織田作之助賞
織田作之助賞(おださくのすけしょう)は、「織田作之助賞実行委員会」(大阪市、大阪文学振興会、関西大学、パソナグループ、毎日新聞社(50音順))が主催する文学賞である。大阪生まれの作家・織田作之助(1913年(大正2年)10月26日 - 1947年(昭和22年)1月10日)の生誕70年を記念して、1983年(昭和58年)に創設された。[1]
概要
[編集]第1回(1984年)から第22回(2005年)までは未発表の作品を受け付ける公募新人賞としておこなわれ、受賞作は『関西文学』に掲載された。第15回作品より文藝春秋の協賛があり『文學界』に掲載された。
第23回(2006年)より制度を変更し、単行本を対象とする「大賞」と、公募新人賞としての機能を残した「青春賞」を授賞することとなった。
「大賞」は第26回(2009年)までは舞台、登場人物、題材などが関西(近畿2府4県)に関わりのある小説・随筆・評論・評伝の単行本を授賞対象としていた。第27回(2010年)以降は、その限定をはずし、対象作品を「新鋭・気鋭の小説」とするようになった。受賞者には賞金100万円が与えられる。
「青春賞」は未発表の短編小説を対象とするが、作者の年齢が各年度の締切日時点で24歳以下であることを応募条件としている。受賞者には賞金30万円が与えられ、第31回(2014年)からは、受賞作が文芸誌『三田文学』に掲載されることになった。第31回(2014年)~第35回(2018年)は作者の年齢が締切日時点で18歳以下の作品を対象に「U-18賞」を設けた。第36回(2019年)から「U-18賞」を廃止し、作者の年齢が締切日時点で18歳以下である作品のうち優秀と認められたものに「奨励賞」を授与している。
選考結果の発表は、『毎日新聞』紙上および毎日新聞社ウェブサイト上でおこなわれる。
制度変更前の受賞作一覧
[編集]第1回から第10回
[編集]- 第1回(1984年) - 該当作なし 入賞、柏木薫
- 第2回(1985年) - 中条孝子 「どれあい」
- 第3回(1986年) - 福岡さだお 「犬の戦場」
- 第4回(1987年) - 長谷川憲司 「浪速怒り寿司」
- 第5回(1988年) - 田中香津子 「気流」
- 第6回(1989年) - 合田圭希 「にわとり翔んだ」
- 第7回(1990年) - 笠原靖 「夏の終り」
- 第8回(1991年) - 鈴木誠司 「常ならぬ者の棲む」
- 第9回(1992年) - 柏木晴彦 「切腹」
- 第10回(1993年) - 大西功 「ストルイピン特急-越境者杉本良吉の旅路」
第11回から第20回
[編集]- 第11回(1994年) - 該当作なし
- 第12回(1995年) - 植松二郎 「春陽のベリーロール」
- 第13回(1996年) - 該当作なし
- 第14回(1997年) - 小林長太郎 「夢の乳房」
- 第15回(1998年) - 上川龍次 「ネームレス・デイズ」
- 第16回(1999年) - 水木亮 「祝祭」
- 第17回(2000年) - 該当作なし
- 第18回(2001年) - 小森隆司 「押し入れ」
- 第19回(2002年) - 三田華 「芝居茶屋」
- 第20回(2003年) - 該当作なし
第21回から第22回
[編集]制度変更後の大賞受賞作一覧
[編集]第23回から第26回(対象作品は「関西に関わりのある小説・随筆・評論・評伝」)
[編集]- 第23回(2006年) - 柴崎友香『その街の今は』、庄野至『足立さんの古い革鞄』
- 第24回(2007年) - 西加奈子『通天閣』、小玉武『「洋酒天国」とその時代』
- 第25回(2008年) - 玉岡かおる『お家さん』
- 第26回(2009年) - 中丸美繪『オーケストラ、それは我なり-朝比奈隆 四つの試練』
第27回以降(対象作品は「新鋭・気鋭の小説」)
[編集]- 第27回(2010年) - 金原ひとみ『トリップ・トラップ』
- 第28回(2011年) - 津村記久子『ワーカーズ・ダイジェスト』
- 第29回(2012年) - いしいしんじ『ある一日』
- 第30回(2013年) - 小山田浩子『工場』
- 第31回(2014年) - 朝井まかて『阿蘭陀西鶴』、藤谷治『世界でいちばん美しい』
- 第32回(2015年) - 堂垣園江『浪華古本屋騒動記』、三浦しをん『あの家に暮らす四人の女』
