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エシュロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エシュロンに関する施設だといわれているイギリス空軍メンウィズヒル基地にあるレドーム(レーダーアンテナ保護用のドーム)。
北緯54度00分29秒 西経1度41分24秒 / 北緯54.00806度 西経1.69000度 / 54.00806; -1.69000
三沢基地 姉沼通信所(1990年代、アメリカ空軍撮影)
奥に見える大きな輪状のアンテナ施設は通称「ゾウの檻」と呼ばれていたが、既に使用が中止され撤去が予定されている[1]
北緯40度43分14.3秒 東経141度19分21.7秒 / 北緯40.720639度 東経141.322694度 / 40.720639; 141.322694

エシュロン (ECHELON) は、アメリカ合衆国を中心に構築された軍事目的の通信傍受システム。

同国の国家安全保障局 (NSA) 主体で運営されていると欧州連合などが指摘し[2]エドワード・スノーデンの告発により、PRISMで有線データ通信さえも盗聴されていることが明らかになった一方、アメリカ合衆国連邦政府が認めたことはない。

名称は(梯子の)「段」を意味するフランス語 échelon に由来する。

エシュロンの誕生

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1943年5月17日に「英米通信傍受協定」(ブルサ協定英語版)が結ばれ、ベノナ・プロジェクトも開始。この時にエシュロン・システムが誕生したといえる。

1948年には、米英に加えてカナダオーストラリアニュージーランドも参加する秘密協定としてUKUSA協定が結ばれ、通信傍受の協力体制が作られた。

1949年には統合参謀本部安全保障局が作られ、1952年には国家安全保障局(NSA)に改編された。この頃から、エシュロン・システムは拡大を始め、現在に至る[3]

暴露

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1972年の元NSAのペリー・フェルウォック英語版による暴露でNSAの大規模な通信傍受活動は初めて認知されるようになった[4][5]。当時、アメリカではウォーターゲート事件など米国政府による盗聴が問題となっており、フェルウォックはダニエル・エルズバーグによるペンタゴン・ペーパーズに触発されたという[6]。その後、関係者による暴露が相次ぎ、1988年ダンカン・キャンベル英語版によって「エシュロン」と報じられるようになった[7]。2012年にはエドワード・スノーデンによるPRISMによる通信傍受手法などの暴露が行われた。

欧州議会による報告書

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2001年7月、欧州議会の「エシュロン通信傍受システムに関する特別委員会」は「世界的な私的、または商業通信の傍受システムの存在(エシュロン傍受システム)」という最終報告書を発表した[2][8]

この報告書では、「UKUSAによる全世界的な傍受システムが存在することは疑いない」と断定し、また「重要な点は、軍事通信だけでなく私的、あるいは商業通信の傍受を目的としていることである」としている。

ただし、傍受システムの限界として、どれだけ大規模なリソースと能力を用いてもすべての通信の徹底的で詳細なモニタリングは、実際にはその膨大な通信量から不可能であるとも指摘している。

日本

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日本にもエシュロン傍受施設は存在し、青森県三沢飛行場に置かれている[9][10]。また朝日新聞も2001年に、日本を含むアジアオセアニア地域に置かれた傍受基地の存在を報道している[11]

その他

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今日では、データ通信の大部分は、光ファイバを利用した有線通信によって行われており、傍受することは極めて困難である。それでも例えば、20世紀末までは海底ケーブルの中継器に傍受装置を取り付けることで光ファイバでも盗聴が可能であったが、1997年以降からは電気アンプから光学的に増幅するアンプに変わったために不可能になったと思われていた[3]。ただし実際にはPRISMによるインターネットの監視など異なる手法による通信傍受が行われていることが明らかになった。

2000年1月下旬にエシュロン・システムが全面的に72時間システム・ダウンし、修復作業に150万アメリカ合衆国ドルがかけられた[3]

ただし、2013年には米国によるドイツの当時の首相であるメルケル氏の携帯の盗聴 [12]が、2020年には米国によるスイス企業を媒介しドイツと共謀した長期的な盗聴活動が報じられている。[13]

エシュロンを取り上げている作品

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脚注

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  1. ^ 『軍事研究』2008年11月号(ジャパン・ミリタリー・レビュー)
  2. ^ a b 「個人的及び商業的通信への世界的傍受システムの存在について((2001/2098(INI))欧州議会報告(英文)
  3. ^ a b c 鍛冶俊樹著 『エシュロンと情報戦争』 文芸春秋社 平成14年2月20日第1版発行 ISBN 4166602276
  4. ^ David Horowitz (August 1972). "U.S. Electronic Espionage: A Memoir". Ramparts. 11 (2): 35–50.
  5. ^ EX‐CODE ANALYST EXPLAINS HIS AIM”. ニューヨーク・タイムズ. 2019年1月20日閲覧。
  6. ^ Perry Fellwock”. WikiLeaks. 2019年1月20日閲覧。
  7. ^ Campbell, Duncan (12 August 1988). “Somebody's Listening”. New Statesman. オリジナルの14 June 2013時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130614020755/http://www.duncancampbell.org/menu/journalism/newstatesman/newstatesman-1988/They%27ve%20got%20it%20taped.pdf 27 November 2013閲覧。 
  8. ^ 小倉利丸『エシュロン―暴かれた全世界盗聴網 欧州議会最終報告書の深層』(2002年、七つ森書館)ISBN 4-8228-0255-8
  9. ^ 池上彰スペシャル 世界が変わった日」フジテレビ,2011年9月11日放送。[出典無効]
  10. ^ 久田貴志子 (2001年9月6日). “「エシュロン」自粛求め決議 欧州議会”. 朝日新聞: p. 6. "(EU)特別委員会がまとめた報告書は、傍受用とみられる大型アンテナは、青森県・三沢基地を含む世界の11か所の軍事基地に設置されていると指摘している." 
  11. ^ 「見えてきたエシュロン」朝日新聞2001年6月14日、富永格・ブリュッセル特派員
  12. ^ ドイツのメルケル首相、アメリカ情報機関が通話を盗聴か 「安倍首相は問題ない」菅官房長官”. 2024年3月2日閲覧。
  13. ^ 米独の諜報機関が世界各国公電を盗聴した手法”. 2024年3月2日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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