人類初の月面着陸は、1969年の米国のアポロ11号でした。あれから半世紀以上の時を経て、人類は再び月面を目指そうとしています。米国を中心に52カ国が参加する「アルテミス計画」です。今度は単に人類を再び月面に立たせようというのではなく、月で持続的な活動を続けることが目標。そして、月を拠点に火星探査を行うことも目指しています。この1月16日には事業に参画する宇宙開発企業で、イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」社が史上最大のロケットも打ち上げました。アルテミス計画にGOサインを出したトランプ氏が再び大統領に就任するのも間近。それを機に壮大な「アルテミス計画」をやさしく解説します。
トランプ氏、中国の宇宙開発に対抗
人類として初めて月面に降り立ったアポロ11号のニール・アームストロング船長はその瞬間、「これは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩だ(That's one small step for [a] man, one giant leap for mankind.)」と、ヒューストンの管制センターに伝えてきました。
米国時間(東部標準時)で1969年7月20日午後10時56分。日曜日の深夜でした。
この世界的な大イベントは世界中にテレビで衛星中継され、約6億人が視聴したとされています。日本では、月曜日午前11時56分がその瞬間でした。NHKが全国に中継し、多くの学校では授業を中断して中継を見せたことなどから、高齢者には「人類による月への第一歩」を記憶している方も多いに違いありません。
米国の宇宙探査はその後、スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故(1986年)や予算不足などで足踏みしました。しかし、経済発展を続ける中国やインドが宇宙開発競争に本格的に参入してきたことなどを受け、米国で再度、宇宙熱が高まります。
そして、トランプ氏が大統領1期目の2017年、「宇宙政策指令第1号」に署名。米国は宇宙分野で再び強いリーダーシップを発揮すべきだとして、米航空宇宙局(NASA)を軸として計画が動き始めたのです。

これがアルテミス計画です。「アルテミス(Artemis)」とは、ギリシャ神話に登場する「月の女神」。アポロ計画の名称のもとになった太陽の神「アポロン(Apollōn)」は双子の兄です。アルテミス計画では、女性を月に送り込むことも想定されており、それが「アルテミス」という名称の採用につながったのかもしれません。
では、アルテミス計画の中身をじっくりと見ていきましょう。