- 第33回(2016年) - 崔実『ジニのパズル』
- 第34回(2017年) - 古谷田奈月『リリース』、東山彰良『僕が殺した人と僕を殺した人』
- 第35回(2018年) - 井上荒野『その話は今日はやめておきましょう』
- 第36回(2019年) - 窪美澄『トリニティ』
- 第37回(2020年) - 温又柔『魯肉飯のさえずり』
- 第38回(2021年) - 岸政彦『リリアン』[2][3]
- 第39回(2022年) - 滝口悠生『水平線』
- 第40回(2023年) - 乗代雄介『それは誠』
- 第41回(2024年) - 町屋良平『生きる演技』
制度変更後の青春賞受賞作一覧
[編集]第23回から
[編集]- 第23回(2006年) - 該当作なし 佳作:久野智裕「一セントコインの女」、土谷三奈「リフレインリフレイン」
- 第24回(2007年) - 緒野雅裕「天梯」 佳作:宮規子「魚は水の中」
- 第25回(2008年) - 小笠原由記「Innocent Summer」 佳作:深山あいこ「ユメノシマ」
- 第26回(2009年) - 島谷明「マニシェの林檎」 佳作:木田肇「換気扇」
- 第27回(2010年) - 香川みわ「おっさん」 佳作:森田弘輝「逃げるやもりと追うやもり」
- 第28回(2011年) - 柊「コンシャス・デイズ」 佳作:中野沙羅「フリーク」
- 第29回(2012年) - 滝口浩平「ふたりだけの記憶」 佳作:未来谷今芥「アイランド2012」
- 第30回(2013年) - 藤原侑貴「通りゃんせ」 佳作:岡田美津穂「橋の下と僕のナイフ」
- 第31回(2014年) - 柳澤大悟「ジンジャーガム」 U-18賞:中原らいひ「池から帰るふたり」
- 第32回(2015年) - 犬浦香魚子「はきだめ」 U-18賞:烏月にひる「パチンコ玉はUFO、ブルーのビー玉は地球」
- 第33回(2016年) - 中野美月「海をわたる」 U-18賞:浅田紗希「思い出屋と私」
- 第34回(2017年) - 馬場広大「みかんの木」 U-18賞:吉田菜々穂「サイコロバレンタイン」
- 第35回(2018年) - 川勝浩人「ママの犬」 U-18賞:織田香音「夏が死ぬ」
- 第36回(2019年) - 丸井常春「檻の中の城」 奨励賞:楊美裕華「ざまぁおぼろげ」
- 第37回(2020年) - 三浦育真「夜明珠」 奨励賞:土岐咲楽「木香」
- 第38回(2021年) - 松尾晴「母を迎える」
- 第39回(2022年) - 菊池フミ「浴雨」
- 第40回(2023年) - 石澤遥「とんぼ」
- 第41回(2024年) - 風吉サツキ「26分間のタユタイ」
選考委員
[編集]- 第1–4回 谷沢永一、富士正晴、藤沢桓夫
- 第5–6回 小松左京、藤沢桓夫、谷沢永一、杉山平一
- 第7–13回 大阪文学振興会
- 第14–15回 三枝和子、後藤明生、杉山平一
- 第16–18回 三枝和子、杉山平一、辻原登
- 第17–22回 川上弘美、杉山平一、辻原登
- 第23–25回 河田悌一、河野裕子、辻原登、芳賀徹
- 第26回 河田悌一、河野裕子、高樹のぶ子、辻原登、芳賀徹
- 第27–29回 稲葉真弓、河田悌一、玄月、田中和生、辻原登
- 第30回 稲葉真弓、河田悌一、玄月、田中和生、辻原登、湯川豊
- 第31–33回 河田悌一、高村薫、田中和生、辻原登、湯川豊
- 第34–35回 重里徹也、芝井敬司、高村薫、田中和生、辻原登、湯川豊
- 第36–39回 いしいしんじ、重里徹也、芝井敬司、高村薫、田中和生
- 第40–41回 いしいしんじ、江南亜美子、重里徹也、芝井敬司、古川日出男
青春賞選考委員
[編集]- 第23–26回 玄月、澤井繁男、堂垣園江
- 第28–31回 堂垣園江、増田周子、吉村萬壱
- 第32–38回 柏木治、堂垣園江、吉村萬壱
- 第39回 堂垣園江、増田周子、吉村萬壱
- 第40–41回 堂垣園江、藤野可織、増田周子
脚注
[編集]- ^ 大阪文学振興会|織田作之助賞
- ^ “第38回織田作之助賞選考経過 醸す雰囲気に高い評価 会話や風景が響き合う岸作品”. 毎日新聞社. 2021年12月30日閲覧。
- ^ “織田作之助賞に「リリアン」”. 朝日新聞社. 2021年12月30日閲覧。