コンテンツにスキップ

春運

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2009年の春運の時期の北京西駅構内

春運(しゅんうん、中文表記: 春运)は、中華人民共和国春節と呼ばれる旧正月のころに交通量が非常に多くなる現象。一般に旧正月の前の15日から後25日頃までの約40日にかけて起きる。春運期間に移動する旅客の延べ人数は、中国の人口を超えていて、2008年には20億人を超えていたとの報道もあり[1]、人類最大の毎年起こる人口移動だといわれている[2]。過度な集中を避けるために政府も期間中に出稼ぎ労働者の移動を禁ずる法令を出すなど対策を講じているが、解消には至らず重大な社会問題になっている。日本で言うところの「帰省ラッシュ」に近い。

原因

[編集]
2014年春節時期、K680次列車の硬座車輌の様子

改革開放政策によって、自主就業を掲げて雇用の流動化を図ったため、仕事の多い地区に移住した人口が、年末の帰郷のために一斉に移動すること(中華人民共和国では家族で年を越すのが慣わしである)が大きな原因とされている。

労働者のほかには、この時期に冬休みになる大学生や旅行者、人口に見合う交通網が整っていないことも一因である。

性質

[編集]
  • 都市間の移動が主である。
  • 主に陸路に圧力がかかる。
  • 年末に都会から田舎の路線の移動が増す→元日前後に移動が収まる→年頭に田舎から都会の路線の移動が増す。

関連の問題

[編集]
  • 切符の価格の高騰と黄牛:この時期になると切符の値段が高騰する。私営の貸切バスと私営の小型バスの切符の値段が平日より高騰するが、国営の汽車とバスなど交通機関の切符の値段は変わりがない。これには経営を独占している業者のつりあげ(壟断)があるといわれる。また人員を組織して電話を使い大量に切符を予約して客に高値で売りさばく黄牛(ダフ屋)と呼ばれる犯罪が横行する。本物だけでなく偽造の切符も混じって売られるので検査や見つかったときの対応などでその分負担が増す。対策はとられているが職員と結託している場合もあり効果はあがっていない。
  • 治安:人が多くなるのでそれにつけいった窃盗、強盗、詐欺などの犯罪や危険物(可燃品など)の持ち込みなどが増える。また業者が利益をあげようと便を水増ししたり定員を超える客を乗せたり職員を酷使したりするため事故が起こりやすい。

切符の購入の方式

[編集]

期間中は鉄道に限って予約に大きく異なる方式が取られている。駅での販売を減らすために学校や人員の多い工場では集団予約、一般には電話インターネットの予約を行う。また搭乗が可能な日数が延長される。(例えば珠江三角洲地区では四日→十日)電話では予約が殺到する。(2005年深圳地区では一時間あたり200万人超、広州地区では2月1日に1991万人を記録した)2005年1月16日から2月7日にかけて深圳地区で予約が取れたのは46.5万枚、一日あたり3.1万枚、人数の比率では82%であった。

指定した地点で販売する地域もあるが、そこに行くための交通が渋滞すること、来たが切符がもらえないなどの事情もあってこの方式は減少している。

集中する地域

[編集]

年末に広東北京上海、年頭に成都重慶武漢南昌阜陽などに集中する。

輸送量一覧表

[編集]

表は1994年から始まっているが春運がこの年に始まったのではない。

春運期間 総輸送客数
(億人)
鉄道乗客数
(億人)
道路利用者数
(億人)
水運乗客数
(万人)
旅客機乗客数
(万人)
備考
1994年   12.2          
1995年   14.28          
1996年   16.2          
1997年   17.4          
1998年   18.2          
1999年   14.4          
2000年   16.16          
2001年 1月9日-2月17日 16.6        
2002年 1月28日-3月8日 17.4 1.3 15.86 2430 725  
2003年 1月17日-2月25日 18.19 1.3 16.56 2400 870  
2004年 1月7日-2月15日 18.9 1.37 17.17 2600 1050  
2005年 1月25日-3月5日 19.5 1.4 17.7 2760 1248  
2006年 1月14日-2月22日 20.42 1.49 18.77 2800 1760  
2007年 2月3日-3月14日 22.545 1.56 20.5 2850 2000  
2008年 1月24日-3月2日 22.628 1.96 20.17 2878 2100 雪害が発生
2009年 1月11日-2月19日 23.59 1.92 21.1 3089 2572  
2010年 1月30日-3月10日 25.57 2.04 22.9 3357 2902  
2011年 1月19日-2月27日 28.61 2.21 25.73 3500 3220  
2012年 1月8日-2月16日 31.56 2.21 28.47 4245.1 3374  
2013年 1月26日-3月6日 34 2.4047 31 4308 3810  
2014年 1月16日-2月24日 33.23 2.67 32.6 4344.8 4407  
2015年 2月4日-3月16日 28.09 2.95 24.22 4284 4914  
2016年 1月24日-3月3日 29.1 3.26 24.95 4260 5410  
2017年 1月13日-2月21日 29.8 3.57 25.2 4397.6 5854.8 [3]
2018年 2月1日-3月12日 29.7 3.82 24.8 4322 6541 [4]
2019年 1月21日-3月1日 29.8 4.07 24.6 4076.9 7288.2 [5]
2020年 1月10日-2月18日 14.76 2.1 12.11 1689.1 3839 [6]コロナウイルス感染症が流行
2021年 1月28日-3月8日 8.7 2.2 6 1533.8 3536.8 [7]
2022年 1月17日-2月25日 10.6 2.53 7.5 1282 3982 [8]
2023年 1月7日-2月15日 15.95 3.48 11.69 2245.2 5521.4 [9]

脚注

[編集]

関連項目

[編集]