ラニアケア超銀河団
ラニアケア超銀河団[1][2] Laniakea supercluster of galaxies[3] | |
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観測可能な宇宙とグレートウォールの各名称の図。中央にラニアケア超銀河団が含まれる。
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星座 | じょうぎ座、みなみのさんかく座 |
位置 | |
赤経 (RA, α) | 10h 32m |
赤緯 (Dec, δ) | −46° 00′(グレートアトラクター) |
赤方偏移 | 0.0708(中央) |
距離 | 2億5000万光年(中央) |
物理的性質 | |
平均直径 | 520×106光年 |
質量 | 1×1017M☉ |
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ラニアケア超銀河団[1][2] (ラニアケアちょうぎんがだん、Laniakea Supercluster[3]) は、2014年に提唱された超銀河団。天の川銀河が属する局所銀河群やおとめ座銀河団もその一部であり[4]、およそ10万個の銀河を含んでいる[5]。この超銀河団はハワイ州立大学のブレント・タリーとリヨン大学のエレーヌ・クールトアらにより、銀河の視線速度によって銀河団の境界を定める新たな手法の発表と合わせて提唱された。この新しい超銀河団の定義は既に定義されていたおとめ座超銀河団を含んでいる[4][6][7][8]。
後の研究によると、ラニアケア超銀河団は重力による拘束を受けていないため、これらの構造を維持することはできず、いずれ分散されてしまうと予想されている[9]。
概要
[編集]ハワイ州立大学天文学研究所 (IfA) のR. ブレント・タリーが率いるチームが2014年9月にNatureオンライン版に掲載された論文で提唱したもので[3][4][10]、直径約1億6000万パーセク(5億2000万光年)の領域に約10万個の銀河を包含している。質量は約1017太陽質量にも及び、これは天の川銀河の10万倍、とけい座超銀河団とほぼ同じ規模である[3][4]。
ラニアケアは、既知の超銀河団による4つの子領域に分けられる。
- おとめ座超銀河団(天の川銀河を内包する)
- うみへび座・ケンタウルス座超銀河団
- くじゃく座・インディアン座超銀河団
- Southern Supercluster(ろ座銀河団、かじき座銀河群、エリダヌス座銀河群を含む)
ラニアケア超銀河団の中で大きな銀河団はおとめ座銀河団、うみへび座銀河団、ケンタウルス座銀河団、Abell 3565,、Abell 3574、Abell 3521、ろ座銀河団、エリダヌス座銀河団、じょうぎ座銀河団である。この超銀河団全体でおおよそ300の銀河団を内包している。銀河面吸収帯によってラニアケア超銀河団の一部が遮られて観測出来ないため、正確な数はより多くなるかもしれない。
超銀河団は宇宙に存在する大きな構造体の一つで、境界を定義する事が難しい。このチームは電波望遠鏡を用いて、銀河団の動きを図表にした。超銀河団の中では、多くの銀河が、重心の方に向かっている。ラニアケアの場合、重力の重心はグレートアトラクターであり、局所銀河群の銀河の動きに対して影響を与えているだけでなく、超銀河団のあらゆる天体に対して影響を与えている。しかしラニアケア超銀河団は重力による拘束を受けていないため、やがてダークエネルギーによって分裂すると予想されている[4]。
位置
[編集]ラニアケアの周辺にはヘルクレス座超銀河団、かみのけ座超銀河団、ペルセウス座・うお座超銀河団、シャプレー超銀河団が存在する。これらの超銀河団とラニアケア超銀河団との境界線ははっきりと定義されていない[6]。
発見法
[編集]銀河の特異速度 (peculiar velocity) と宇宙の膨張とを区別するために、ウィーナー・フィルタリングという手法が取られた。この手法を用いると、ラニアケア超銀河団はシャプレー超銀河団の方向へ向かっているように見える。そのため、おそらくシャプレー銀河団もラニアケア超銀河団も、より大きな構造の一部分であると考えられる[11]。
なお、南アフリカ共和国の天文学者トニー・フェアオールは1988年に、赤方偏移の観測結果からうみへび座・ケンタウルス座超銀河団とおとめ座超銀河団が繋がっている可能性を示唆している[12]。
名称
[編集]Laniakea は、ハワイ語で「天空/天国」を意味する laniと、「計り知れない、広々とした」を意味する akea に由来する[3]。これは、ハワイ州立大学カピオラニ・コミュニティ・カレッジの David Nawa'a Napoleon によって提案された名称を採用したものである[3][7]。この名前は、広大な太平洋を航海するために天測航法を用いたポリネシアの航海者たちを称えたものである[7]。
関連事項
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b “ラニアケア超銀河団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年8月17日). 2019年12月6日閲覧。
- ^ a b “特集:宇宙の超巨大構造 - 天の川を従えるラニアケア超銀河団”. 日経サイエンス (2016年11月). 2017年8月23日閲覧。
- ^ a b c d e f Tully, R. Brent et al. (2014). “The Laniakea supercluster of galaxies”. Nature 513 (7516): 71-73. arXiv:1409.0880v1. Bibcode: 2014Natur.513...71T. doi:10.1038/nature13674. ISSN 0028-0836.
- ^ a b c d e Gibney, Elizabeth (2014). “Earth's new address: 'Solar System, Milky Way, Laniakea'”. Nature. doi:10.1038/nature.2014.15819. ISSN 1476-4687.
- ^ Ollie Gillman (2015年3月14日). “The road map to the Universe”. DailyMail UK 2017年8月23日閲覧。
- ^ a b Irene Klotz (2014年9月3日). “New map shows Milky Way lives in Laniakea galaxy complex”. Reuters (Reuters) 2017年8月25日閲覧。
- ^ a b c “Newly Identified Galactic Supercluster Is Home to the Milky Way”. アメリカ国立電波天文台. (2014年9月3日) 2017年8月24日閲覧。
- ^ Quenqua, Douglas (2014年9月3日). “Astronomers Give Name to Network of Galaxies”. New York Times 2017年10月15日閲覧。
- ^ Chon, Gayoung; Böhringer, Hans; Zaroubi, Saleem (2015). “On the definition of superclusters”. Astronomy & Astrophysics 575: L14. arXiv:1502.04584. Bibcode: 2015A&A...575L..14C. doi:10.1051/0004-6361/201425591. ISSN 0004-6361.
- ^ “銀河系を含む新超銀河団「ラニアケア」”. ナショナルジオグラフィック (2014年9月4日). 2017年5月23日閲覧。
- ^ Camille M. Carlisle (2014-09-03). Laniakea: Our Home Supercluster. Sky and Telescope .
- ^ Fairall, A. P. (1988). “A redshift map of the Triangulum Australe-Ara region: further indication that Centaurus and Pavo are one and the same supercluster”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 230 (1): 69-77. Bibcode: 1988MNRAS.230...69F. doi:10.1093/mnras/230.1.69. ISSN 0035-8711.
参考文献
[編集]外部リンク
[編集]- Vimeo, "Laniakea Supercluster", Daniel Pomarède, 4 September 2014-video representation of the findings of the discovery paper
- YouTube, "Laniakea: Our Home Supercluster", Nature Video, 3 September 2014—Redrawing the boundaries of the cosmic map, they redefine our home supercluster and name it Laniakea.