コンテンツにスキップ

地震観測網

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

地震観測網(じしんかんそくもう)とは、地震計による地震観測のネットワークである。ほとんどの場合、24時間体制で観測が行われる。

概要

[編集]

公的機関の場合、震源位置や地震規模の把握が主目的のため、観測データは即時処理され緊急地震速報などの地震警報システムや被害規模の即時推定[1]や被害リスク評価などに利用される。また、データは地下構造の解析などにも利用される。海底ケーブル式のシステムでは、水圧計を利用した津波観測システムを兼ねる。

自治体や企業によるシステムの場合、地震発生後の被害規模の推定に利用される事が多い[2][3][4][5]

観測機器

[編集]

地上の観測点では、地震動を検知する為の地震計のほかに緩やかな地殻変動を検出する為の傾斜計、ひずみ計、GPS変位計、GNSS計測機器などの要素で構成される。地震計は、高感度地震計、強震計、広帯域地震計などが目的に合わせ選定され、地表または地中井戸に設置される。また、地震発生後の停電に備え、一定時間の観測継続の為に発電機や蓄電池施設を備えるものもある。

海底の地震観測点では、地震計、水圧計、ハイドロフォン(高感度水中マイク)、精密温度計、磁気センサーなどが設置される。

日本の主な観測網

[編集]
東海・東南海・南海地震の想定震源域
公的機関
  • 気象庁 - 日本全国に地震計を設置。
    • 津波地震早期検知網 - 1993年北海道南西沖地震をきっかけとして整備[6][7]
    • 東海地震の想定震源域(おもに領域Eに設置) - 静岡県内の陸上と駿河トラフ沿いの海中にひずみ計、傾斜計、地震計などの観測機器を設置。東海沖ケーブル式常時海底地震観測システム(9基)[8][9][10]
    • 東海・東南海沖ケーブル式常時海底地震観測システム - 東南海地震の想定震源域(おもに領域D)。東海沖ケーブル式常時海底地震観測システムとDONET の観測域の隙間を埋める。
    • 房総沖 - 水圧計による津波観測システム(4基) 1985年運用開始。
  • 海洋研究開発機構
    • 相模湾初島沖 (海底地震総合観測システム) - 1993年運用開始。
    • 高知県室戸岬沖(海底地震総合観測システム) - 1997年運用開始。
    • 釧路・十勝沖(海底地震総合観測システム) - 1999年運用開始。
  • 防災科学技術研究所
  • 港湾空港技術研究所
    • 港湾地域強震観測システム - 全国61の港湾に119台の強震計を設置[14]
自治体や大学
  • 東京大学
    • 伊豆半島東方沖 - 1993年運用開始(3基)[15]
    • 日本海・粟島付近 - ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究プロジェクトにより設置[16][17][18]
    • 釜石沖 - 1996年から東北大学と共同観測(3基)、120km[19][20]。2015年従来の海底観測ケーブルの南側に総延長105kmの観測ケーブルを敷設[21]
  • 川崎市横浜市
  • 東京ガス - 超高密度リアルタイム地震防災システムSUPREME、2001年から稼働[22]
  • 首都圏強震動総合ネットワーク (SK-net) - 長野県、静岡県、山梨県、群馬県、埼玉県、栃木県、茨城県、神奈川県、千葉県、東京都の自治体が設置している既存の地震計や公的機関の地震計をつなぎ、「大都市圏強震動総合観測ネットワークシステム」の一環として、2000年度に構築された[23]。サーバーの管理は東京大学が行っている。

日本国外

[編集]

参考情報

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ 『J-RISQ地震速報』を実験的に公開~地震発生直後に揺れの状況や震度遭遇人口の情報をコンパクトに提供 (PDF) 防災科学技術研究所
  2. ^ 技術概要(共同開発者による紹介)[リンク切れ]システムを利用した有料サービス(東京ガスの関連会社のサイト)
  3. ^ 川崎市震災対策支援システムについて(川崎市)[リンク切れ]
  4. ^ 強震計ネットワーク(横浜市)
  5. ^ 「超多点」民間GNSS 観測網による地殻変動モニタリング 携帯電話事業者が運用するGNSS 観測網の地球科学への応用 2022年2月10日 プレスリリース・研究成果 東北大学
  6. ^ 1.地震津波早期検知網 (1994-) (PDF) 気象庁
  7. ^ 永井章, 「津波予報システムと津波の観測」『精密工学会誌』 2005, 71巻, 11号, p.1344-1349, 精密工学会, ISSN 1882-675X, doi:10.2493/jjspe.71.1344.
  8. ^ 東海地域の地震・地殻変動の観測網 気象庁[リンク切れ]
  9. ^ EPOS4 における地殻変動の異常監視処理の高度化 木村一洋・近澤心・菅沼一成・草野利夫 験震時報第76巻 pp.45-62 (PDF)
  10. ^ 山本剛靖、「気象庁における地殻変動連続観測」『測地学会誌』 2007年 Vol.53 No.2 p.147-156, doi:10.11366/sokuchi1954.53.147, 測地学会.
  11. ^ 「陸海の地震・津波観測網 16日から統合運用 防災科研」日刊工業新聞』2017年11月1日(科学技術・大学面)2018年5月6日閲覧
  12. ^ 南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)沖合システムの整備完了へ 防災科研(NIED) 2024年06月18日
  13. ^ 日本海溝海底地震津波観測網整備事業 防災科学技術研究所
  14. ^ 港湾地域強震観測システム 港湾空港技術研究所
  15. ^ 伊豆半島地震観測システム 東京大学地震研究所 地震地殻変動観測センター
  16. ^ 海域における自然地震観測 ひずみ集中帯プロジェクト
  17. ^ 日本海粟島沖に設置した新規開発の小型ケーブル式海底地震観測システム 東京大学地震研究所
  18. ^ New compact ocean bottom cabled seismometer system deployed in the Japan Sea(英文)
  19. ^ 三陸沖光ケーブル式海底地震・津波観測システム 東京大学地震研究所
  20. ^ 三陸沖での新しい監視方法による津波情報提供の可能性 海岸工学論文集 Vol.45 (1998) P386-390
  21. ^ 岩手県釜石市沖の海底に、9月4日、海底ケーブル式地震・津波観測システムが設置されます。 東京大学 2015年9月3日 (PDF)
  22. ^ 菜花健一, 細川直行, 山内亜希子、「SUPREME による千葉県北西部地震観測情報の利用事例」『日本地震工学会論文集』2007年 7巻 2号 p.209-214, doi:10.5610/jaee.7.2_209, ISSN 1884-6246, 日本地震工学会.
  23. ^ 首都圏強震動総合ネットワーク (SK-net)
  24. ^ インドネシアにおける広帯域地震観測網の設営と運用 (PDF) 産総研
  25. ^ International Seismic Network 防災科学技術研究所
  26. ^ インドネシアとフィジー・トンガにおける地震観測 (PDF)

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]