障害をもつ人が日常生活を送る上での困りごとを解決するため、バリアフリーやユニバーサルデザインの実現など、さまざまな取り組みが進められている。ICTやAIといったテクノロジーを使った支援が話題になることが多く、筆者もこれまでに視覚障害者を支援するIT技術を紹介してきたが、従来からある「人」による支援も、当事者やその家族に知られていないことが多いらしい。
人による支援の一つに「同行援護」がある。視覚障害によって移動に困難がある人の外出に同行して、目的地に向かうために必要な情報提供や安全の確保をしたり、外出先での情報提供や代読・代筆を行うなど、必要とされる援助をする障害総合支援法に基づく障害福祉サービスだ。対象になるのは余暇活動で、買い物や散歩、外食、スポーツ活動、映画やコンサート鑑賞など多岐にわたる。通学や通勤など経済活動に関わる外出には使えないが、日常生活におけるさまざまな「当たり前」の場面で、ガイドヘルパーと呼ばれる有資格者による援助を受けることができる。
自身の母親が視覚障害者であることから、「同行援護事業所おとも」を立ち上げた株式会社おとも代表取締役の鈴木貴達さんによると、同行援護を知らない当事者が少なくなく、また受けようとしても時間がかかるなどして断念する人もいるという。また、ガイドヘルパー不足も深刻で、同行援護から撤退する福祉事業者も少なくない。こういった状況を打破すべく、鈴木さんは2021年にマッチングアプリ「ガイドヘルパーズ」をリリースした。
「マッチングアプリで視覚障害の当事者が利用しやすくなるだけでなく、ガイドヘルパーは自分の好きな日程や時間でできる、魅力的な仕事になるので担い手不足の解消にもなれば」と語る鈴木さんに話を聞いた。
「同行援護」を利用する当事者はたった1割ほど
――同行援護はいつ頃からある支援制度なのでしょうか。
鈴木貴達氏(以下、鈴木) 2006年に全面施行された障害者自立支援法で、ホームペルプおよびガイドヘルプサービス(介護給付と地域生活支援事業)と移動支援(地域生活支援事業)がありました。その移動支援の中から重度視覚障害者に対する個別支援として2011年に創設された制度が「同行援護」です。比較的、若い制度と言えますね。
――2017年同行援護事業所おともを設立されましたが、どのようなきっかけで始められたのでしょうか。
鈴木 私の母はロービジョンの視覚障害者なのですが、このような制度があることを家族である私はまったく知りませんでした。たまたま福祉関係の人と名刺交換をしたことからガイドヘルパーというものを知り、まずは自分で資格を取った後、同行援護事業を立ち上げました。
ロービジョンの視覚障害者は一人で歩ける人も多いですが、買い物の際に品物や値段が見えない、電車に乗ることはできるけれども案内板が見えないので行き先や乗り換えがわからない、役所などで書類記入ができないといった不便があります。全盲の方は移動も難しいですね。ガイドヘルパーによる同行援護を受けた利用者さんからは数年ぶりにカフェに行けた、電車に乗って遠出ができた、宿泊を伴う旅行に行けて嬉しかったなどと聞きます。