「僕の夢 私の夢」のコーナーで「やさしい何でも相談にのれるかんごしになりたい」とつづった。思い描いた夢は形を変え、バレーボールとともに随分と長い時間を過ごしてきた。それでも「人のために」との心根は変わらない。
Vリーグ1部(V1)のトヨタ車体クインシーズ(現クインシーズ刈谷)を皮切りにVリーガーとして10シーズンを過ごし、計99試合に出場した。「地元の福岡を盛り上げたい」との理由で加入したカノアでは、経営問題や練習場の確保など数々の困難に直面。森田亜貴斗監督(42)やチームメートらと乗り越えた。
昨季V3に新規参入し、女子のVリーグチームがなかった福岡の地に希望の光をともした。膝を4度手術するなど、現役時代はけがとも闘ってきた。「選手をやりきった感もありました。でも、それだけが引退の理由ではありません」。熊本は真っすぐな目で語り始めた。
「主将という立場をいただいてから、チームを俯瞰(ふかん)して見るようになり、うちに一番『足りない』と感じたのがスタッフの数でした」。特に実感したのがV1のチームとも相まみえた昨年のサマーリーグだった。指揮を執るのはもちろん、日々の練習メニューの考案から試合前のアップまで全てをつかさどる森田監督の負担を軽減したいと思うようになった。
「今を勝つことも大事ですが、カノアを良くしたい。カノアはもっと、もっと上を目指せるチームです。ただ、選手の立場で監督を支えるのは難しい。だったら、フロントだと思い至りました」