コンテンツにスキップ

寄合百貨店

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

寄合百貨店(よりあいひゃっかってん)は、複数の小売店が出店する商業施設形態の一つである。

概要

[編集]

一つの店舗建物の中に複数の小売店が出店する共同店舗で[1][2]、中小商業者が5人以上参加して[3]事業協同組合を作って[3][1]その中で全組合員が営業し[3]、全体で百貨店のような[1]対面販売中心の[2]総合小売店の機能を持たせた商業施設形態である[1][3]

この形態に、セルフサービス方式を導入してスーパーマーケット方式による販売を行なうものについては「寄合スーパー」と分類される[2][3]

また、中小商業者が共同で設置する百貨店形式の店舗であっても、各組合員が営業するのではなく共同出資した法人が営業をする場合には「協業百貨店」とされ[3]、そのうちセルフサービス方式を導入してスーパーマーケット方式による販売を行なうものについては、「協業スーパー」に分類される[3]

一つの店舗建物の中に複数の小売店が出店する共同店舗という形態で、かつ対面販売中心であるという点では「小売市場」もあるが[2]、「小売市場」は小規模で[4]やや旧式の運営形態となっているのに対して[2]、「寄合百貨店」は百貨店のような大型店舗に[4]商品部(業種)別の売り場構成などを[5]導入して近代化が図られている点が異なるとされている[4]

百貨店のような対面販売中心の[2]総合小売店…という店舗形態のため、入居する店舗の業態も服飾雑貨などの買い回り品を扱うものが多くなる傾向にあり[5]、食品など最寄り品が主体となる「寄合スーパー」とはその点でも異なっている[5]

なお、ショッピングセンターは、小売業や不動産業などの大手企業が開発・運営会社(ディベロッパーに)となって統一的に計画し[4][1]、各小売店はその一部を賃借して出店する形態が一般的で、運営主体との関連性が異なるものとされている[1]。 ただし、広義のショッピングセンターの定義には「寄合百貨店」も含まれる場合がある[6]

全国大型小売店総覧などにおける定義

[編集]

「全国大型小売店総覧」などを発行する経済雑誌発行会社の東洋経済新報社では、百貨店、スーパー、食品スーパー、ホームセンター、専門店、ショッピングセンターの6業態を定義した上で、これら6業態に該当せず、かつ、核店舗がないか、あっても全体に占める割合が低く、複数の業種の店舗が多数集まったものとしている[7]。 このため、先述の定義よりは幅広い大型小売店がこの中に含まれることになっているが、6つの業態定義の明確なもの以外を指す「その他の複数の業種の店舗が多数集まったもの」になっており、厳密な業態の定義とはなっていない。

駅ビル内の商業施設

[編集]

第2次世界大戦後、旧日本国有鉄道の駅舎(駅ビル)の改築工事費を地元が一部負担して代わりに民衆駅内に設置した複数の店舗が入居した商業施設(○○ステーションデパートなど)は[8]、この業態の1つとみなされる[5]ことが多く、「全国大型小売店総覧」などでもそのように分類されているものがある[9]

ただし、釧路ステーションデパートのように協同組合が運営していた[10]ケースもあるが、株式会社による経営の場合には組合による運営という最も狭義の定義からは外れると見ることもできる。 しかし、開設時の岐阜ステーションデパートのように株式会社であっても出資者と出店者が完全に一致して個別に営業する場合もあり[11]、この場合は法律上の法人形態こそ組合形式ではないものの実質的には組合形式の運営に近く、狭義の「寄合百貨店」とみなすことも可能である。

なお、国鉄分割民営化などにより、大都市圏などでは旧民衆駅を民営化後のJR各社が買収して完全に支配下に入れたり解体して新ビルを建設した例も多いほか、地方では自家用車の普及による車社会化の進展によって駅ビルの集客力の衰えで空き店舗化する事例もあり、中小小売業者の出資による本来の寄合百貨店形態の駅ビルは減少傾向にある。

百貨店法の規制除外と疑似百貨店問題の発生

[編集]

百貨店に代表されるような大手企業による影響を抑制して中小小売業者の事業機会の確保を目的とする観点から[12]、「寄合百貨店」のような協同組合などによる共同店舗を規制対象外とするため[12]、1956年(昭和31年)6月に施行された(第2次)百貨店法では[12]、(第1次)百貨店法のような建物全体での店舗面積を基準とする「建物主義」を採用されず[12]、企業毎店舗ごとに基準以上の売場面積である場合に規制の対象とする「企業主義」が採用された[12]

