疝気の虫
疝気の虫(せんきのむし)は古典落語の演目の一つ。原話は、寛政8年に出版された笑話本・『即当笑合』の一遍である「疝鬼」。
主な演者には、初代三遊亭遊三や5代目古今亭志ん生、桂雀々などがいる。
あらすじ
[編集]変な虫を見つけたお医者。つぶそうとすると、虫が口をきく。その虫の告白によると、彼は『疝気の虫』といい、人の腹の中で暴れ、筋を引っ張って苦しめるのを職業にしているという。そのお医者は「疝気」の治すことを研究しており、疑いつつも虫との会話を続けると、虫が自身のことを告白し始める。
などといったことを聞いたところでお医者は起床し、夢だったと分かる。そこに丁度、疝気に苦しんでいる人から往診の依頼が入り、お医者は夢で聞いたことを活用させて治療を試みる。疝気にかかった主人の妻であるお内儀にお医者は、主人に蕎麦の匂いをかがせながら自ら蕎麦を食うように言う。疝気の虫は蕎麦が食えると思って消化管を遡ったものの、見当違いで蕎麦を食べているのはお内儀だったと分かる。たちまち虫は主人の口から飛び出し、向かいにいるお内儀の体内に飛び込んだ。痛がるお内儀にお医者は唐辛子を取り入れろと言う。そうして入ってきた唐辛子に虫は急いで逃げ込もうと、一目散に腹を下る。しかし女性であるお内儀の体内に逃げ場を見つけられず、そこで噺家は首をひねり、キョロキョロしながら退場する。
概要
[編集]疝気とは、当時泌尿器を患部とする病気の総称。
落ちとしてはこの他に、「あらら、別荘がないぞ」と虫に語らせるもの、別荘がなかったと説明して終わるものなどもある。
メディアでの披露
[編集]性器の形状が噺を成立させる上で必要不可欠な要素となっているという特性上メディアでの披露は多くない。1949年上映の新東宝制作の映画「銀座カンカン娘」で、落語家を演じた上記の5代目志ん生が、「疝気の虫」を縁側で稽古する場面が登場する。
注釈
[編集]- ^ 噺の中では「別荘」と婉曲的に表現される。