ところが、量販店(総合スーパーなど)がこの「企業主義」を逆手にとり[12]、同一建物内に取扱品目やフロア毎に別会社とした形式的には共同店舗とすることで店舗面積を基準面積未満とすることにより[12][13][14][15]、外観的にも実質的にも一体のものながら百貨店法の適用を免れる「疑似百貨店」と呼ばれるものを出店して問題となった[12][13][14][15]

そのため、「疑似百貨店は百貨店法を無意味化するものであるから、規制すべきである」との要求が百貨店と中小小売業者の双方から出されたものの[12]、「大規模小売業の消費者にとっての利益や流通近代化」などを理由に事実上黙認され[12]、1974年(昭和49年)3月1日に百貨店法に代わって施行された大規模小売店舗法の規制が始まるまでそうした状況が続いて総合スーパーなどが急速に発展する結果となった[12][15]

主な寄合百貨店

[編集]

協同組合

[編集]

こちらが本来(狭義)の寄合百貨店である。

寄合百貨店

[編集]
  • 丸合 やよいデパート(鳥取県米子市) 戦後の協同組合方式による寄合百貨店の草分け的存在だった。1947年「よなごマーケット」開設。1954年「協同組合丸合百貨」設立。ショッピングセンター化。1970年「やよいデパート」開店。一時ダイエーFCとなった。2010年丸合株式会社化。[16] 2013年7月31日、やよいデパートの核だった丸合撤退のため一時閉店。11月14日 ディスカウントスーパー「ディオマート」を核にリニューアル・オープン。[17]
  • フジサワ名店ビル(藤沢市、売場面積約11,662m2[9]、1971年(昭和46年)11月[9]
  • あいタウンアベル(邑智郡邑南町[18]、売場面積約2,316m2[18]

寄合スーパー

[編集]
  • 21条百貨店(協) [19]
  • (協)丸銀百貨店 メルシーマルギン(京都市) テナント数16。スーパーマーケット形式。[20]
  • (協)日南ショッピングセンターサピア

企業系

[編集]

百貨店、スーパー、食品スーパー、ホームセンター、専門店、ショッピングセンターのどれにも該当せず、核店舗がないもの[7]。広義にはその一種のファッションビルも数多く存在する。

流通系

[編集]

元百貨店・量販店の業態転換、または、後継店舗

[編集]

前身店舗の閉鎖・撤退によるものが多い。

鉄道/バス会社系

[編集]

駅ビルも参照。(SC)印が対象。以下は駅ビル以外に店舗があるもの。

不動産・独立系など

[編集]
不動産・デベロッパー・専門店ビル

 ・ コレド日本橋[9]東急百貨店

市街地再開発ビル(公社・第三セクター系)
地方資本系専門店ビル

過去にあった寄合百貨店

[編集]

関連項目

[編集]

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f 中小企業診断協会 『中小企業の法律・施策用語小辞典 昭和63年版』 同友館、1988年9月1日。ISBN 978-4496014888
  2. ^ a b c d e f 加藤誠一,水野武,小林靖雄編集 『組織問題と中小企業』 同友館、1980年3月31日。ISBN 978-4496191046
  3. ^ a b c d e f g 田島義博 『流通用語辞典』 東洋経済新報社、1980年10月9日。ISBN 978-4492010266
  4. ^ a b c d 中谷道達 『日本の中小企業 新版 日本経済多数派への視点』 同友館、1991年5月1日。ISBN 978-4496016905
  5. ^ a b c d 『流通用語辞典』 日本経済新聞出版社、2000年10月9日。ISBN 978-4532011468
  6. ^ 岩崎剛幸 『図解入門業界研究 最新アパレル業界の動向とカラクリがよーくわかる本』 秀和システム、2012年3月10日。ISBN 978-4-7980-3282-5
  7. ^ a b 「東洋経済大型小売店情報」 日経テレコン21日本経済新聞デジタルメディア - 2014年(平成26年)1月20日閲覧
  8. ^ 日本国有鉄道総裁室修史課 『日本国有鉄道百年史 第13巻』 日本国有鉄道、1974年2月28日。
  9. ^ a b c d e f g h i j k 『週刊東洋経済 臨時増刊 全国大型小売店総覧 2008年版』 東洋経済新報社、2008年。
  10. ^ a b c 釧路市地域史研究会 『釧路市統合年表:釧路市・阿寒町・音別町合併1周年記念』 釧路市 、2006年10月。
  11. ^ 『岐阜市史 通史編 近代』 岐阜市、1981年。
  12. ^ a b c d e f g h i j k 日経流通新聞編 『流通現代史 日本型経済風土と企業家精神』 日本経済新聞社、1993年4月16日。ISBN 978-4532141790
  13. ^ a b 木綿良行,三村優美子 『日本的流通の再生』 中央経済社、2003年6月10日。ISBN 978-4502369506
  14. ^ a b 鈴木武,夏春玉 『現代流通の構造・競争・行動』 同友館、2002年2月1日。ISBN 978-4495638313
  15. ^ a b c 阿部 真也, 加藤 義忠, 白石 善章, 岩永忠康 『現代流通の解明』 ミネルヴァ書房、1991年1月。ISBN 978-4623020300
  16. ^ 米子商工会議所 米子商業史 1990、丸合会社沿革
  17. ^ 日本海新聞 2013.11.9
  18. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『週刊東洋経済 臨時増刊 全国大型小売店総覧 2009年版』 東洋経済新報社、2009年。
  19. ^ かつて日本の百貨店頁に列挙されていたものを調査結果→Yahoo!ロコによるとテナントは、ラルズマート他9店。ほぼ雑居ビル。
  20. ^ お店の紹介
  21. ^ a b c d e f g 『週刊東洋経済 臨時増刊 全国大型小売店総覧 2006年版』 東洋経済新報社、2006年。
  22. ^ a b 『人口減少期における多摩地域の「縮む」未来図』 東京市町村自治調査会、2011年3月。
  23. ^ 『週刊東洋経済 臨時増刊 全国大型小売店総覧 2004年版』 東洋経済新報社、2004年。
  24. ^ ピヴォ来年5月閉館 札幌 複合ビル26年開業方針”. 北海道新聞 (2022年5月26日). 2022年5月26日閲覧。
  25. ^ 旭川オクノ閉館へ惜しむ常連客 道北のファッション拠点が… 中心部衰退の懸念「跡地利用思い切って」”. 北海道新聞 (2022年5月26日). 2022年5月26日閲覧。
  26. ^ 北海道リアルエコノミー2013.5.1
  27. ^ a b c d e f 『山形市中心市街地活性化基本計画 平成20年11月11日認定 平成21年3月27日変更 平成22年3月23日変更 平成23年3月31日変更 平成24年3月29日変更 平成25年3月29日変更』 山形市、2013年3月29日。
  28. ^ RiCAについて
  29. ^ a b “にぎわう街、競う大型店 長野「アゲイン」開業から10日” 信濃毎日新聞 (信濃毎日新聞社). (1998年11月9日)
  30. ^ a b 『大規模小売店舗の一覧 平成25年10月31日現在』 石川県商工労働部、2013年10月31日。
  31. ^ 宝塚市役所 再生に関する調査専門委員会
  32. ^ 賛栄商事概要
  33. ^ a b c 『青森市 大規模小売店舗立地法第1種・第2種特例区域図』 青森県、2008年7月7日。
  34. ^ a b c “尼崎市中心市街地活性化基本計画 平成20年7月9日 認定 平成23年3月31日 変更”. 尼崎市. (2011年3月31日)
  35. ^ 『中央区三十年史 上巻』 東京都中央区、1980年。
  36. ^ アサヒビル
  37. ^ 『新潟県史 別編 別編1 年表,索引』 新潟県、1987年。
  38. ^ “KOM、8月29日に閉店”. 釧路新聞 (釧路新聞社). (2006年3月1日)
  39. ^ 北海道建設新聞社
  40. ^ 『大規模小売店舗一覧(1,000m2超) 平成24年(2012年)8月現在』 苫小牧市、2012年8月。
  41. ^ a b 苫小牧民報社
  42. ^ 函館市史
  43. ^ 十勝新聞「「何でもある」庶民の台所」
  44. ^ 坂本ビル
  45. ^ 杉村暢二 『都市の商業 その地誌的考察』 大明堂、1978年3月。ISBN 978-4470060054
  46. ^ 『南足柄市大雄山駅前活性化計画 平成20年3月』 南足柄市、2008年3月。
  47. ^ 長野県中小企業団体中央会「先進組合事例」 会社概要
  48. ^ 宮古市議会定例会会議録2003.6.9
  49. ^ 宮古最大の商業施設「キャトル宮古」閉館 テナント撤退相次ぐ”. 河北新報. 2021年12月11日閲覧。

外部リンク

[編集]